「家事も介護も女性」地方で育った女性たちが気づいた「女の子なんだから」の違和感

「家事も介護も女性」地方で育った女性たちが気づいた「女の子なんだから」の違和感
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ハラスメント被害をきっかけに公務員を退職した小笠原千秋さん。山形には女性同士で安心して悩みを語り合える場所がないという思いから、特定非営利活動法人Sisterhoodを立ち上げました。三世代同居率日本一の山形では、家父長制的な価値観が根強く残り、「女の子なんだから」という役割規範が今も若い世代にのしかかっています。代表の小笠原さんに、地方で女性たちが直面する現実と、フェミニズムとの出会いについて伺いました。

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ハラスメント被害をきっかけに、相談できる場所がないことに気づいた

——活動を始められた経緯から教えてください。

ずっと公務員として働いていたのですが、最後に勤めた職場は非常に男性が多い職場でした。そこでセクシャルハラスメントがあって、上司に相談したのですが、女性が少ない環境ということもあって理解してもらえず、二次被害的なことが起きてしまったんです。それでつらくなって、結果的に職場を辞めることになりました。

好きな職業でしたし続けたい気持ちもあったのですが、どうしても心が追いつかなくて。悔しさを抱えたまましばらく過ごすうちに、山形にはハラスメント被害や女性特有の悩みを素直に話せる場所がないと感じるようになりました。男女共同参画センターのような公的な場はあるのですが、年上の方が多い印象で、同年代の女性とざっくばらんに話せる安心安全な場所がない。それなら自分でつくるしかないと思ったんです。

——最初はどのような形で始められたのでしょうか。

当時はコロナ禍で直接集まれなかったので、オンラインで月2回お話し会を開きました。すると山形県内だけでなく、仙台や東京、福島の方も参加してくださって、ニーズがあるんだなと実感したんです。

最初は私自身のニーズから始めた活動だったので、大きくするつもりはありませんでしたが、休眠預金の活用制度を使ってみないかとお声がけいただいて。金額が大きくて、自分に受けられるだけの力があるのかとずいぶん悩みました。でもここで受けなかったら、山形の女性に関する活動が10年、20年、それどころか100年も停滞してしまうかもしれないと思ってお受けすることにしたんです。その後、NPO法人化して今に至ります。

フェミニズムとの出会いと、祖父の葬儀で見た光景

——小笠原さんはどういうタイミングでフェミニズムと出会ったのでしょうか。

図書館でたまたま『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』(遙洋子著、筑摩書房)と出会ったんです。21歳のときでした。

最初は知識がまったくない状態で読んだので、フェミニズムが何なのかもわからないし、ほかにも意味がわからない言葉が出てきて、これは何だろうと思いながら読んでいました。でも、読み進めるうちに、自分の中の違和感をこういう言葉に落とし込めるのかとか、闘っていいんだとか、目から鱗が落ちる体験だったんです。

——その後、日常の中で腑に落ちた瞬間があったとお聞きしました。

その直後に祖父が亡くなって、まだセレモニーホールがない時代だったので公民館で葬儀をしたんです。そうすると、近所中の女性が総出でお通夜や食事の準備をしていて、その脇で男性はお酒を飲んで寝ている。それが三日三晩続いているのを目の当たりにしたとき「この構造だ!」と思ったんです。

その頃から、この構図はおかしくないかと怒りを抱えるようになって、いろいろな本をたどって読みながら、フェミニズムとはこういう考えなのか、と学んでいきました。

活動の様子(特定非営利活動法人Sisterhoodより提供)
活動の様子(特定非営利活動法人Sisterhoodより提供)

三世代同居率日本一・山形で、女性たちが背負わされるもの

——山形で活動されてきた中で、地域の特性についてどんなことを感じていますか。

一番の特徴は、山形が日本で最も三世代同居率が高い県(※)ということです。ゆえに家父長制的な価値観が根強く残っていると感じます。祖父母世代から親世代に引き継がれて、孫世代が傷つくことも多いと若い人たちから聞きます。保守的な規範が変わりづらいんだろうなと。

——具体的にはどのような形で表れるのでしょうか。

役割規範ですね。女性は家の中にいて家事育児をするものだ、という考え方です。山形は共働き率も高いのですが、それでも本人が望まないところでケア役割が押しつけられていることを活動する中で感じます。

うちのフリースペースには、虐待を受けて家から飛び出してきた学生さんも来ています。長い間、家を出たいと思っていたけれど出られなかったと話してくれて、理由を聞くと、「自分が祖母の介護を担っていたから、自分がいなくなったら祖母が生きていけないと思っていた」と。私はこれを「ケア奴隷」という言葉で呼んでいるのですが、女性がケア役割をひたすら押しつけられている状況が、他の地域と比べても多いんじゃないかと感じています。

——いわゆるヤングケアラーとは、あえて違う言葉を使っていらっしゃるのですね。

ヤングケアラーは性別問わず、家庭の中で一番弱い立場の人にケアが押しつけられていて、それはもちろん大きな問題です。ただ、女性支援をしている立場から家庭の中のあり方を見ると、「女の子なんだから」「長女なんだから」という役割規範がさらにプラスアルファでのしかかっている印象がとても強いんです。

——若い世代も、それを内面化させられてしまっている部分があるのでしょうか。

家の中だけにいると、自分の家庭環境は普通だと思ってしまって、本人は気づかないですし、逃げようとも思わない。でも、フリースペースに来て他の人と話したときに、「あれ、うちの家族おかしくない?」「私の今の状況っておかしくない?」と気づくきっかけになる。

自分から「私は長女だから」と言う方もいますし、進学先を考えるときも「家から近いところを選ばなきゃ」と言う方もいる。祖母から「長女なんだから、家のことは妹じゃなくてあなたがやるんだ」と直接言われたという方もいました。

——少し上の世代では、また違った形で表れるのでしょうか。

そうですね、たとえば子育て世代の方からはまた別の声が届いています。行政が「家族が見てくれるから子育てしやすい」と三世代同居をPRに使っているのを見ます。でも実際の声を聞くと、自分の親であってもパートナーの親であっても、出かけるときに「誰と行くんだ」「何時に帰ってくるんだ」と細かく問われる。まるで監視されているみたいで、それならお金を払って外に預けたほうが気持ちが楽だ、と話をされる方もいます。

質問している側はそこまで意識していないのかもしれませんが、聞かれたら答えないわけにはいかないですし、心理的な負担はとても大きいんだろうなと、お話を聞いていて思います。

——他にも、地方で感じてこられたジェンダー課題に関するエピソードはありますか。

職場で特に役割が決まっているわけでもないのに、自然と女性が水回りの掃除をしていたり、会議のときに女性はみんな後ろに固まって座って男性が前にいて、発言もまず男性から、ということが定番になっていました。

私たちが主催する講座でも、質問コーナーで男性が手を挙げて、男性だけで質問が回っていって、女性が発言しない・できないという空気感が出てしまうんです。それが嫌で、性自認男性の方を入れない講座を開いたことがあったのですが、女性のみなさんが活き活きと手を挙げるんです。活動をしながら、性別役割が固定化された構造があるのだと痛切に感じています。

※後編に続きます。

※2020年国勢調査より

【プロフィール】
小笠原千秋(おがさわら・ちあき)

小笠原千秋さん(ご本人よりご提供)
小笠原千秋さん(ご本人よりご提供)

自身のハラスメント体験を誰にも話せなかった、話す場がなかったという経験から2022年にSisterhoodを立ち上げ、2024年3月に法人化。
Sisterhood(シスターフッド)とは女性同士の連帯を意味しますが、女性に限らず性的マイノリティの人や外国にルーツを持つ人、障害がある人など、社会的に弱い立場に置かれている人たちが、差別排除されることのない社会を目指して活動中。また、志を共にするさまざまな立場の人たちと連携し、誰しもが生きやすい地域社会にしていくために、活動の輪を広げていきたいと考えています。

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