周囲にあたり散らす、カッとなる…攻撃性の裏にあるものとは|禅僧の精神科医・川野泰周さんに聞く

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理性の機能が働かない=粗暴な感情が行動として表出

――疲れの蓄積で、最初に調整が難しくなるのが理性だということですね。

そうなんです。理性からコントロールができなくなってきます。脳の最も外側の、理性の機能が利かなくなってくると、次に少し深めの「大脳辺縁系」と呼ばれる場所にある、感情の活動部位、扁桃体が勝手に反応するようになる。加えて、海馬の部分も同じ大脳辺縁系のひとつなので、記憶と感情の統制、両方に影響が及びます。この状態こそが心の疲労(脳疲労)となって、さまざまな弊害を生み出しているのではないかと考えられます。

簡単にいうと、普段は前頭葉が働いているから理性的に行動できていることも、だんだん疲れが蓄積されることでコントロールができなくなる。感情がそのまま行動化されてしまうんです。

例えば、厳しい父親に育てられたことが原因で、自分より優位な人間に何かを言われることに嫌悪感がある人。普段はそれが記憶にストックされているだけ理性的に行動できているけれど、疲れてくると相手が少し優位な目線で話をしただけで突然怒りだしてしまう。自分より立場が上に見える人に対して、相手が何もしていないのに歯向かったり、SNSで「どうせお前らには分からないだろう」と嚙みついたり。こういう粗暴な感情が行動として表出されてしまうことが、今大きな問題になっていますよね。

でも、これはごく自然な現象なんです。追い込まれると、感情が行動という形で表出してくる。本性が出るといってもよい状態かもしれません。心が疲れているから理性が働いていない。その状態の人が多いのかなと思います。

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Text by Mitsue Yoshida

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ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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