精神科医・広岡清伸が指南!うつ病からの回復に向けて大切なこと

精神科医・広岡清伸が指南!うつ病からの回復に向けて大切なこと
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仕事に追い立てられ、気力が尽きかけている現代の私たちへ。「日本一優しい」と評判の精神科医、広岡清伸(ひろおか・きよのぶ)さんの著書『ごめんなさい、もうこれ以上頑張れません 生きづらい社会で傷ついた人が、再び「自分」を取り戻すまで』(アスコム)より内容を一部抜粋して紹介します。

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うつ病でも休めば必ず回復する

うつ病は「まじめな人だけの病」でも「いい加減ならかからない病」でもありません。ただ、責任感が強く自分を後回しにしがちな人ほど、無理を重ねやすいーー臨床ではその傾向をよく見ます。坂本さんのように、ボロボロになってもまだ自分を責める患者さんを見ていると、いつも「人生とはなんと不条理なのか」と思ってしまいます。

そして、さらに不条理なのは、現代社会の歪みといっていい「比較」の問題です。わたしたちは、子どもの頃から常に誰かと「比較」され、「成果」を挙げない人は非難の対象になります。しかし、よく考えていただきたいのは、仮にある場面で成果を出せなくても、それはその人がダメな人間だということにはつながらない、ということです。あくまでその会社の、その部署で、上司が求める結果を出せなかった。ただそれだけの話に過ぎません。言うまでもなく、人の価値は多面的なものです。会社で成果を出せてなくても、たとえば釣りがすごく上手いかもしれませんし、スポーツなら一番かもしれませんし、手先がすごく器用かもしれません。

あるいは、何か得意なことがなかったとしても、すごく優しくて愛される人柄かもしれません。職場での価値はあくまで人生のなかの一側面に過ぎませんから、会社を一歩出れば、忘れていいはずのものです。しかし、なぜかわたしたちは、社員としての価値と、人間としての価値を混同しがちです。もちろん、会社は長い時間を過ごす場所ですし、経済的にも依存しているという現実があります。会社で受けるプレッシャーは、わたしたちに重くのしかかるのは事実です。ただし、会社員としての価値と、人間としての価値はそもそもイコールではないと割り切ることは大事です。そうでないと、たった一つの物差しで自分を否定しなくてはならなくなります。そして、真面目な人ほど、成果を出せないことで自分の人格までも否定してしまいます。「こんなこともできない自分はダメなやつだ」と思い込みます。

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(精神が疲労して「うつ」を発症した、坂本さんとの診察室での会話)

広岡:わたしは、うつ病には真面目さ、責任感、共感性が高い人ほど抱えやすい側面があるとお伝えしています。坂本さんも、その生き方の誠実さゆえに無理を重ねてしまったのだと思います。うつ病は、社会に適応して生きてこられた人が、あるとき、不当な要求に応えようとして応えられず発症してしまうことが多い病気です。うつ病の人に対して、「怠け者」だと思う人もいるようです。しかし、発症したからそう見えるだけであって、それまでの行動を振り返ると、誰よりも献身的に振る舞っている人が多いものです。うつ病になる人は社会に不適合な人ではなく、社会に順応できる人たちです。順応できるからこそ、会社から期待されると、よけいに頑張ろうとするところがあります。でも、競争社会の中での仕事は厳しいですよね。この目標ができるようになったら、次はこの目標。会社は常にギリギリのところまで求めてきますから。でも、どこかの段階で応えられなくなるときがあります。

坂本:そうですね……。

広岡:結果、パフォーマンスが落ちて評価が下がると自信をなくし、将来を悲観するようになります。会社や周囲の手のひら返しの対応に、人を信じられなくなり、仕事を楽しめなくなります。坂本さんのような症状を訴えてくる患者さんは、ほとんどそうです。うつ病は、立派な生き方をされてきたから発症する病なんです。

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わたしは診察の最後に、坂本さんと奥さまに、うつ病の回復に向けて大切なことを改めてお伝えしました。

・うつ病は治療でよくなる病気です。焦らず一緒に回復を目指しましょう。

・薬は奥さまが保管し、毎回手渡ししてください。自己判断で中断しないでください。

・休むことで蓄積した疲労を回復させることがとても大切です。そのためにいったん仕事から離れることが必要です。

・栄養失調を避けるため、食事は少量でも規則的に摂るようにしてください。

・あなたの存在には比較のない価値があります。「絶対的なプライド」を大切にしてください。

・病気はご家族で支え合って乗り切れます。家族はみんなの安全基地です。

坂本さんと奥さまは、その日、回復に向けてやるべきことがわかって、少し希望が見えたようでした。

『ごめんなさい、もうこれ以上頑張れません 生きづらい社会で傷ついた人が、再び「自分」を取り戻すまで』(アスコム)
『ごめんなさい、もうこれ以上頑張れません 生きづらい社会で傷ついた人が、再び「自分」を取り戻すまで』(アスコム)
 

この本の著者…広岡清伸(ひろおか・きよのぶ)

精神科専門医、指導医、精神保健指定医。広岡クリニック理事長。富山県高岡市出身、早稲田大学中退、日本大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院研修医、堀ノ内病院、関東労災病院などを経て1992年に横浜市港北区に広岡クリニックを開設。患者の目線に立って治療する独自の「肯定的体験療法」が評判を呼ぶ。今まで診察してきた患者は1万人を超える。著書に、『広岡式こころの病の治し方』(日経BP社)、『心の病になった人とその家族が最初に読む本』(アスコム)などがある。

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『ごめんなさい、もうこれ以上頑張れません 生きづらい社会で傷ついた人が、再び「自分」を取り戻すまで』(アスコム)