なぜ「自傷行為」はいけないのか|臨床心理士の見解とは
「自分を傷つける行為」デメリットとは
自分を傷つける行為は、生きるためにやっていたとしても身体を傷つけることには変わりありません。心の痛みをコントロールできる身体の痛みに置き換えたところで、心の痛みは癒えません。感情を感じないことは「楽しい」や「嬉しい」といった暖かい感情も感じないということです。そうすると生きていることの実感がなかったり、虚しさがいつまでも続くかもしれません。また、感情を抑えることはものすごいエネルギーを使うので、生きているだけで疲労するかもしれません。辛い感情を和らげても、辛い感情をもたらす根本的な問題は解決されていません。だから苦しさはいつまでも続きます。そして、これらのものは癖になり、今までと同じ量や回数では同じ効果は得られないため、どんどん行動がエスカレートしていきます。そうすると身体が傷つき、エネルギーはなくなり、感情コントロールはどんどん難しくなります。もともとのストレスや心の痛みに加えて、新たな問題が出てきて、問題が複雑化してしまうのです。生きるための対処で、どんどん生きることが困難になります。ここで大切なのは、自傷行為という対処法自体を否定しているのではなく、そんな悪循環に陥って欲しくないということです。
自傷行為をしたくなったら
本来ならば、心の傷を直接癒す方法を取った方が、問題はこじれなくて済むのです。しかし、なぜそれが難しいのかというと、辛い気持ちになった原因がおそらく対人関係だからではないでしょうか。家族なのか友人なのか、仕事の関係なのか、人間関係で傷つくと他者に対する不信感でいっぱいになります。ときには世界に対する不信感も強くなります。私たちが傷つくのは対人関係ですが、私たちが癒えるのも対人関係によってなのです。家族や友人でも、専門家でも、信頼できそうな人に相談をして、気持ちを共有し、一緒に解決方法を考えることです。もしそれが難しければ、自分と自分の関係も大切です。誰にも頼れなくて、さらに自分で自分を否定したり責めてばかりだと世界は敵しかいなくなります。自分で自分の心も身体も傷つけないように接することができると良いでしょう。まずは自分との関係を良くすること、そして、信頼できそうな人とつながることです。さらに、少しずつ自分に優しい対処法が増えていくといいでしょう。
ライター/石上友梨
臨床心理士/公認心理師 大学・大学院と心理学を学び、警視庁に入庁。職員のメンタルヘルス管理や、心理カウンセリング、スポーツ選手へのメンタルトレーニングなどを経験。ヨガや瞑想を本場で学ぶためインド・ネパールへ。全米ヨガアライアンス200取得。現在は認知行動療法をベースとした心理カウンセリング、セミナー講師、ライター、ヨガインストラクターなど、活動の幅を広げている。また、発達障害を支援する活動にも力を入れている。
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