夏バテ、夏の疲れを寄せつけないためには?薬剤師が教える〈夏こそ行うべき血流ケア〉3つのステップ

 夏バテ、夏の疲れを寄せつけないためには?薬剤師が教える〈夏こそ行うべき血流ケア〉3つのステップ
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冷房が効いた電車の中やオフィス……。冬よりも夏のほうが「冷え」を感じやすくなってはいませんか? こういう環境下では血流も悪くなり、夏バテや疲れを招きやすくなっています。今や夏こそ血流を意識することが大事。女性が気になる血液の話とともに日常で実践できる血流ケアをご紹介します。

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体を流れる血液が健康と美しさの要に

血液は私たちの体の中をただ流れているのではなく、全身の細胞や各器官に酸素や栄養、ホルモンなどを運んだり、細胞から出た老廃物を回収したりしてくれる“運び屋”です。血液の流れ(血流)が悪くなれば、必要な栄養素や酸素などが全身に行き届かず、さまざまな不調を招いてしまうことに。健康や美しさを保つには、十分な量の血液が、体の中をスムーズに流れていることが大切なのです。

とくに月経のある女性の体は血液に左右されやすく、漢方では古くから「血の道症」(ちのみちしょう)という女性特有の病気があります。これは月経前症候群や更年期障害などにあたり、その原因は血液不足や循環の悪さとされています。月経で毎月血液を失う女性は血流が悪くなりやすい。だからこそ、日頃から血流を意識することが大切なのです。

夏こそしっかり血流ケア

現代の夏バテの多くは、暑い屋外と冷房が効いた室内を行き来することで、体温調節を行う自律神経が乱れることを原因としています。とくに、今の若い人は冷房が当たり前の環境で育っているので、暑いときに汗で熱を発散し、体温を調整する体本来の機能が未発達で、夏バテもしやすいといえます。

室温を自分で調節できればよいのですが、通勤電車やオフィスなどではそうはいきません。だからこそ血流にアプローチする必要があります。血液は熱を全身に伝え、体温を調節する働きもあります。エネルギーを生み出す代謝に必要な栄養素を運んでいるのも血液。ですから、血流をよくするというのは、夏バテや疲れ対策として最低限行っておくべきことなのです。

血流
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血流悪化を招く要因

「冷え」は血流を悪くする最大の要因。実は、気をつけたいのが冬よりも夏です。冬は温かい服装で防備していますが、夏は薄着のうえ、冷たい飲食物を摂ってしまいがち。さらに冷房にさらされれば、体は当然冷えてしまいます。冷えを招く要因には次のことがあげられます。

① 冷房が効いた部屋と暑い室外の行き来
自立神経のうち体を緊張させる交感神経が過度に優位になり、血管が収縮。この状態が続くと血流が悪くなる。

② 冷たい飲食物ばかり摂る
暑い夏はのど越しのよい冷たい飲食物が欲しくなりますが、冷たいものは体内の温度を一気に下げるので注意が必要。

③ 薄着
夏のファッションは素足にサンダル、ノースリーブと体を露出する傾向に。冷房が効いた部屋では一気に体が冷えてしまう。

血流ケアの3つのステップ

STEP1.血液をつくる

漢方では、エネルギー(気)は胃腸でつくり出されると考えられています。胃腸が弱いと「気」が不足した「気虚」(ききょ)の状態になりやすく、「気」が不足していると血液をつくり出すことができません。

生理学的に見ても、胃腸の働きが悪いと栄養の消化・吸収がうまく行えず、血液の材料を体に取り込めません。つまり、血液を作りにくいといえます。そこで次のことを心がけましょう。

☑︎ 朝起きたら一杯の白湯
起床時や食事の前に白湯を飲む習慣をもつとよいでしょう。白湯をのむと体が温まり、胃腸の働きもよくなります。白湯といっても厳密に考えなくでも大丈夫。沸かした湯に水を足したり、水を電子レンジで温めたりするのでもOK。要は体温よりも高い温度の物を体に入れることが大事です。

☑︎ 肉食を心がける
タンパク質は血液の材料であり、鉄は赤血球のヘモグロビンの構成要素として重要な栄養素。この2つの栄養素を効率よく摂れるのが赤身の肉。毎月の月経で血液が失われる女性こそしっかり肉を食べましょう。健胃作用のあるハーブやスパイスを組み合わせると胃腸にもGOOD!

☑︎ 食べ物の力を活用
漢方では食材には薬と同じように体を治す効果があると考えられています。「気虚」(ききょ/気が不足した状態)には、もち米、小麦、山芋、大豆、肉、エビがよいとされ、「血虚」(けっきょ/血が不足した状態)には、ほうれん草、人参、肉、レバー、すっぽん、クコの実、ごま、ナツメなどがよいとされています。手軽に取り入れられる物もありますね。

☑︎ 夕食は控えめが基本
四六時中、何かを口にしているような食習慣は、胃腸に負担をかけてしまいます。とくに眠っている間はしっかりと胃腸を休ませたいもの。夕食は腹八分に抑え、寝る2~3時間前には済ませましょう。朝起きたときにお腹が空いているようであれば、夕食の量やタイミングに問題はありません。

☑︎ よくかんで食べる
かむことによって、口の周りにある筋肉の咬筋(こうきん)から脳に刺激が伝わります。そして神経伝達物質のヒスタミンを出すのですが、これにより内臓脂肪が燃え、体温を上昇させることが分かっています。よくかむことは満腹中枢を刺激するので過食防止にも。ひと口入れたら30回かむことを目標に。

STEP2.血液の質をよくする

私たちの脳や体は睡眠中に疲れをとり、細胞の修復も行っています。睡眠は心身をメンテナンスする大事な時間であり、血液の質をよくするためにも大切です。睡眠不足は血糖値を下げるインスリンの働きを低下させたり、脂質の分解を正常に行えなくしたりするため、血液の質を悪化させてしまいます。

現代は、「寝つきが悪い」「眠りが浅い」など、睡眠のトラブルを抱えている人が少なくありません。私たちの体は、朝起きてから15~16時間で、睡眠ホルモンのメラトニンが分泌され、眠気が訪れるようになっています。ですから、起床時間を一定にして体内時計を整え、同じリズムでメラトニンを分泌させることが、夜にしっかりと眠るコツ。さらに起床後は朝日を浴びることも忘れずに。24時間よりも少し長くなっている体内時計のリセットに欠かせません。

スムーズな入眠には、体を温めておくことも大切です。それには入浴が一番おすすめ。大事なのはお湯の温度です。湯温は40℃を超すと自律神経のうち、交感神経が優位になるため、神経が高ぶってしまい、すぐに寝つくことができません。けれども、40℃以下であれば副交感神経が優位になるので体がリラックス。さらに疲労因子が増えて体がぐったりと疲れるため、入眠もスムーズです。

全身浴にするのも大事なポイントです。全身に水圧がかかり、心臓に戻る血液が増えることで心臓から出ていく血液も増え、その結果、血流がよくなるのです。快眠のために、つぎのことも心がけましょう。

☑︎ 室温は28℃を目安に
寝るときの室温は暑すぎず、冷房で冷やし過ぎない程度の温度がよく、目安は28℃。夏の夜は少し汗をかくくらいが体のためにもよいです。湿度が高いと寝苦しいので、除湿機能を活用するのもよいでしょう。部屋の空気を循環させるために、冷房とともに扇風機を活用するのも一案です。

☑︎ お腹はしっかり温める
胃腸のあるお腹周りは一年中冷やしたくないパーツ。夏でも使える薄手の腹巻を着用するなどし、寝ている間も冷えないように気をつけましょう。素材は吸放質性の高いシルクがおすすめです。また、大きな筋肉のある太ももや二の腕は血流が豊富な部位なので露出しないようにしましょう。

☑︎ 0時までに寝よう
東洋医学では、22~2時は体の細胞が修復される時間と考えられています。生理学的には、胃腸などの消化管は睡眠中に活発になることから、肝臓では代謝が進み、タンパク質の合成・分解が活発に行われています。血液をつくるためにも0時までには寝るのが理想です。

STEP3.血液を巡らせる

血流をよくする最後の要となるのは、筋肉。筋肉を動かすことで血流は促進されます。なかでも、下半身には全身の筋肉の半分以上が集まっているので、下半身を使った運動を行うのがポイントです。

運動はしたいけど、毎日忙しいからなかなか難しい……。そんな方には、日常生活の中でちょっと嫌なことをしてみましょう。例えば、電車では座らずに立つ。これだけでエネルギー消費量は20%ほど多くなります。エスカレーターではなく階段を使う、歩くときは大股早歩きに。

また、椅子に座るときは両ひざをしっかりつけるようにすれば内転筋のトレーニングになります。運動をこう考えていけば、時間がないからできないとはなりませんね。加齢とともに減りがちな筋肉をキープするためにも、運動はぜひ習慣化していきましょう。次のことも、とりいれるとよいでしょう。

☑︎ 家事をしながら運動しよう
洗濯物を干すとき、1枚1枚干すたびにスクワットをしてみてはいかがでしょう。10枚干せばスクワット10回、立派な運動になります。洗い物をしたり、歯磨きをしたりするときはつま先立ち。これで脚の筋肉が鍛えられます。日々の家事の中にゲーム感覚で運動を取り入れてみてください。

☑︎ 腹式呼吸でリラックス
ストレスや緊張の多い人は自律神経の乱れから血流が悪くなっていることも。腹式呼吸は自ら自律神経を整えられる貴重な手段です。息を吸うときは鼻からで、お腹を膨らませるようにします。吐くときはお腹をへこませながら口から吐いていきます。吐く時間を、吸うときの倍にするのがポイントです。

まとめ

現代では、冷房の影響などにより、寒い冬だけでなく夏でも血流ケアが必要です。血流の改善のポイントは、まずは、胃腸の働きをよくすること。食事で摂った栄養を胃腸でしっかり消化・吸収できなければ、血液の材料をカラダに取り込むことができません。

次に、血液の質をよくすること。血液はただ量を増やせばよいのではなく、質も問われます。中性脂肪などの脂質の多い血液はNG。また、血液の質をよくするには、十分な睡眠が欠かせません。

血液の量と質が備わったら、あとはスムーズに巡らせましょう。そのポイントのひとつが筋肉を動かすこと。とくに大きな筋肉がある下半身を使った運動がおすすめです。

このように血流を改善させるためには、「血液をつくる」「血液の質をよくする」「血液を巡らせる」の3つのステップが大切です。できることから、少しずつでも取り入れてみてください。

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AUTHOR

小笠原まさひろ 薬剤師

小笠原まさひろ

東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。



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