超個性派アーティスト、ニガミ17才岩下「ダイバーシティを音楽で体現することが、俺らの理想」

ニガミ17才

超個性派アーティスト、ニガミ17才岩下「ダイバーシティを音楽で体現することが、俺らの理想」

お洒落且つ変態な楽曲を表現し、話題沸騰中のバンド、ニガミ17才のボーカリスト岩下優介インタビュー。「世の中の基準からあえて外す」という独自の世界観をどのように仕掛けているのか。「気持ち悪い」とも言われる個性的なクリエイティブ、自分の信じるものを貫く自己表現をする理由とは? 古くからの友人であるヨガジャーナルライター臨床心理士の石上が、彼の創造性やニガミ17才の魅力に迫った。

他人と比較はするよ。でも自分がやることを信じてる。

ーーー「ニガミ17才」というバンド名には、どのような意味があるのですか?

「17才という多感な時期の1年間を4人で一生かけて表現するというテーマを表したのが『ニガミ17才』。思春期後半の大人の世界を分かりかけている17才で感じたことを表現しようと、最初のころはニガミちゃんという女の子を主人公とした曲が多かったけど、続けていくうちに縛られることもないなとニガミちゃん以外のことも書いたりするようになりました。でも、今でも曲を書くときとかに「ニガミちゃんから見た目線」というものをメンバー間の共通言語として話し合いすることはあるかな。」

ーーーニガミちゃんという空想の女の子がイメージとしてあるのですね。ニガミちゃんのモデルはいますか?

「顔のイメージは固定したくなくて記号としてある感じですね。モデルの人はいないから、音楽活動を通して一生かけて作りあがっていくのかもしれんね。」

ーーー『おしゃれ且つ変態な楽曲の表現』をテーマに活動されていますが、そもそも個性的なの世界観を展開している自覚はあるのですか?

「「変なことが大好きだから自分も変なことやってみんなを驚かせたい」みたいな感覚が、嘘つきバービー(前バンド)の時はあったかもしれんね。でも、今は変なことは大好きだけど「変なことは、変なこと」として捉えて作品に取り込むことを大事にしとる。あえて変なことをしたいとか、変な人だと思われたいとかは思っていないです。今思うと、嘘つきバービーの時は個性的な世界観を意識的に作ろうとしてたとかな。」

ーーーありのままの自分と言うよりは「あえて作っていた」という感じ?

「以前はそうやったかもね。今は、普通の感覚を常に取り入れて鍛えるようにしている。だからさっきもNetflixの韓国ドラマ「梨泰院クラス」を見てきた。今まで絶対に俺が見てこなかったジャンルのものとか、スタンダードとされているものはちゃんと見るようにしてる。ニガミ17才が外してやったことは「外してやったこと」として理解された方がやはり俺らのより作品を楽しんでもらえると思うので。目線はできるだけ近づいておきたい。リスナーのみなさんと基準を揃えた上で、あえて外すということをやりたいから。」

ーーー他人と比較したり、世の中の基準に振り回されず、自分の軸を持つことについてどんな考えを持っている?

「他人と比較はすることはありますね。でも自分がやりたいと思ったことは信じているから。1番すごいというか、かっこいいことをしてるって。そんな風に、周りの評価とか根拠とか関係なく、自分を信じることも大切なんじゃないやろか。だから比較はするけど、周りに影響されすぎず、貫くところは貫いてブレないようにしていますね。」

俺は『音楽』によって、自分を認め続けてきたからね。

ーーーヨガジャーナルでは、「自己肯定感」に関する記事も多く読まれていて、SNSのいいねやコメントで自分を評価してしまったり、自信を持てない人が多いように感じる。承認欲求が強すぎると生きづらくなってしまうし、他人に認めてもらっても自己肯定感は上がらないのだけど。ちなみに新曲の「こいつらあいてる」は、「褒められたい、褒められたい」って歌詞もあったり、承認欲求がテーマだと感じたのですが、実際はどのような視点の曲ですか?

「承認欲求ということだけではないんだけど、そういう一面もあるのかも。この曲は若い子の目線とおじさんの目線を両側から書きました。曲のはじめの中国語っぽく聞こえるところは、若い子の言葉はおじさんからしたら何言っているんだか分からないみたいな。若い子の目線で見ると共感できるな、でもおじさんの目線で見ると笑えるなという2つの目線を描きたくて。矢沢永吉って、かっこいいと思う人と、面白いと思う人がいるやん。矢沢永吉という軸は1つしかなくて、目線が2つあるってことやん。こっちから目線を2つ出しちゃったらどうなるんだろうっていう、あえて2つの目線を見せたかった。あくび(平沢あくび)が歌っているところが若い子の方で、俺が歌っているのがおじさんの方。この曲で伝えたいことは何かと言われると分からんけど「人の感覚って面白いでしょう?目線変えるだけでこうも言葉の価値は変わるね」ぐらいの感じよ。そこからはみなさんが「今あるものの価値ってなんだろう」でもいいし「人の評価ってなんだろう?」でもいいし、好きに考えを伸ばしていってもらえばいいと思っています。」

ーーーなるほど、作り手はもっとシンプルなのね。ちなみに岩下さんは、自分を認めることついてどのように感じていますか?

「「これが好き」と思えるようなことがあると違うと思う。俺にとってはそれが『音楽』だったし、音楽に向き合うのが好きだからこそ、自分でも認められる作品というものが徐々に作れるようになった。音楽以外で認められたかは分からんね。自信てさ、すごい大切なもんやん。音楽という1つの自信があって、他がついてくるみたいなところはあるよね。」

ーーー音楽に支えられてる感があるわけね。自分全体が。

「メンバーと音楽が自分を支えてくれとる。それぐらいには思っています。音楽を意識し始めたのは中学2年生くらい。そのころ仲間うちでビデオ回して、みんなで映像とって遊んだりしてて。みんなで楽器持ってMVみたいなもの撮ったり、お笑いのバラエティみたいなものとかも。学校ではいじめられっ子だったので私生活においての自信は全くなかったけど、自分が撮った映像遊びについてはいつでも仲間うちの誰よりも面白いことができてると思ってた。周りはどう思ってたのかわからんけどね。そこらへんからかもしれんですね。自分を認められるようになったのは。」

ーーー周囲の反応よりも、自分で自分を面白いと思ったのが大きかったのかもしれないね。それが今の自分のスタイルを貫く、自分を信じてるところにもつながっているんだよね。

「他人の一時的な評価ばかり気にして自分の軸がないままでいると、歳を重ねた時に空っぽになっちゃうなって思う。だから、衝動ではなくて『どんな理由で、これをやりたいのか』を考えるようにしていますね。」

「二ガミ17才」という音楽がダイバーシティ(多様性)を体現する存在になることが、俺らの理想。

ーーー話は変わるんだけど、10年くらい前の岩下さんの家に、ミュージシャンや漫画家、芸人もいれば、全く違う職業や学生の人とか、いろんな人が集まっていたじゃないですか。私から見ると誰が来てもよくて、どんな個性の人もそこにいることを許されていて、まさに「ダイバーシティ」で、いろんな人にとって救いになる空間だったと思っていて。音楽以外にも、そんな空間も作っていた岩下さんだけど、あれは意図があってやっていたの?

「当時の主催側からすると、みんなの居場所や救いになれば、とかそんなこと考えていたわけがなくて。あの頃は単純に自分たちが楽しければそれで良かったしね。結果的にそういう場所になっていたのかもだけど、あの集まりの中には何か自分だけの利益を持ち帰ってやろうという姑息な奴はいなかったと思う。みんなただ楽しみに来ていたような感じがしたから、続いたのかもしれんね。女の子引っ掛けてやろうとか、このミュージシャンとつながりたいとか……いたかもしれないけど、それを一番に考えて集まってた人らは勝手に排除されていったのかもしれんね。でも、みんなそこでの経験が癒しや刺激になって、家に持ち帰った感覚を各々の作品として消化してたというか、そんな空間やった気はする。」

ーーー主催者側はそうだったのですね。最近は、ダイバーシティ&インクルージョンという、多様性を受け入れて共に成長するという言葉もありますね。まさに、そんな場所でしたよね。私は、臨床心理士として患者さんにカウンセリングをしている立場だけど、1対1だと難しいなと感じることでも、あの家のように、空間というかみんなの力でできたこともあったと思う。

「そうなんやね。ひとつあのころの話で、あれは正しかったのかな? と今でも気がかりに思っていることがあって……Aさんに辛いことがあったと打ち明けられた時に、俺はめちゃくちゃ笑ったのよ。「はははは」って。Aさんもそこから朝までその事に関するエピソードを何個も笑いながら話し続けて。俺としては、最っっ悪やん! 笑いとばそうよ、というニュアンスのつもりだったんだけど、今考えるとあのリアクションは本当に正しかったのか、どうだったんだろうと思い出すことがある。」

ーーー分からないけれど、それで楽になる人もいるかもしれないね。辛いことがあると絶対悲しまなきゃいけないみたいな雰囲気あるじゃん。暗くなるべきというか。でもそうじゃない視点をもらうわけだから、悲しみだけじゃなくて、そこに笑える要素もあるんだと視点が広がって楽になるかもしれない。それで「何笑ってんだよ」ってムカついたとしても、その怒りもエネルギーになるかも。Aさんが変わらず来続けてくれたってことは、Aさんにとってマイナスの反応じゃなかったと思うかな。

「そうだといい。でも、ニガミ17才という音楽がダイバーシティを体現する存在になることが、俺らの理想なのかもしれないです。どんなものを持った人が来ても楽しめるように、ニガミ17才はディズニーランドになりたくてやっているから。そう考えるとあのころの家の規模が音楽を通じてどんどん大きくなっていっているような気もする。」

守るべきものを守りたいから、今は死にたくない。

ーーー過去に病気で倒れたり、体にペースメーカーが埋め込まれている岩下さんだけど、病気になって変わったことってありますか?

「変わったこと……ペースメーカー入れたから変わったのか、ニガミ17才を結成したから変わったのかいまだに分からないけど、あのころは死に対して何も怖くなかったの。だからバンジージャンプとか何ともないし、死が怖くなかった。それがニガミ17才が始まって、大事なメンバーたちと出会えて守るべきものを守りたいから死にたくないというか。最近たまに寝るときに動悸するのよ。ブルガダ症候群という不整脈の病気でペースメーカーを入れていて、昔だったらなんとも思ってなかったけど、「あ、このまま死ぬのかな」と思ったり、朝起きるたびに「生きていてよかったな」と思う。生に対して執着するようになった。ニガミ17才を壊したくない方が大きいように感じる。あと、病気になって変わったことは、飯は大事にしていること。美味しいものを食べるようにしてる。」

ーーーペースメーカーに違和感というか、受け入れるのに時間かかったとかはないんだね。病気になった当初にペースメーカーを叩いていたじゃん。自分で受け入れづらい感じもあったからやってたのかなって。

「いや単純に、笑ってくれるかもしれんと思ったら止まんないのよね。」

ーーー周りはヒヤヒヤだったよ。

「俺は顔面コンプレックスもあるから、自分に自信が持てるなら、見た目を変えることもありだと思う。自分の場合は、おれ髭が濃いな~と思ってて髪の毛とまつ毛以外全部なくしたいんやけど、ペースメーカー入っていると永久脱毛できんっちゃんね(笑)。」

▶岩下優介インタビュー後編:「軸があるから、世間に合わせることも外すこともできる」ニガミ17才岩下が語る、独自の表現スタイル

ニガミ17才
ニガミ17才 岩下優介(vocal)

岩下優介(いわした・ゆうすけ)
ニガミ17才ボーカル。ニガミ17才は、おしゃれ且つ変態な楽曲の表現。というテーマのもと、2016年に結成された岩下優介(vocal)、平沢あくび(synthesizer)、イザキタツル(bass)からなるクリエイティブバンド。メンバー全員偶数月生まれ。約1年半ぶりの自主企画「ニガミ17才と」8/27(金)に開催!チケット一般発売中!詳しくは公式サイトにて。

自主企画「ニガミ17才と」

日時:8/27(金)
会場:Zepp DiverCity
出演者:ニガミ17才 / 打首獄門同好会
料金:前売 ¥6,000 別途ドリンク代
開場 17:15 / 開演 18:00

 

取材・文/石上友梨、構成/萩田若葉

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ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。

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