「我慢ばかりで、嫌という感情が麻痺していた」発達障害当事者・姫野桂さんが過去の自分に伝えたいこと

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「我慢ばかりで、嫌という感情が麻痺していた」発達障害当事者・姫野桂さんが過去の自分に伝えたいこと

石上友梨
石上友梨
2021-11-21

達障害当事者であり、「発達障害グレーゾーン」等の著者であるライター姫野桂さん。交友のある臨床心理士のライター石上が6月に発売された新刊「生きづらさにまみれて」から選んだトピックや、自己肯定感について話を聞いた。

自分の本が売れたことで、初めて自信が持てた

―――新刊『生きづらさにまみれて』(晶文社)に「文章でやり返せ」と書かれていましたが、ライターとしての成功が自己肯定感に影響を与えたと思いますか?

はい、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社)が売れた事は自信になりましたね。重版して42,000部売れたので、数字にしてもらえると目に見えるので分かりやすいですね。こんなに刷ってもらえたんだと、嬉しく思いました。

発達障害グレーゾーン
『発達障害グレーゾーン』(扶桑社)

―――読者からの声なども影響しましたか?

そうですね。読者からお手紙をもらって「生きづらさを抱えていたので、読んですごく救われました」とメッセージをもらった時は、人のためになる仕事をしたんだ! よかったな、って自分を認めることができました。

―――もともと自己肯定感が低かったのですか?

激低です。小学生高学年〜中学校くらいからできる「スクールカースト」がきっかけになり、それ以来ずっと低かったと思います。

―――ライターとして自信がついた後は、以前よりも、ありのままの自分を受け入れられるようになりましたか?

なりましたね。成功体験が自信に繋がって。モテたいとか男性の目を引きたいとか誰かのためではなく、自分のためにいろいろなことに取り組めるようになりました。

―――新刊に容姿のことを書いていたと思うのですが、自己肯定感と容姿を気にしてしまうことは関係していると思いますか?

すごく関係しています。昔遊ばれていた男性に服をディスられて、その後服を全部変えたことがありました。当時は彼の言う通りの見た目になろうと思っていましたね。他にも、骨格診断やパーソナルカラーを学ぶと、逆に縛られすぎてファッションが楽しくなくなってしまって。この色は私のパーソナルカラーじゃないから着れないとか。

自己肯定感が低いときは、誰かに判断して認めてもらえないと不安で仕方なかったんだと思います。自分を認められるようになってからは、試着して自分が似合うと感じたら着よう、と思うようになりましたね。

そういえば、ここ3〜4年、目の周りに出来たそばかす状のシミが気になって化粧で消していたのですが、思い切って美容皮膚科のレーザーで消したら、堂々と外をすっぴんで歩けるようになりました。誰も見ていないような小さなシミだけど、無いだけですっぴんでもスーパーに行ける。つい先日も新宿のテルマー湯に行って、帰りは面倒になって、マスクをしてすっぴんのまま新宿を歩いて帰りました。モテたいとか男性の目を引きたいとか誰かのためではなく、自分のために取った感じですが結果的によかったです。

―――人のためではなく、自分のためというのがいいのかもしれないですね。新刊でバービーさんの「ありのままの自分を受け入れて化粧や美容を楽しんでいる」という話で考え方が変わったと書いていましたが、化粧や服装など何か変化はありましたか?

好きな服を着るようになりました。例えば、インパクトが強いのですが、文豪シリーズで江戸川乱歩や小泉八雲のTシャツなど個性的なものを着るようになりました。

我慢ばかりして、嫌という感情が麻痺していた

―――28歳で風俗の世界に入ることは珍しいのではと感じました。新刊に書かれていた、風俗で「心の隙間を埋める」「自分の女性性を確かめる」ことはできましたか?

心の隙間を埋める事はできなかったです。接客している時は埋まっていた感じで、終わったら違うかな。自分の女性性を確かめることはできました。「綺麗な子だから延長するよ」と言ってもらえたり。

―――心の隙間は、その瞬間だけ埋まったように感じて、終わった後は元に戻っちゃう感じですか。

やっている時は満たされるから、また快感を求めてやってしまう。中毒性があるというか。

―――新刊を読んだ印象では、働いていたお店は、良い場所みたいな感じでしたね。

友人の紹介で入ったお店ですが、良いお店だったと思います。お店によっては全然女の子のケアをしてくれないところがあるのですが、私が入ったところは、きちんとケアをしてくれました。

―――姫野さんは、友達の紹介とか、対人関係から広がっていくものが多そうですね。

自分では、自分のことをコミュ障と思っているのですが、振り返ると友人から紹介してもらうことが多いかもしれません。

―――自覚しているコミュ障と、友達が感じている姫野さんの印象にずれがあるのかもしれないですね。新刊に「我慢ばかりして、嫌という感情が麻痺した」と書かれていましたが、それは家庭での出来事でしょうか? それとも学校や職場、パートナーとの関係など、他のところでたくさん我慢していたのでしょうか?

学生の頃は、過干渉な親だったので、親との関係で我慢してきたことが多かったと思いますね。今でも忘れられないのが、中学2年生の頃にカバンの中身をチェックされたこと。転校したての時で友達を作るために飴をカバンに入れていたのですが、「なんで飴が入っているの?」とすぐに没収されました。

―――一般的には、小学校の高学年くらいから自立を促すために、親の干渉は減っていくことが多いと思いますが、その後もずっと過干渉が続いていたのですね。

続いていましたね。就活で内定をもらった会社の社長に、親が贈り物をしたくらい過干渉です。会社で「あの新入社員、親が贈り物なんかしているよ」という目で見られたことを覚えています。社長もびっくりしていましたね。まさか新入社員の親から贈り物が来るとは。

―――親とか近しい大人との間に抱えていた問題が未解決な場合、それを親しい関係、恋愛関係で再演してしまう場合が多いです。姫野さんは、自分ばかり我慢するような対人関係が多かったのでしょうか?

今の彼が直してくれたのですが、付き合いたての時は「トイレ行ってきてもいい?」と聞いていました。彼から「トイレ行ってくるね」でいいんだよと言われて。無自覚に「何々してもいい?」とまず相手に伺いを立てる事をずっとしていたみたいです。ようやく最近「トイレ行ってくるね」と言えるようになりました。

―――トイレは生理現象ですもんね。我慢する恋愛も多かったのですか?

そうですね。あんまり恋愛経験はないのですが、我慢ばっかりですね。連絡が来るのをずっと待ってるとか。ドタキャンを何回もされるとか。

―――受け身な感じですね。これまでのパートナーでは、過干渉な人はいましたか?

過干渉な相手はいなかったですね、ただ、今の彼が過干渉気味……というか心配性です。過去、女性に浮気された経験があることから「他の男と一緒に出かけるんじゃないか」と心配してしまうようです。先日お酒の提供が解禁された際に、ずっと通っていたゲイバーが営業再開したので新宿2丁目に行ったんです。その帰りにドラッグストアに寄り道をして、帰宅後にお風呂に入ってからスマホを見たら「今、どこにいるの?」「歌舞伎町のホストクラブに行ったんじゃないか」「すごい心配した」とたくさんLINEが来ていました。

過去の自分に「嫌なことはちゃんと嫌と言っていいんだよ」と言いたい

―――恋愛がうまくいかなった過去の自分に対して、今の自分からアドバイスしたいことはありますか?

自分に自信が持てないときに、言い寄ってくる男性にフラフラとついて行ってはダメだなと思います。だから「流されないようにね」と言いたいです。「こんな私を好きになってくれて嬉しい」と誰にでもついて行っていたので「きちんと相手を見て」と言いたいです。

―――「こんな私を好きになってくれて」という台詞を言う人が多い印象があります。自己肯定感が低い方や発達障害の傾向がある人は、人との距離感がうまくつかめず近くなり過ぎることで、言い寄られやすいのかなと思います。他にありますか?

「嫌なことはちゃんと嫌と言っていいんだよ」と伝えたいです。嫌なことを伝えて離れていく人は、あなたの本当の味方ではないということに、気付いて欲しいです。

▶関連インタビュー:発達障害当事者・姫野桂さんが語る、生きづらさの正体とコロナ禍で感じた「孤独と依存の関係」

姫野 桂(ひめの けい)
フリーライター。1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをし、編集業務を学ぶ。卒業後は一般企業に就職。25歳のときライターに転身。著作に『私たちは生きづらさを抱えている』(イースト・プレス)『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)などがある。最新刊は『生きづらさにまみれて』(晶文社)

生きづらさにまみれて
『生きづらさにまみれて』(晶文社)

 

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石上友梨

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。

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