1)イラストレーターであり、住職。さらに介護と3本の草鞋を履く中川学さんが語る〝生病老死〟

1)イラストレーターであり、住職。さらに介護と3本の草鞋を履く中川学さんが語る〝生病老死〟
AdobeStock
Saya
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2026-07-19

親の老いに向き合うというのは、ある日突然はじまるものです。わたしの場合、それは父の“夜間の徘徊”というかたちでやってきました。これまでは京都での暮らしや移住生活のことを書いていましたが、その裏では東京にいる父の認知症が進行し、家族で介護体制をどう整えるかに奔走していました。介護というと、大変そう、重たそう…そんなイメージがあるかもしれません。でも、わたしにとっては、家族とのつながりを見つめ直し、人の優しさに心動かされることが増えた、そんな時間でもありました。 この連載では、認知症介護の体験を通して、わたしが出会った「幸せの秘密」を、少しずつ綴っていきたいと思います。

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介護体験の「番外編」として、インタビューをお届けする企画。2回目は、京都・木屋町にひっそりとたたずむ瑞泉寺のご住職、中川学さんです。

瑞泉寺は、「秀次事件」で殺された豊臣秀次公と、その側室や子どもたちの菩提を弔う浄土宗のお寺です。わたしの母方が江戸時代、秀吉の奥方のねねさまの家の家老であったこと、瑞泉寺との浅からぬご縁については、以前もご紹介していますが、今回は、「秀次事件」はちょっと脇へ。現在、ご両親の自宅介護中だという中川さんが介護について何を思うのか、個人的にお話を聞いてみたくなったのでした。

中川さんのご両親は、13、4年前にお母さまが老人性うつ病に。何も食べられない、どこにも行けないという状態に急になられたそうです。お父さまも、ここ数年で認知症状が進み、わたしの父のような易怒性や徘徊はないそうですが、短期記憶がもたないと言います。

お寺さんで同居家族が常に誰かしら、家にいるのは介護にプラスなようでも、中川さんは、実は、イラストレーターとしても活躍されています。「お寺」「介護」「イラスト」という3つの〝仕事〟を、ひとつの場所で何年も続けておられるのは、逃げ場がない面もあるはず。さらに、お寺では定期的にお能や落語、狂言などの奉納もされている。檀家さんや知り合いだけでなく、新聞などに公演の情報が掲載されれば、一般からも申し込みがある。イラストレーションのほうも個展や絵本の出版などが続き、目のまわるほどの忙しさのはずなのに、それでいて、苛立つということもなく、すくっと立っていらっしゃることも、会いたいと思った理由のひとつでした。

「結局は、〝生病老死〟なんです。仏教の最初の気づきで、そこから瞑想して、この世は苦であると。病気で苦しんで、ようやく亡くなるという人もいるし、突然、お風呂で亡くなる人もいる。何日か経ってから発見されてという人もいる。生前どう生きていようが関係ない。いい行いをしていた人がいい死に方をするわけでも、悪い行いで、悪い死に方というわけでも、どうもなさそうなんですよ。

死を避けることは誰にもできない。この世にずっといることはまず無理ですよね。僕は、浄土宗というナムアミダブツの宗派で、禅宗や真言宗に比べると、坐禅や滝行があるわけではない。ラクな宗派だと言われるし、自分でもそう思うんですが、でも、すべてのことはナムアミダブツ。阿弥陀さまからの贈りものとして、受け取りなさいよと言われているわけだから、幸せなことは受け取るけど、病気とか借金とか世にある不幸は受け取らないとはならない。すべてのことをナムアミダブツで感謝して受け取らないといけないというのは、やはり修行ですよ。つまり、この世界で生きているってことは、阿弥陀さんから、仏さんから課せられた修行を生きているということなんです」

→【記事の続き】2)介護も仕事も、阿弥陀さまに与えられた修行。 苦にとらわれず、仏への使命ととらえるこちらから。

お話を伺ったのは…中川学さん

1966年生まれ。京都在住。浄土宗西山禅林寺派の僧侶にしてイラストレーター。Adobei llustaretorを使い幅広いスタンスでイラストレーションを描き、近年は絵本制作にも力を入れている。『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』(汐文社)、『絵本 化鳥)(国書刊行会)、『えほん遠野物語 やまびと』(汐文社)、『八雲えほん 因果ばなし』(岩崎書店)、『のこったのこった』(絵本 館)、『幸せに長生きするための今週のメニュー』(ミシマ社)、『おいなりさん』『そのとき門はひらかれた 法然上人ものがたり』「だいぶつさま」シリーズ(アリス館)など多数。この夏、絵と文で京都の聖地を紹介する本『京都いま浄土』(ミシマ社)を出版予定。TIS会員。

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