性格の問題だと思っていた症状は、複雑性PTSDだった。性暴力被害のその後|石川優実さんインタビュー
性暴力被害は、その後の人生に深刻な影響を及ぼすことがあります。性暴力被害によって発症した複雑性PTSDやうつ病と向き合ってきた俳優の石川優実さん。『私が私を取り戻すまで──性暴力被害のその後を生きる』(新日本出版社)の著者である石川さんに、日常生活での困難や、病院・カウンセリング探しの実情についてお話を伺いました。被害から時間が経った人が直面する課題と、必要な支援のあり方が見えてきます。※本記事は性暴力に関する内容を含みます。
性暴力被害によって複雑性PTSDとうつ病に
——現在、複雑性PTSDとうつ病の診断を受けているとのことですが、どういった症状があるのでしょうか。
まず以前から眠れないことがよくあって、睡眠薬をよく飲んでいました。その後、体がベッドから動かないような感覚で起きられなくなったんです。これはまずい、と思って病院へ行ったら、複雑性PTSDとうつ病の診断を受けました。
元々、PTSD症状のフラッシュバックによって、被害のことを思い出してしまっていました。被害をもう一度体験しているような感覚になって、気分が落ち込み、外出も難しくなることが続いていたんです。
初めて性暴力被害を受けたのが10代のときで、それ以降自分にとっては自分の性格の問題だと思っていたことが、複雑性PTSDの症状だったということが最近になってわかりました。
たとえば、フラッシュバックによってつらいことを思い出し体が動かなくなって、普通の生活が送れなくなっていても、自分に体力や根性がないのが原因だと思っていたんです。
——今どういった困りごとがあるのでしょうか?
まず、予定を遂行できないことです。同じ時間に起きて同じ時間に寝ることが難しかったり、朝になって急に体が動かなくなってしまうことがあるからです。
トラウマ症状の一つとして、ずっと体が緊張状態で、肩に力が入ったまま生きてきたので、肩に痛みがあるのもつらいです。
力が入りっぱなしなので、肩こりも重いと思うのですが、フラッシュバックが起きたときに肩の痛みが増します。うまく伝えるのが難しいのですが……肩のあたりが落ち着かなくて、この場から逃げたくなるような痛みがずっとあるんです。
アルコールをやめられないのも困っています。不安感を軽減するためにお酒を飲んでしまうことがあります。今は以前よりは回復してきて、「世界が終わるかもしれない」という感覚の不安感に襲われることは少なくなったのですが、治療を始めた最初の頃は、毎日お酒を飲んでいました。
自分ではやめたいとずっと思っているので、禁酒外来に行ったこともあって、1年断酒していた時期もあったのですが、その後また飲んでしまいました。
——お酒をやめていた時期の調子はどうだったのでしょうか。
実はお酒をやめていた1年で、うつ病を発症しているんです。先生からは、今までアルコールでなんとか紛らわしていたPTSDの症状をお酒をやめたことで、直に衝撃を受けてしまい、うつ病を発症してしまったのだと思いますと言われました。
だからそれ以前もお酒をやめていたら自死してしまっていたかもしれないですし、別のものに依存していた可能性もあるんです。
自分にとってお酒はその瞬間はしんどさが消えるので、即効性のある薬のようなもので、生き延びるために飲んでいたんです。今でも苦しさを紛らわすために飲んでしまうことはあって、やめたいと思っているんですけどね。
——健康的には望ましくないほど飲んでしまうのでしょうか?
実はものすごく大量のお酒を飲むわけでもなく、警察にお世話になるような酔い方をするわけでもないので、周囲からは「やめなくてもいいじゃん」と言われることも多いんです。
でも私としては、飲まずにいられずに飲んでしまうこと自体がしんどいからやめたい。そんな中で「やめなくてもいいじゃん」と言われるのもつらいんですよね。
依存症全般に言えますが、本人はつらくてやめたくてもやめられないのに、好きでやっていると誤解されてしまいます。なので、「やめられないのは意志が弱いから」という自己責任にされている。
「やめたくてもやめられない」ことを全く理解されないので、それでさらにつらくなり、ストレスが溜まって依存症も悪化していく悪循環があると思います。
病院やカウンセリング探しの実情
——性暴力被害に遭った人が病院やカウンセラーを探すのは大変だと思うのですが、石川さんはどうやって見つけられたのでしょうか?
私は性暴力の問題に詳しい知人に教えてもらった病院に行っています。被害に遭って調子が悪い中で自分で探すのはとても大変なことなので、身近に詳しそうな人がいたら、そういう方に聞いてみるのがいいと思います。
「性暴力に詳しい」という点で探すのが難しければ、家から通いやすいことは大切だと思います。その中でも、「女性のメンタルヘルス」「PTSD」といったことがホームページに書かれていると、安心につながるのではないでしょうか。
通い始めてわかったのですが、私の通っている病院はカウンセリングも保険適用で受けられるのでとても助かっています。保険適用のカウンセリングはまだまだ少ないので、運がよかったです。
私の場合は、被害そのものから時間が経っていたこともあって、ワンストップ支援センターでは病院もカウンセリングも教えてもらえませんでした。相談窓口で教えてもらえないとなると、現状「運ゲー」になってしまうので、安心して行ける病院やカウンセリングは公的な窓口で案内してくれたらいいなと思います。
病院やカウンセリングに限らないのですが、被害から時間が経ってしまった人が頼れる情報が少ないので、どこかにまとめてほしいと思います。性暴力は被害を受けてから、被害を被害ととらえられるまでに時間がかかるとも言われています。
「自分の経験は被害だった」と気づいても、被害直後の相談窓口しかなくて、自分が困っていることについて、どこに何を相談すればいいかがわかりにくいんです。医療関係、生活関係……といったカテゴリー分けがされていたら、探すハードルも低くなるのに、と思います。
※中編では被害後の生活における困難について伺っています。
【プロフィール】
石川優実(いしかわ・ゆみ)
1987年生まれ、岐阜県出身。俳優、性暴力サバイバー。2005年に芸能界入り。
2017年末、「#MeToo」ムーブメントを受け、芸能界で経験した性暴力について声をあげる。それ以降ジェンダー平等を目指し活動。
2019年、職場で女性のみにヒールやパンプスを義務付けることは性差別であるとし、「#KuToo(クートゥー)」運動を展開。同年10月、英BBCが選ぶ世界の人々に影響を与えた「100 Women」に選出。2022年2月には、ブログで映画界での性暴力を告発した。
著書に、『#KuToo 靴から考える本気のフェミニズム』(2019年、現代書館)、『もう空気なんて読まない』(2021年、河出書房新社)などがある。
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