誰一人取り残さないヨガを目指して|FLOWSHIKIが生み出すインクルーシブな世界とは

誰一人取り残さないヨガを目指して|FLOWSHIKIが生み出すインクルーシブな世界とは

「誰一人取り残さないヨガ」。そんな理念のもと生まれたFLOWSHIKIは、四隅にポケットが付いた特別なふろしきを使ったヨガメソッドだ。開発者のARICAさんは、障害福祉施設でのヨガ指導で直面した課題から、このユニークなアプローチを編み出した。

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試行錯誤から生まれたFLOWSHIKIヨガ

FLOWSHIKIが誕生したのは、障害福祉施設からの依頼がきっかけだった。「参加者の半分以上が通常のヨガができない状況の中、色々と試行錯誤していた末に自然に誕生したのがFLOWSHIKIというメソッドです」とARICAさんは振り返る。

当初はタオルや普通のふろしきを使っていたが、掴むことや握ることが困難な参加者がいることにARICAさんは気づいた。「四隅にポケットをつけることで、ただ手を入れていただいて、揺れてもらって呼吸筋を伸ばしていく」というアイデアから、現在の形が生まれた。

ふろしきの活用法は多岐にわたる。「ただ伸ばすだけではなくて結んでボール状にしてほぐしたり、叩いたりすることでアプローチして、少しでも体にアプローチを見つけていくこともできます」とARICAさんは語る。さらに、ふろしきのデザインや色、香りを付けることで、身にまとってもらうだけでもリラックス効果を生み出している。

FLOWSHIKI
写真モデル:Nao

笑顔を生み出す変化

「ふろしきがない時よりも明らかに変化がありました。まず一番大きい変化として、笑顔がたくさん見られるようになった」とARICAさん。動きたいけど動けないという参加者にとって、ふろしきを使ったヨガは新たな可能性を開く道具となった。

現在では障害のある方だけでなく、シニアの方、体が硬い方、さらには国際交流の場やキッズヨガまで、様々な場面で活用されている。図書館では「本を読んで体が固まっている人向けに、本を読んだ後には体を動かしましょう」というクラスも開催している。

FLOWSHIKI

心理的安全性を守る ふろしきの力

FLOWSHIKIの特徴は、身体的なサポートだけでなく、心理的な安全性の確保にもある。「前屈の時もふろしきがあることで、ほとんど視界が見えなくなるし、他の方の体の硬さとかもどうでもよくなるんです」(ARICAさん)。

人と比べてしまいがちなヨガの場面で、ふろしきが自然と視線を遮り、内側に意識を向けやすくする効果があるという。「比べたくって意識して見てるわけじゃないんだけど、目に入ってきたり感じたりすると勝手にこっちが比べてしまう」という心理的な課題を、物理的に解決している。

男性参加者にとっても、ふろしきは心理的なバリアを下げる役割を果たしている。「初対面でお隣同士手をつないでとか、男性だとちょっと抵抗があったり、逆に女性からしたらいやんじゃないかと遠慮してしまうなど気にされる方もいらっしゃる中で、直接触れることがまずないことが安心感につながっているようです」。ふろしきがあることで「近づきすぎず、遠すぎずみたいな程よい距離感」を保てるという。

ケアする人もケアされる仕組み

FLOWSHIKIの特徴の一つは、ケアする側とされる側の境界を曖昧にすることだ。「いつも誰かを包み込んであげる人が、ふろしきだったら結構一緒に包んだりとか自分も一緒に包み込めるんです」(ARICAさん)

親子のクラスでは「まず子どもじゃなくて、まずお子さんがお母さんを抱きしめるところから始める」という指導者もいる。「いつも抱きしめるのはお母さんの役割だけど、お母さんだってハグされていいんじゃないか」という発想だ。

FLOWSHIKI

宗教的な要素を自然に置き換える

ヨガクラスの最後に唱えることの多い「オム・シャンティ」についても、FLOWSHIKIならではの工夫がある。それはマントラの代わりにハグをする、ということだ。「もちろんオム・シャンティもいいんですけど、でも、ハグで終わってもいいよね」として、3回のハグでシャンティの3つの意味(自分のため、周りのため、向き合ってる人のため)を表現している。「ハグは7秒でセロトニンがしっかりと出るというデータも出てますし」と、科学的根拠も交えながら、誰もが参加しやすい形を模索している。

広がる可能性

現在、FLOWSHIKIは様々な場面で活用されている。今後ARICAさんが特に力を入れたいと考えているのは「リハビリの現場ですね。病院とか。やっぱりベッドから出れない人たちとか、マットを敷いて床に座ることができない方々」への提供だ。

「医療従事者もやっぱりお疲れの方も多いですし、そういう病院関係」で「介護される人もされる側も一緒にできるメソッド」として成長させたいという。

また「以前はヨガやっていたけれど、今はピラティスをやっているよ。という方にもお勧めです。ピラティスもヨガも一緒に合わせながら、自分なりの自分のための運動としても活用できるからです。ヨガでの学びをベースに取り入れながらも、温故知新の精神で楽しんでいくFLOWSHIKIというメソッドが、ヨガから一度離れた人たちの架け橋になることにも期待しています」と話す。

椅子に座った状態でのクラスも可能で、特に福祉施設は場所の関係もあることから「椅子のみ」でのプログラムも提供している。

FLOWSHIKIは、ヨガの本質である「つながり」を、ふろしきという日本古来の道具を通じて現代に蘇らせている。障害の有無、年齢、性別、ヨガ経験の有無を問わず、すべての人が参加できるヨガの形として、今後さらなる広がりが期待される。

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お話を伺ったのは…ARICAさん

2007年より北インドのアシュラムでヨガを学び、インド政府公認YICC修了、スリランカの病院認定アーユルヴェーダ、タイマッサージPa Khaw ma Massageインストラクター等を取得。 障がいを持つ方々と高齢者のクラスを担当したことをきっかけに、ふろしきを使った独自のヨガ"FLOWSHIKI"を考案。自身も虚弱体質で運動が苦手、身体の硬さがコンプレックスだった経験を活かし、誰もが自分に合ったスタイルでヨガを楽しむことを提案している。「包む・結ぶ」という人生最初の行為を日常に取り入れる豊かさを"FLOWSHIKI"を通じて国内外に伝えている。

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