カナダ先住民ヨガ講師に学ぶ「失ったアイデンティティ」の取り戻し方【内なる創造主とつながろう】

 カナダ先住民ヨガ講師に学ぶ「失ったアイデンティティ」の取り戻し方【内なる創造主とつながろう】
Brien Hollowell

ヨガジャーナルアメリカ版の人気記事を厳選紹介!カナダ先住民のヨガ講師、シェイラ・ストーンチャイルドによる、社会のなかでゆがめられたアイデンティティを取り戻し、内なる創造主とつながるためのヨガ的ヒントを紹介しよう。

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先住民のヨガ講師、シェイラ・ストーンチャイルドは、非営利団体「マトリアーク・ムーブメント(Matriarch Movement )」を通じ、自分たちから奪われた文化と遺産を取り戻し、同じ活動をする他の先住民女性らを支援している。
2年前の朝4時、シェイラ・ストーンチャイルドはバンクーバーのアパートで夢から覚めた。腕には鳥肌が立ち、背筋がぞくぞくしていた。夢の中で、ある声が彼女の耳にこうささやいた。〝マトリアーク・ムーブメント(女性統治者となれ)〞と。「夢は先祖やガイドからのメッセージです」とストーンチャイルドは言う。「だからその声に従わなくては、と思いました」。その探求は彼女の使命となった。
ネイティブ・インディアンで、プレーンズクリー族とメティ(カナダのインディアンとヨーロッパ人の子孫)の血をひくストーンチャイルド(27歳)は、カナダに住む他の先住民女性と同様に、常に恐怖や差別にさらされてきた。先住民に対する性別および性的暴力を追跡している非営利団体「Sovereign Bodies Institute」の報告によると、アメリカとカナダで4000件を超える先住民女性や少女の失踪および殺害事件が未解決のままとなっている。また専門家は実際にはもっと多いとみている。その理由として、先住民団体「Urban Indian Health Institute」は「過少報告や人種の誤判別、法執行機関と先住民コミュニティとの敵対関係、杜撰な記録保管、メディアにおける制度的人種主義、ジャーナリストとアメリカインディアンおよびアラスカ先住民との実質的な関係の欠如が挙げられる」と、2018年の「先住民女性、少女の失踪と殺害」で報告している。
先祖の夢を見た当時、ストーンチャイルドは自分が社会的弱者であることにうんざりしていた。まるで透明人間のように、簡単に切り捨てられる扱いを受けていた。だが夢の声が、変化はもう始まっていると告げた時、自分でそれを波及させようと思った。「先住民、特に女性としての地位向上と再生のために行動を起こそう」と。そして、多くの先住民族の女性がたどるシナリオを書き直すための交流の場としてマトリアーク・ムーブメントを立ち上げ、「私たちはその他大勢ではない」というスローガンとともに、自身を高め、満たされ回復するシナリオを共有できるコミュニティをつくった。

カナダでは今も100年以上前の法律が先住民の生活を管理している。1876年のインディアン法では、先住民の地位、土地、教育、資源を制限するだけでなく、数千年も続いていた先住民の自治制度を廃止してヨーロッパ式の選挙制度を押し付けた。
インディアン法はあらゆる点で先住民たちの文化を排除し、彼らを移民として扱った。寄宿学校は、先住民たちを西洋文化に「同化」させるために設立された。つまり、時には暴力的に子どもたちを家から引き離し、先住民の遺産、伝統、言語を禁じる教会経営の学校に押し込むという虐待的な同化教育が行われたのだった。2018年に『ワシントンポスト』紙は、1883年から1998年にかけて少なくとも3200人の子どもが死亡したと報告している。その死の多くは隠蔽され、遺体も発見されなかった。その証拠として、2015年にカナダ真実和解委員会(寄宿学校制度の歴史を記録するための組織。今は解散している)は、確認できた死亡児童のおよそ3分の1については、名前の記録すらなかったと報告している。当局は両親への死亡報告を日常的に怠っていたのだ。
この残忍な歴史はそれほど昔のことではない。カナダの最後の寄宿学校は1996年に閉鎖されたものの、単に児童福祉システムに取って代わられただけだとストーンチャイルドは言う。養護施設にいる 3 万人の子どもや若者のほぼ半分は先住民族であり、一部の州では養護施設の先住民の子どもの割合は78%に達している。さらに先住民の数はカナダの人口のわずか5%ながらも、2018年に殺害された651人の犠牲者のうち140人は先住民であり、報告された殺人の5分の1を超える。

内なる創造主とつながろう
2018年の「Masters of the Universe Summit」に出席したストーンチャイルド
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「lululemon Here to Be」イベントでのレッスン
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ストーンチャイルドと兄弟のジョエル(左)にグレイソン・オレット(右)。「クリー族の言葉では、姉をニミスと言います」とグレイソンは言う。「姉は僕たちの保護者であり、メンターであり、インスピレーションそのものです。強くしなやかで、先住民族の地位を引き上げる原動力です」
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by Lindsay Tucker
photos by Brien Hollowell
model by Shayla Stonechild
translation by Sachiko Matsunami
yoga Journal日本版Vol.75掲載

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