「失敗したらどうしよう」「うまくやれる気がしない」失敗するのが怖い人に臨床心理士が伝えたいこと

 「失敗したらどうしよう」「うまくやれる気がしない」失敗するのが怖い人に臨床心理士が伝えたいこと
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石上友梨
石上友梨
2021-07-31

「失敗して怒られたらどうしよう」「うまくやれる自信がない」「同僚や後輩と比べて自分は劣っている感じがする」そんな風に悩んではいませんか?何かをやる時に、「自分にはうまくできないのではないだろうか」「失敗したらどうしよう」と考え、無事に終わると達成感よりも安堵を感じていませんか?社会人になってから失敗することが怖くなった人も多いのではないでしょうか。そんな人は、今回の記事を参考にしてください。

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失敗することが怖いと、仕事や課題をつい先延ばしにしてしまうことがありますよね。また、不安が強いと積極的に取り組むことができず、周囲からやる気がないやつだと思われているに違いない等、新たな心配事が生まれて悪循環に陥ることがあるでしょう。失敗することが怖くて取り込めないことで、なりたい自分からどんどん遠ざかっていませんか。「こんな自分が嫌いで落ち込んでしまう」「こんな自分になりたいわけじゃなかった」と後悔したり、「どうせ自分は変われない」と諦める前に、今からできることに取り組んでいきましょう。

どんな時に失敗が怖くなるの?

まずは、どんな時に失敗が怖くなるのか振り返ってみましょう。あなたが怖くなるのは、新しいことに挑戦する時でしょうか。それとも、難しい課題に取り組む時?上司など立場が上の人から頼まれた時?特に気持ちが昂りやすい状況はあるのでしょうか。そして、同じような感覚をはじめて感じたのは、何歳頃でしょうか。もしかして、あなたの失敗への恐怖は、昔の失敗体験から来ているのでしょうか。その失敗体験の存在が大きすぎて、今も引きずってしまっているのではないでしょうか。

失敗することは悪いことではない

失敗することは悪いことではなく、失敗は私たちに必要なことです。世の中に失敗しない人はいないですし、失敗しないと物事を改善し、より良い方法を思いつくことはできません。しかし、私たちは何故失敗は悪いことだと感じてしまうのでしょうか。そこには、文化的な背景や育ってきた環境が影響しているかもしれませんね。小さい子供は失敗に自分でうまく対応できないことが多いでしょう。その際に周囲の反応やフォローによって失敗の捉え方が変わります。もしあなたが失敗を過剰に恐れているとしたら、自分自身が大きなショックを受けただけではなく、周囲も上手に反応できなかったのかもしれませんね。そして失敗に対する過剰な不安が、先延ばしや回避につながり、失敗が成功に変わる体験を経験できなかったのではないでしょうか。

過去の失敗体験を振り返る

想像力を使って、過去に失敗をして傷ついた子供の自分に対して、今の大人の自分から声をかけてみましょう。あなたは本当はどのような言葉をかけて欲しかったのでしょうか。傷ついた自分を慰めたり、それを責めた大人に怒りを表すような、その時の自分が欲しかった言葉を考えてみましょう。それを紙に書き出したり、独り言のように実際に声に出したりします。そして、現在同じように失敗した時、失敗しそうで怖くなった時にも同様に言葉をかけてみましょう。

パターンを変えてみる

今までの失敗パターンを書き出し、変えられるところを変えてみましょう。全部を変えるのではなく、変えられそうなところから変えてみます。本当はやってみたい仕事でも失敗することが怖くて、取り組みを避けているのなら、パターンを少しずつ変えてみましょう。例えば、絵を描くことが好きだけれど、友人に見せた反応が怖くて誰にも見せないのだとしたら、どのように変えることができるでしょうか。見せる相手を選ぶことや、「感想は言わなくていいよ」「見せた時の反応に緊張するんだ」など前置きをした上で見せることもできるでしょう。はじめからうまくいくかは分かりません。どうなるのか試してみる「実験」と捉えて取り組みましょう。

初めて何かを試みる時、久しぶりに何かを試みる時は、緊張して当然です。その際は、なるべくハードルが低い相手、ハードルが低い状況になるように工夫をしましょう。例えば、時間に余裕がない相手、批判的な相手ではなく、あなたに関心を向けている相手、気持ちが落ち着いている相手がよいでしょう。もしも心配な場合は、心理師など専門職を選んで練習することもおすすめです。安全な人とパターンを変える練習に取り組むことで、少しずつ前に進んでいくことができます。

パターンを変えることは、とても大変なものです。まずは、取り組もうと思った自分を労いましょう。そして今までのパターンが続いている期間が長ければ長いほど、変化はゆっくりと進みます。少しでも取り組めた自分を労い、誉めることが継続の力となり、新しいパターンの獲得へとつながるでしょう。
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石上友梨

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。



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