夫には内緒で始めた韓国語。専業主婦が44歳から学び続け、ドラマ字幕監修者になるまでの経緯|体験談

夫には内緒で始めた韓国語。専業主婦が44歳から学び続け、ドラマ字幕監修者になるまでの経緯|体験談
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専業主婦から韓国ドラマの字幕監修者へ——異色のキャリアを歩んできた花岡理恵さんは、44歳のときに韓国語学習を始めました。きっかけは、韓国の俳優・パク・ヨンハさんへの感謝を伝えたいという純粋な思い。周囲から「やめた方がいい」と言われながらも、目の前の課題を一つずつクリアし、夢を叶えていった花岡さんに、挑戦を続ける秘訣を伺いました。著書『「やってみたい」と思った今がそのとき』(あさ出版)に込めた思いとは。

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専業主婦から字幕監修者になるまでの経緯

——「パク・ヨンハさんのお墓の前で韓国語でお礼を伝えたい」という願いから韓国語を学び始め、専業主婦から字幕監修者になられたとのことですが、どういった経緯があったのでしょうか。

まずは韓国語教室に通い始めました。通う中で弁論大会に出るよう勧められ、在日本大韓民国民団埼玉県地方本部主催の埼玉県韓国語弁論大会で3位に。その後、関わっていた韓国語関係のNPOを主催していた先生から翻訳のお仕事をいただいたり、公開講座に参加したことをきっかけに字幕にハマっていきました。

そして、映像翻訳字幕スクーリングを受講し、修了後に仕事を探す中で、有名配給会社の「字幕監修者募集」を見つけ、無事合格し社員になった、という経緯です。

——挑戦を重ねていらして、なかなか真似できるものではないと感じました。実際に歩んでいらっしゃるときは、どんなことをお考えになっていたのでしょうか。

正直なところ、目の前のことしか考えていませんでした。うつの症状で体調が悪かったこともあって、長期的な視野で何かを考えることがなかなかできなかったんです。

性格的にも割とのんびりしているので、ガツガツやるタイプではなくて、一つ達成したら次にやってみたいことが見えてきて……と一つずつクリアしていきました。

——パク・ヨンハさんにお礼を伝えたいという思いは自然と持ち続けたのでしょうか。

韓国語教室の先生にも「このままヨンハを好きだったら、あなたも向こうに行っちゃうから、違う人を好きになりなさい」と言われたくらいでした。

ヨンハのファンは私に限らず、ヨンハが亡くなった後も、ずっと思い続けている人は多くて。私もヨンハのことを思い続けるのが自然でしたし、いつかはお礼を伝えたいという思いも消えることなく、韓国語も続けていきました。2019年に無事に初渡韓し、自分で稼いだお金でヨンハのお墓参りに行くことができました。

韓国語学習の苦労とおもしろさ

——韓国語を学習していく中で、挫折しそうだったことはありますか。

うまく覚えられなかったり、学習上で進展がなかったりして、頻繁に挫折しそうでした。

ただ、最初に辞めずにやり続けようとは決めていました。1日の目標を非常に低くして、テキストを開いただけでも勉強としてカウントしていたんです。

どうしてもできない日は、歌を聴いたり韓国語のドラマを流したりなどでも、とにかく毎日韓国語に触れるようにはしていました。

——44歳から学習を積み重ねていく中で、大変だったことはありますか?

最初は本当にスロースタートでした。ヨンハにお礼を伝えたいという思いもありましたが、だんだんと韓国語自体がおもしろくなっていき、韓国語そのものに興味が湧いてきたので、教室を変えてステップアップしながら続けていきました。

なかなか上達しないという苦労はありましたが、学習仲間の方にはすごく恵まれていたので、ありがたかったです。

——韓国語のおもしろさとはどういったことでしょうか?

まず、理解できる文法や単語が増えてくると、実際に文章が読めるようになります。当時は記事を翻訳して送ると添削してくれるNPOのようなところがあって、そこで翻訳を幾度か見てもらいました。

だんだんと日本の新聞では取れない韓国の情報が取れるようになり、おもしろさを感じるようになりました。

——大人になってからの勉強という点で、学生時代と比べてのご苦労はありましたか?

中高生の頃は、ぱっと見たらすぐに覚えられました。でも、時間の使い方は今の方が上手になっていますし、学生の頃はすごく大変だと思っていたようなことが、大人になってみると簡単に感じることも。

いろいろな経験を積み重ねているがゆえに、学習と生活が結びついて、理解しやすくなる面では、大人の方がアドバンテージがあるのではないかと思います。

「やめておいたら」と言われたら

——新しい挑戦をしようとすると、「やめておいたら」と言われてしまったり、言われなくてもなんとなくそういう雰囲気を感じてしまうこともあると思います。花岡さんはいかがでしたか。

実際に「やめた方がいいんじゃない?」と言われたことがあります。韓国語を始めたときに、韓国人の友達から「難しいからやめた方がいい」と言われたりしましたし、日本人の知り合いには「韓国語なんかやって、韓流おばさんになるわけ?」と、からかわれるようなトーンで言われたこともありました。

夫も私が韓国語の本やドラマを見ていると機嫌が悪く、私は専業主婦だったので、夫が稼いだお金で韓国のものを買うと怒られていました。ですので、最初の頃は隠れて勉強していました。

子どもたちは韓国の弁論大会に出たことも、本を出したことも「すごいね」と喜んでくれました。

——「パートナーがあまり自分の勉強に前向きでない」という経験を女性から聞くことは少なくないのですが、ご家族の応援や協力を得ることが難しい中で、工夫されたことはありますか。

専業主婦の方々にとっては、夫がいない間を見計らって勉強していくことで、不要な衝突を起こさずに済むとは思います。

主婦も一人の人間ですので、家計のバランスの中で自分のやりたいことのためにかかる費用も認めてほしいですが、夫からダメと言われてしまったら、生活費の中でなんとかやりくりするしかありません。

でも、そのときに諦めないでほしいです。子どもは大きくなりますので、いずれ自分の時間が持てるようになるときが訪れます。何を言われても自分の世界を手放さないでほしいと思います。

※後編に続きます。

『「やってみたい」と思った今がそのとき』(あさ出版)
『「やってみたい」と思った今がそのとき』(あさ出版)

【プロフィール】
花岡理恵(はなおか・りえ)

韓国(アジア)映像字幕監修者/翻訳実務士®(韓日)
1966年、東京・渋谷生まれ。帝京大学文学部国文学科(現・日本文化学科)卒業後、早稲田大学大学院研究生(日本語日本文学専攻)となる。まもなく結婚をし、約25年間専業主婦として過ごす。
2011年・44歳で韓国語学習を開始。2017年に51歳で配給会社である株式会社コンテンツセブンに韓国ドラマの字幕監修者として入社。韓国語の学習開始からわずか7年で字幕監修者としてデビューした。
2019年よりフリー。2021年、翻訳実務検定「TQE®」に初受検にて合格(韓→日)し、「翻訳実務士®」の資格を取得した。

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