許せない人を忘れたいと思ったときの対処法


突然ですが、許せない人はいますか?もしかしたら身近な人物かもしれないですし、過去に出会った人や、もう会う可能性はないのになかなか忘れられない人物かもしれません。許したいけれど許せない場合や、許せない人がいることで自分自身が苦しい思いをしている場合もあると思います。許せない人を忘れたいと思う方は、何かのヒントになるかもしれないです。ぜひ今回の記事を参考にしてください。
許せない相手を忘れようとすることはおすすめできない
シロクマ実験という心理学者ウェグナーが行なった有名な心理学の実験があります。
まず、A・B・Cの3つのグループに参加者を分け、すべてのグループにシロクマの1日を追った同じ映像を見せました。次に、Aグループの参加者には「シロクマのことを覚えておくように」と、Bグループの参加者には「シロクマのことを考えても考えなくてもいい」と、Cグループの参加者には「シロクマのことだけは絶対に考えないでください」と伝えました。一定の時間が経ったあと、実験参加者にシロクマについて覚えているかを尋ねたところ、結果は、「絶対にシロクマについて考えないで下さい」と言われたCグループが、一番詳しく覚えていました。
私たちは「何かを考えないように努力すればするほど、かえってそのことが頭から離れなくなる」という性質があります。許せない相手のことを「忘れよう」「考えないようしよう」と思うことで、余計許せない相手のことが頭から離れなくなってしまいます。
許せない気持ちを否定しないこと
まず、大切なことは許せない気持ちを否定しないことです。許せないということは、それだけ自分にとって大きい出来事だったり、大きなストレスだったということ。許せない気持ちがあっても当然と、自分の気持ちを認めてあげることが大切です。
また、時期も関係します。大きな体験の直後は気持ちの整理も出来ておらず、許すことが難しい場合が多いです。今は許せなくても、いつか許せる日が来るかもしれません。許すまではいかなくても、気持ちを整理してもいいかなと思えるタイミングがやってきます。
許せない相手への対処法
怒りはエネルギーを消耗します。許せない相手がいて、怒りのパワーが強いと、自分も疲労し、辛さを感じる場合が多いです。そんなとき、自分の辛さを軽減する対処法をご紹介します。
相手の「行動」だけに注目する
相手の性格や特性など全体ではなく、「行動」に分解して考える方法です。
例えば、いつも遅刻するAさんが許せない場合。「Aさんは遅刻するだらしない性格だ」とAさんの全体を許せないと考えると、Aさんのあらゆる行動がだらしなく見え、Aさんへの怒りが強くなります。しかし、ここで、Aさんの「遅刻する行動」が許せないと考えると、怒りの対象は遅刻のみに絞られ、怒りが燃え上がりにくくなります。
私たちは、性格や特性はなかなか変えられませんが、行動は変えることができます。全体ではなく行動のみに注目することで、行動を変えるための方法を具体的に検討していくことも可能となります。
相手の視点に立って分析する
相手を主人公にして、相手の視点に立って分析してみる方法です。特に紙に書いて分析することをおすすめします。まず、相手の状況を細かく書きます。次に相手の「考え」「気持ち」「行動」を書き出します。知ってる情報を盛り込み、分からないところは想像で補いながら相手を主人公にしたストーリーを書き出します。
例えば、夫との関係で悩む妻の話です。「金曜日の夜、明日は休みだから夫とのんびり話をしながら映画でも見たいと思って声をかけた。夫は何も答えずに寝室に行き、電気を消して寝てしまった。呆然としたあと、怒りと悲しみが同時に襲ってきて、なんでこんな人と結婚したんだろうと涙が出てきた。」というエピソードを夫の視点に立って分析してみましょう。
状況:今週は仕事が忙しかった。やっと1週間終わり、今日こそはたっぷり寝ようと思い早めに自宅に帰った。妻は何か話をしたいようで、俺が忙しかったことを知っていたと思うけど「お疲れ様」という労いもなく、一方的に話しかけてきた。
考え:「今日くらい早めに寝かせてくれ」「静かに過ごしたい」「お疲れさまくらい言って欲しかった」
気持ち:疲労感100%、 怒り80%、イライラ80%
行動:妻を無視して寝室にいく
相手の視点に立って「こんな状況だったのかな?こんな風に思っていたのかな?」と考えてみることで、視野が広がります。客観的な視点が得られることで怒りが軽減しやすくなります。また、紙に書き出すなど外に出すことで、脳への負担も軽減されます。
最後に
相手を許すことは、その相手と接触することではありません。また、相手を許したからといって、その相手と連絡を取る必要も、接触する必要もありません。別の問題になります。
そして、一番大切なことは自分の辛さを軽減することです。相手のために自分が対処するのではなく、相手が許せなくて辛いのならば、自分の辛さを軽減するために対処するということです。
許せない相手がいて、自分自身が苦しむことや、自分の大切な時間が奪われていくことはとてももったいないことです。
もし、許せない相手がいて苦しい場合は、ぜひ自分の辛さを軽減するために対処法を実践してみてください。
ライター/石上友梨
臨床心理士/公認心理師 大学・大学院と心理学を学び、警視庁に入庁。職員のメンタルヘルス管理や、心理カウンセリング、スポーツ選手へのメンタルトレーニングなどを経験。ヨガや瞑想を本場で学ぶためインド・ネパールへ。全米ヨガアライアンス200取得。現在は認知行動療法をベースとした心理カウンセリング、セミナー講師、ライター、ヨガインストラクターなど、活動の幅を広げている。また、発達障害を支援する活動にも力を入れている。
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