南会津の森で深呼吸したくなる理由。更年期を整える「クロモジ茶」|福島発リトリート

南会津の森で深呼吸したくなる理由。更年期を整える「クロモジ茶」|福島発リトリート
一十八日|高野養生
石松佑梨
石松佑梨
2026-03-06

「最近、深呼吸していますか?」 更年期に入ると、理由もなく疲れやすかったり、眠りが浅くなったり、気持ちが落ち着かない日が増えることがあります。その背景には、女性ホルモンの変化による自律神経の揺らぎがあり、呼吸が浅くなりやすいことも一因といわれています。 そんな体の緊張を、自然とほどいてくれる場所があります。東京から数時間、福島県の南西部にある南会津町の森です。雪深い2月、原生林に一歩足を踏み入れた瞬間、胸いっぱいに吸い込みたくなる清らかな空気が広がっていました。

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南会津の森へ。雪深いリトリートの始まり

南会津の森

東京から郡山までは新幹線で約1時間半。さらに電車を乗り継ぎ会津若松へ、そしてワンマン電車に揺られ1時間。辿り着いたのは標高約800mの南会津町。

雪深い2月、原生林に一歩足を踏み入れた瞬間、胸いっぱいに吸い込みたくなる清らかな空気がありました。

アクセスの不便さは、裏を返せば自然の豊かさそのもの。ヒバ、ヒノキ、スギ、コブシ、そしてクロモジ──多彩な樹々が息づく森です。

澄んだ空気、深い雪と濃い青空、木と土の匂い。そのすべてが、張りつめていた感覚をゆっくりほどいていきました。

都会で過ごす日常では、呼吸は浅くなりがちです。しかし森の中では、自然と胸が広がり、呼吸が深くなっていくのを感じます。

嗅覚から整う、更年期の自律神経

クロモジ

森林浴には、副交感神経を優位にし、ストレス指標を下げる作用が報告されています。森の中を歩いた後は、都市部での歩行時に比べてストレスホルモン(コルチゾール)や交感神経活動が低下することが複数の研究で確認されています。その理由のひとつが、森の香り成分です。

木々は自らを守るために、フィトンチッド(phytoncide)と呼ばれる揮発性物質を放出しています。代表的な成分がαピネンなどのテルペン類です。これらの香りは嗅覚を通して脳へ直接届き、感情やホルモン調整を担う視床下部や自律神経系に影響を与えると考えられています

更年期は、女性ホルモンの変化によって自律神経が揺らぎやすい時期です。そのため、薬だけでなく香りや自然環境による神経調整が、セルフケアのひとつとして注目されています。森林浴が単なる散歩以上に「整う体験」と言われるのは、このような生理学的な背景があるためです。

南会津が育てた香木「クロモジ」

クロモジ

南会津の森で特に印象的だったのが、クロモジという木でした。枝を折ると、甘さと柑橘が重なる奥行きのある香りがふわりと広がります。

クロモジは日本の山地に自生するクスノキ科の植物で、古くから香木として親しまれてきました。和菓子の楊枝に使われていることでも知られています。

香りの主成分はαピネン、リナロール、シネオール、リモネンなど。これらはテルペン類と呼ばれる植物の香気成分で、リラックスや鎮静に関与することが知られています。

雪の森で枝を折った瞬間、香りが弾けるように広がりました。その一瞬で、心が静まり、呼吸が深くなる。森が持つ香りの力を、身体で理解した瞬間でした。

日常に森を持ち帰る「おうち森林浴」

クロモジ茶

南会津でクロモジ精油を蒸留する株式会社 一十八日・宝力絢さんに、日常ではどう取り入れればいいかを伺いました。

クロモジ茶

ティーバッグでも十分。複数のハーブをブレンドするのもおすすめだそうです。

漢方のように難しく考える必要はなく、「今の自分に心地よい香りのお茶」を選べばよいとのこと。人が「いい香り」と感じる植物には、身体が求めている成分が含まれていることが多いと言われています。

クロモジはカフェインを含まないため、就寝前にも向いています。

クロモジ精油

ハンカチやお風呂に1〜2滴。アロマ初心者でも取り入れやすい方法です。

オフィスでも、ハンカチに一滴忍ばせれば、周囲に気づかれず「自分だけの森時間」を作ることができます。

1日のリズム例

  • 朝:温かいクロモジ茶
    → 気持ちをゆるやかにスタート
  • 昼:精油をハンカチに
    → 気分リセット
  • 夜:入浴にクロモジ精油 1〜2滴
    → 深い睡眠へ

私自身、クロモジ茶を日常に取り入れてから、肩の力がふっと抜ける穏やかさを実感しています。

食と香りでつなぐ、森と暮らし

かんじき

──国際中医薬膳管理師・石松佑梨 取材メモ

今回の取材では、かんじきを履いて雪の森を歩く体験をしました。案内してくれた地元の方が語った「昔からここには何でもあった」という言葉が、とても印象に残っています。

春には、またたびの新芽を天ぷらに。山では獣肉をいただき、冷たい川ではイワナやサワガニを捕まえる。秋には果物や自然薯、くるみ、トチの実、山菜やきのこが実り、それらを塩漬けや乾燥で保存しながら、厳しい冬を越えてきました。

この土地では、四季の移ろいそのものが暮らしの基盤です。旬をその時期に味わい、保存して冬へつなぐ。そうした営みの積み重ねが、豊かな食文化を育ててきました。

本来なら現地を訪れ、森を目で見て、川の音を聞き、空気を吸い込み、旬の食材を味わう。五感すべてで森林浴を体験することができます。

近年はワーケーションや多拠点生活など、自然と都市を行き来する暮らしも広がりつつありますが、それが難しい人も多いでしょう。

そんなときは、クロモジ茶のような「飲む森林浴」を日常に取り入れてみる。都市生活で緊張が続きやすい更年期世代にとって、食と香りは心身の整いを支える現実的なセルフケアになります。

このリトリートを通して、森と暮らしが深く結びついた文化を、身体で実感することができました。

取材協力…… 株式会社 一十八日 の 宝力 絢さん

クロモジ精油

公式HP:https://18th.co.jp

南会津では、森の恵みを「採って終わり」にしない取り組みが進んでいます。伐採された枝葉や、これまで山に眠っていた資源を、クロモジをはじめとした香りの原料として丁寧に蒸留し、精油へと仕立てています。森からの贈り物を無駄にせず、次のかたちへ循環させていくイメージです。

耕作放棄地をハーブ栽培に活用したり、地元の人たちと協力しながら森の手入れと仕事づくりを両立させたり──森・里・人がつながる循環のなかで、南会津の里山の香りが生まれています。採取から蒸留、成分分析、ボトリングまでを一貫して行うことで、この土地ならではの香りだけを閉じ込めた、希少な精油ができあがります。

参考資料

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