家族が家にいるだけなのに、なぜこんなに疲れる?更年期女性を消耗させる思い込みの正体
更年期の方に向けたサービス「よりそる」を運営する高本玲代さんが綴るコラム連載。高本さんご自身もまさに更年期世代。わかりやすい不調だけではない更年期の影響について、体験を交えてお話しいただきます。
夏休みに入り、子どもや夫が家にいる時間が増えると、なぜか疲れる。特別どこかへ出かけたわけでもない。ものすごく忙しくなったわけでもない。それなのに、一人で過ごしていたときよりも明らかに疲れてしまう。
「家族が家にいるだけなのに、どうしてこんなに疲れるんでしょう」
更年期の女性のご相談にのっていると、夏休みなど家族が家にいる時間が増える時期に、こうした声を聞くことがあります。
もちろん、家族が家にいれば食事の準備が増えたり、片付けるものが増えたりします。生活のペースも普段とは変わるでしょう。けれど、実際に相談者の方に詳しく聞いていくと、それだけではないことが多いのです。
そこには、もう一つ共通するものがあります。それが、「家族がいると、ちゃんとしなければいけない」という思い込みです。
家族がいると、なぜか「いつもの自分」でいられない
たとえば、一人で家にいる日のことを想像してみてください。少し疲れていたら、午前中にソファで横になるかもしれません。お昼になってもそれほどお腹が空いていなければ、簡単なもので済ませる日もあるでしょう。今日は何もしたくないと思ったら、洗濯物をたたむのを後回しにしたり、掃除を明日に回したりすることもあると思います。
ところが、家族が家にいるとどうでしょうか。お昼になれば「何か作らなきゃ」と思う。家族がくつろいでいる横で、自分だけ昼寝をするのはなんとなく気が引ける。家事が残っているのに、自分だけ好きなことをしていると落ち着かない。誰かに「やって」と言われたわけでもないのに、なぜか動いてしまう。
実際に相談者の方に話を聞いてみても、こうしたことは少なくありません。そこでよくよく考えてみると、不思議なことに気づきます。
家族から「休まないで」と言われているわけではない。「毎食きちんと作って」と言われているわけでもない。「昼間からゴロゴロしないで」と言われたわけでもない。それでも、自分の中で勝手に「家族がいるときの自分」に切り替えてしまっているのです。
疲れているのは、家族のせいだけではないのかもしれない
もちろん、家族が家にいることで実際に増える負担もあります。ですから、「家族がいると疲れる」という感覚そのものを否定する必要はありません。
ただ、「家族がいるから私は疲れる」だけで終わってしまうと、解決するためには家族に出かけてもらうか、自分が一人になるしかなくなります。
そこで一度考えてみてほしいのです。家族がいるとき、私は自分をどんな状態に変えようとしているだろう、と。
一人のときなら休むのに、家族がいると休まない。一人なら適当に済ませることを、家族がいるときだけきちんとする。一人なら自分の好きなタイミングで動くのに、家族がいると家族の時間に合わせる。
つまり、家族が家にいることで疲れているように見えて、実はその間ずっと、自分自身を「ちゃんとした状態」に保とうとしていることがあります。これは思っている以上に疲れることです。
特に更年期は、以前と同じようには体力が続かない、疲れたときに回復するまで時間がかかる、と感じる方も少なくありません。そんな時期に、家族が家にいる朝から晩まで「ちゃんとした自分」を維持しようとしたら、疲れてしまうのも不思議ではありません。
「家族がいるときの自分」を一度書き出してみる
では、この思い込みをどうすればいいのでしょうか。私はまず、「やめよう」とする前に、自分が何をしているのかを知ることが大切だと思っています。
家族がいる日と、一人の日を比べてみてください。家族がいるときだけやっていることはありませんか。あるいは、一人ならするのに、家族がいるとしなくなることはないでしょうか。
「昼寝をしなくなる」「昼食をきちんと作る」「家族が起きている間は自分の部屋へ行かない」「テレビを見ながらゴロゴロしなくなる」「家事を後回しにできなくなる」「自分だけ出かけることに罪悪感がある」「家族より先に休むことができない」
こうして具体的にしていくと、自分でも気づかなかったルールが見えてくることがあります。そして、その一つひとつについて考えてみてください。「これは、本当に誰かに求められていることなのだろうか」と。
実際に家族が困ることなら、もちろん相談する必要があります。でも、誰も求めていないのに、自分だけが守り続けているルールも意外とあるのではないでしょうか。
思い込みは、いきなり全部手放さなくていい
長い間続けてきた習慣ですから、「今日から家族がいても好きなように過ごそう」と思ったところで、すぐにはできないかもしれません。
ソファで横になっていても、「こんなことをしていていいのかな」と落ち着かない。自分だけ簡単な昼食にすると、「家族にはちゃんと作ったほうがいいんじゃないか」と思ってしまう。そんなこともあるでしょう。
だから、全部を一度に変える必要はありません。まずは一つだけ試してみます。
たとえば、「今日は疲れているから、午後は30分だけ自分の部屋で休む」でもいいでしょう。「今日のお昼はそれぞれ好きなものを食べる」でもいい。「家族がリビングにいても、自分はソファでゴロゴロしてみる」でも構いません。
そして実際にやってみたあと、何が起きたかを見てみます。家族は本当に困ったでしょうか。何か大きな問題が起こったでしょうか。それとも、意外と何も起こらなかったでしょうか。
思い込みというのは、頭の中で「そんなことをしてはいけない」と考えているだけでは、なかなか変わりません。小さくやってみて、「あれ、これでも大丈夫だった」という経験を積み重ねていくことで、少しずつ変わっていくものだと思います。
「だらだらしている自分」を見せてもいい
そしてもう一つ、ぜひ考えてみてほしいことがあります。あなたは、家族に「だらだらしている自分」を見せられますか。
何もせずソファに寝転がっている自分。疲れたから家事をやめている自分。今日は料理をしたくないと言っている自分。好きな動画を見ながら、一人でぼーっとしている自分。そういう自分を、家族の前に出せるでしょうか。
もしかすると、「そんな姿を見せたらだめ」と思っている方もいるかもしれません。でも、家は本来、自分も休んでいい場所です。家族が休んでいる横で、自分だけがずっと家族を支える側でいなければならないわけではありません。
お母さんだから。妻だから。家族がいるから。そうやって知らないうちに身につけてきた役割を、一度全部外してみる時間があってもいいと思うのです。
家族がいても、自分の時間を持っていい。一人で好きなことをしていてもいい。疲れていたら横になってもいい。そして、だらだらしている自分を見せてもいい。それは家族を大切にしていないということではありません。
夏休みは、自分の中の「当たり前」を見つける機会にもなる
夏休みは、普段とは家族の生活リズムが変わります。だからこそ、いつもは見えなかった自分の癖が見えやすくなる時期でもあります。
「家族が家にいると疲れる」。そう感じたとき、もちろん一人になる時間を作ることも大切です。でも、その前に一度、「私は家族がいると、何をしようとしているんだろう」と考えてみてください。
家族がいるときだけ頑張っていること。家族がいるときだけ我慢していること。一人なら許せるのに、家族の前では自分に許していないこと。そこに、自分を疲れさせているものが隠れているかもしれません。
そして見つけたら、一つずつ、「これは本当に必要?」と問い直してみる。もし必要がないのなら、今年の夏は一つだけやめてみてもいいのではないでしょうか。
家族がいるからといって、ずっと「ちゃんとした自分」でいなくてもいい。自分の時間を持っていい。疲れた日は休んでいい。そして家族の前で、何もしない自分がいてもいい。
家族との過ごし方を変えるというより、家族といるときの「自分のあり方」を少し変えてみる。それだけでも、夏休みの疲れ方は変わってくるかもしれません。
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