血液検査は正常。でもだるい・不安が強いのは“浅い呼吸”が原因?意外な『隠れ酸欠』について|医師が解説
疲れでもない。心の問題と言われてもピンとこない。でも身体は重いし、胸のあたりが落ち着かない…。それは脳が酸素不足な状態なのかもしれません。医師が解説します。
1. 検査は正常なのに、なんとなくしんどい…その理由は「呼吸の浅さ」かもしれない
「血液検査はぜんぶ正常ですよ」
「貧血でも甲状腺でもありません」
お医者さんにそう言われたのに、だるさと不安感がどうしても取れない。
こういう相談、最近めちゃくちゃ多いです。
そんな人に意外と多いのが、『隠れ酸欠(かくれさんけつ)』=呼吸が浅くて酸素が十分取り込めていない状態。
ポイントは、呼吸が浅くても血液中の酸素濃度(SpO₂)はほぼ正常に出てしまうということ。だから検査では「異常なし」とされるのに、体はしんどいまま。
実はこれ、現代人にありがちな“見えない不調”の代表格なんです。
2. 隠れ酸欠とは?
血液の酸素は足りてるのに、「体がうまく使えていない」状態
隠れ酸欠と聞くと、「そんな大げさな…」「酸素足りないならすぐ気づくでしょ」と思うかもしれません。でも実際は、
- 呼吸が浅い
- 胸だけで呼吸している
- 気づくと息を止めている
- 不安になると呼吸が速くなる
- スマホを見る姿勢が猫背で、横隔膜が動きづらい
こういう生活を続けているだけで、“軽度の酸素不足+体の過緊張” の状態に簡単に陥ってしまいます。
血液は足りていても、脳が“酸素不足”を感じることがある
実は酸欠って、血中酸素だけで決まるわけじゃありません。大事なのは 「深く・ゆっくり・安定した呼吸ができているか」。
呼吸が浅いと、体内の二酸化炭素(CO₂)が必要以上に減ってしまい、これが血管をギュッと収縮させます。すると脳への血流が減り、結果として以下のような“典型的な酸欠サイン”が出るのです。
- だるい
- 眠い
- 集中できない
- 不安・焦りが強くなる
3. 隠れ酸欠で起きやすい症状
一見、ストレスや自律神経の問題に見えるサインたち
隠れ酸欠は、「病気のようで病気じゃない」微妙なところをついてくるのが厄介。
以下のような症状は、実は呼吸が浅いために起きていることがよくあります。
- いつも胸のあたりが重い
- 深呼吸しようとしても「深く吸えない」
- 午後になると急にだるくなる
- 気持ちが落ちつかず、不安が強い
- 息を吸うより吐くのが苦手
- 緊張しやすい
- 動悸が出やすい
- 夜になると頭だけ冴える
- 肩・首こりが慢性的
スマホ姿勢、パソコン作業、ストレス——これらはすべて“浅い呼吸”の原因になります。
胸まわりの筋肉が固まり、横隔膜の動きが悪くなると、呼吸の量が少なくなってしまうんですね。
「不安 → 呼吸が浅くなる → さらに不安」という悪循環
不安があると呼吸が浅くなる…
→ 脳への酸素が減って不安が強くなる
→ また浅くなる
というループに入ると、本人は「体調が悪い」と感じます。でも検査では何も出ない。
これが、隠れ酸欠のいちばん困るポイントです。
4. よくあるケース
40代男性・デスクワークAさんの場合
Aさんは血液検査・心電図・レントゲン、どれも正常。でも毎日、午後になるとだるくなり、胸のモヤモヤと息苦しさが出る。不安感も強く、会社に行くと落ち着かない。
話を聞いていくと、典型的な“隠れ酸欠タイプ”でした。
- 仕事中はずっと猫背
- ほぼ胸式呼吸
- 深呼吸しようとすると肩だけ上がる
- 1日10時間以上パソコン
- スマホを見る姿勢は“うつむき首”
- なんとなく息を止めるクセがある
そこで、
☑︎ 1時間ごとに「3回ゆっくり吐く」
☑︎ スマホを見るときはあごを引かず、目線を上げる
☑︎ デスクの高さを調整
☑︎ 寝る前に3分の“呼吸ストレッチ”
これらを続けたところ、1か月後には「だるさがほぼ消えた」とのこと。不安感も軽くなり、胸の違和感も減りました。
呼吸って、正直バカにできません。
5. 今日からできる「隠れ酸欠」対策
本気で効くものだけ、シンプルに紹介
① とにかく“吐く”ことを意識する
酸素を吸うより、二酸化炭素を適度に残すためにはゆっくり吐く方が重要。
4秒吸う → 6〜8秒かけて吐く、がベスト。
② お腹(横隔膜)を動かす 呼吸に切り替える
胸だけで呼吸すると浅くなるので、みぞおちがふわっと動くくらいの腹式呼吸が◎。
「吸うときにお腹がふくらむ」「吐くときにお腹がへこむ」――これだけ意識すればほぼOK。
③ スマホ姿勢を改善
うつむいた姿勢は胸がつぶれ、呼吸が浅くなります。スマホはできるだけ“目線の高さ”へ。
④ こわばった胸まわりをほぐす
鎖骨の下、あばらの横、みぞおちなどを軽く押すだけで呼吸が一気にラクになります。
⑤ 1日1回の「呼吸リセットタイム」
夜寝る前に“10回だけ深く吐く”。これだけでも翌日のだるさが軽くなる人は多いです。
⑥ 不安が強すぎる場合は医療機関へ
呼吸を整えても不安が強いままの場合、自律神経やメンタル面のサポートが必要なこともあります。
まとめ
- 検査が正常でも、呼吸が浅いと“隠れ酸欠”が起こる
- 血液中の酸素は正常でも、脳や体が酸欠状態になることがある
- だるさ・不安感・頭の重さ・息苦しさは典型的なサイン
- スマホ姿勢・デスクワーク・ストレスは隠れ酸欠の大きな原因
- 一番効くのは「ゆっくり長く吐く」呼吸法
生活の中で呼吸の深さを取り戻すと、不調が驚くほど改善します。「隠れ酸欠」対策を取り入れてみては?
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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