「血圧の薬はいつから飲むべき?」2025年の新しい高血圧診療ガイドラインから考える治療開始の目安

「血圧の薬はいつから飲むべき?」2025年の新しい高血圧診療ガイドラインから考える治療開始の目安
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2026-10-20

血圧の薬をいつから始めるかは、血圧の数値だけで機械的に決まるわけではありません。血圧がどれくらい高いのか、糖尿病などの持病があるのか、心臓や血管の病気を起こしたことがあるのか。そうした条件も含めて考える必要があります。今回は、最新のガイドラインを踏まえながら、治療を始める目安や、薬を飲む前に知っておきたいことを、できるだけわかりやすく医師がお話しします。

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まず知っておきたい「高血圧」の基準

健康診断で「血圧が高いですね」と言われた。でも、特に体調が悪いわけでもないし、頭痛がするわけでもない。できれば薬は飲まずに、食事や運動で何とかしたい。

そんなふうに思う方は、けっこう多いのではないでしょうか。血圧の薬は、一度飲み始めたら一生やめられない。そんなイメージを持っている方もいるかもしれませんね。

2025年には、日本高血圧学会から新しい「高血圧管理・治療ガイドライン2025」が発表されました。今回の改訂では、薬による治療だけでなく、生活習慣の改善や、血圧を継続して管理することも重視されています。

では、実際にどのくらい血圧が高くなったら薬を考えるのでしょうか。

最初に、血圧の基準を整理しておきましょう。

日本高血圧学会の2025年版ガイドライン

医療機関で測った血圧が140/90mmHg以上、家庭で測った血圧が135/85mmHg以上の場合、高血圧と診断する目安になります。

上の血圧だけでなく、下の血圧も基準を超えていれば注意が必要です。

ここで大切なのは、病院で測った血圧と、家で測った血圧では基準が少し違うこと。病院では緊張して血圧が高くなる人もいますし、反対に、病院では正常なのに家では高いという人もいます。だから、診察室で測った1回の数値だけで判断するのではなく、家庭での血圧も確認することが大切なんですね。

「健康診断で少し高かったけれど、たまたまだろう」と思っている方は、まず自宅で血圧を測る習慣をつけてみてください。

朝起きてトイレを済ませたあと、朝食や薬を飲む前など、なるべく同じ条件で測ると、普段の血圧がわかりやすくなります。

高血圧
photo/Adobe Stock

血圧が140/90以上なら、すぐ薬を飲むの?

ここが、いちばん気になるところかもしれません。

血圧が140/90mmHg以上になったら、全員がその場ですぐ薬を飲み始めるのでしょうか?

答えは、必ずしもそうではありません。

治療を始めるタイミングは、血圧の高さに加えて、糖尿病や慢性腎臓病があるか、心筋梗塞や脳卒中を起こしたことがあるかなど、本人の状態によって変わります。

例えば、血圧が140/90mmHg以上で、心血管疾患のリスクが高い人では、生活習慣の改善と並行して、早い段階から薬による治療を始めることが勧められています。

一方、リスクが比較的低い人では、食事や運動などの生活習慣を見直し、血圧の変化を確認しながら、薬が必要かどうかを判断する場合もあります。

ただし、血圧がかなり高い場合や、すでに高血圧と診断されている場合は、自己判断で様子を見続けないことが大切です。

「もう少し食事に気をつけてから……」と先延ばしにしているうちに、血管への負担が続いてしまうこともあります。

薬を始めるかどうかは、医師と相談しながら決めましょう。

血圧が130台でも、放っておいていいわけではない

「140を超えていなければ大丈夫」と思っている方もいるかもしれません。

でも、血圧が130台だからといって、何もしなくてよいわけではありません。

2025年版ガイドラインでは、130/80mmHg以上の人に対して、生活習慣を見直し、具体的な血圧管理に取り組むことが重視されています。

例えば、上の血圧が135mmHg前後で、ほかに大きな問題がない人なら、まずは減塩や運動、体重管理などに取り組むことが考えられます。

一方、同じ135mmHgでも、糖尿病や腎臓病がある人、心筋梗塞などを起こしたことがある人では、より慎重な管理が必要になる場合があります。

つまり、血圧の数値が同じでも、必要な対応は人によって違うということです。

健康診断で「少し高め」と言われたら、そのままにせず、普段の血圧を確認しておきましょう。

2025年のガイドラインでは、血圧をどこまで下げる?

今回のガイドラインで、ぜひ知っておきたいのが、治療中の血圧の目標です。

原則として、目指すのは次の数値です。

診察室で測る血圧:130/80mmHg未満

家庭で測る血圧:125/75mmHg未満

以前よりも低めの目標が示されています。なぜ、ここまで下げることを目指すのでしょうか。

それは、血圧を適切に下げることで、脳卒中や心筋梗塞などのリスクを減らす効果が期待できるからです。

ただし、数字を下げれば下げるほどよい、というわけではありません。

血圧が下がりすぎると、立ちくらみが起きたり、腎機能に影響したりすることがあります。高齢の方や、もともと血圧が低めの方などでは、特に注意が必要です。

そのため、目標はあくまで原則です。年齢や持病、薬による副作用などを考えながら、無理のない範囲で血圧を管理していきます。

「目標値に届いていないから、薬を増やさなければ」と自分で判断するのではなく、家庭血圧の記録を持って医師に相談するのがよいですね。

薬を飲まずに、生活習慣だけで下げられる?

できれば薬を飲まずに済ませたい。そう考える気持ちは、よくわかります。

実際、生活習慣を見直すことで、血圧が改善する人はいます。

特に意識したいのが、次のようなことです。

  • 塩分をとりすぎない
  • 野菜や果物、大豆製品などをバランスよく取り入れる
  • 体重が増えすぎないようにする
  • 無理のない範囲で歩くなど、体を動かす
  • お酒を飲みすぎない
  • 睡眠をしっかりとる

なかでも、減塩は大切です。

外食や加工食品、麺類の汁などには、思った以上に塩分が含まれていることがあります。いきなり完璧を目指さなくても、汁を残す、調味料をかけすぎない、減塩タイプの商品を選ぶといった工夫から始められます。

運動も、最初から激しいトレーニングをする必要はありません。少し速めに歩く時間をつくるなど、続けられそうなことから始めてみましょう。

ただし、生活習慣を改善すれば、必ず薬が不要になるわけではありません。

血圧が高い状態が続いている場合には、薬を使ったほうがよいこともあります。薬を飲むことになったとしても、生活習慣の改善が無駄になるわけではありません。両方を組み合わせることが大切です。

血圧の薬は、一度飲んだら一生やめられない?

診察室でよく聞くのが、この質問です。

「血圧の薬を飲み始めたら、もう一生やめられないんですよね?」

実は、必ずしもそうとは限りません。

薬を飲みながら減塩や減量、運動などに取り組み、血圧が安定してくると、医師の判断で薬を減らせる場合もあります。

ただし、血圧が下がったのは薬が効いているから、ということも少なくありません。数値がよくなったからといって、自分の判断で薬をやめてしまうと、再び血圧が上がる可能性があります。

血圧の薬を減らしたり、中止したりする場合は、家庭血圧の記録などを参考にしながら、医師と相談して進めましょう。

薬を飲み続けること自体が目的ではありません。大切なのは、血管や心臓への負担を減らし、将来の病気を防ぐことです。

こんなときは、早めに医療機関へ

血圧は、普段の生活では症状が出ないまま高くなっていることが珍しくありません。

だからこそ、数値を確認することが大切です。

家庭で測った血圧が何日も高い状態で続く場合は、医療機関で相談しましょう。特に、上の血圧が160mmHg以上、あるいは下の血圧が100mmHg以上の状態が続く場合は、早めの受診をおすすめします。

また、血圧が180/120mmHg前後以上と非常に高く、胸の痛み、息苦しさ、強い頭痛、手足の麻痺、言葉が出にくいなどの症状がある場合は、救急対応が必要です。すぐに119番へ連絡してください。

強い症状がなくても、極端に高い数値が出た場合は、落ち着いて正しい方法でもう一度測り、速やかに医療機関へ相談してください。

大切なのは、薬を飲むかどうかを一人で悩まないこと

血圧の薬をいつから始めるか。これは、誰にとっても同じ答えになるわけではありません。

血圧の高さだけでなく、持病や年齢、これまでの病歴などを踏まえて判断する必要があります。

2025年版のガイドラインでは、血圧を適切に管理することに加え、生活習慣の改善や、一人ひとりの状態に合わせた治療が重視されています。

まずは、家庭で血圧を測ることから始めてみてください。できれば朝と夜に測り、数日から数週間の記録を残しておくと、診察の際にも役立ちます。

「薬を飲むほどではないと思うけれど、少し気になる」、そんな段階でも、遠慮せずに医師に相談して大丈夫です。

血圧が高くても、初めのうちは自覚症状がないことがほとんどです。だからこそ、症状が出てから考えるのではなく、早めに気づいて対策することが大切なんですね。

薬を飲むことを必要以上に怖がる必要はありませんし、反対に、薬を避けることだけにこだわる必要もありません。

自分の血圧を知り、自分に合った方法で管理していく。その積み重ねが、将来の心臓や血管を守ることにつながります。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

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