「これからは楽しいことを優先していく」漫画家ひうらさとるさんが考える、50歳からの生き方

 「これからは楽しいことを優先していく」漫画家ひうらさとるさんが考える、50歳からの生き方
磯沙緒里
磯沙緒里
2023-03-31

心と体が大きく変化することから「第二の思春期」とも言われている”更年期”。年齢とともに生じる変化の波に乗りながら生き生きと歩みを進める女性たちにお話しいただくインタビュー企画です。漫画家のひうらさとるさんへのインタビュー後編です。

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インタビュー前編では、多忙な30代の生活、そして出産・移住によるライフスタイルの変化とそれに伴う心身の変化について伺いました。後編では、ひうらさんの今とこれからについて伺います。

高齢出産と更年期症状の共通項

ーー50代に入ってからご自身の中で感じる体の変化はありますか?

ひうらさん:これからもっと様々な変化が訪れるだろうと思いますが、今のところはホットフラッシュなどのいわゆる更年期症状はあまり感じていないです。加齢によって白髪が増えて頭皮の乾燥が気になってきたのでシャンプーの方法を変えたり、皮膚の乾燥をケアするためにサプリを飲んだり、少しずつ気になることが出てきてはその都度ケアしています。

更年期症状の話を友達にしていたら、高齢出産だと更年期症状を感じにくいって聞いたんです。産後の体調不良が更年期と重なって、どっちかわからないうちに終わるという。

ーー確かに、女性ホルモンの変化という意味では共通点もありますよね。現在は、体調を整えるために何かケアをされていますか?

ひうらさん:朝型生活に変えたことは大きいですが、今は運動もしているんです。週1回ピラティスをしていて、週5日はエアロバイクに40分くらい乗っています。デスク付きのエアロバイクなので、朝起きたらエアロバイクに乗りながらメールチェックすることにしていて、効率もいいんです。運動はもはやルーティン化しているので苦にならないんですよ。

Photo by Satoru Hiura
Photo by Satoru Hiura

ーー更年期に精神的な不調を感じる場合もありますが、ひうらさんはそういうことはありますか?

ひうらさん:これも、幼児子育ての期間と重なっていたんじゃないかと思っています。特に乳児期は気持ちが不安定になってイライラしちゃうことがありました。ホルモンバランスの影響からか、情緒不安定になったり、自分のやりたいことができなくてモヤモヤしたり。

ーーお子さんが小さい時にはお仕事のペースを落とす焦りはありましたか?

ひうらさん:仕事の焦りはあまりなかったです。私は43歳で産んでいるのですが、もし20代での出産だったら違ったかもしれません。自分のポジションが無くならないか、復帰できるのかなどとなにかしら不安はあったと思うんです。でも、高齢出産ということもありキャリアがあるので仕事はできるんじゃないかと思えていました。だからこそ抗わないし、嘆く必要もないってわかっていたんです。それは高齢出産のいいところだと思います。

それよりも「仕事をしていない自分」っていうのがすごい新鮮でした。18歳からこれまでずっと忙しく働いてきて、「暇つぶし」って言葉の意味がよくわからなかったんです。でも、子供ができたことで、子供のための時間ができたんですよね。例えば公園に行ってずっと待たなきゃいけないとか、子供が寝付くまでの時間付き添わなきゃいけないけど、何もすることがないとか。この経験によって、それまでの私は本当に自分のことだけしか考えていなかったことがよくわかりました。自分がこれまでどれだけ傲慢だったかわかったし、人の気持ちもわかるようになった。とても貴重な経験でした。

幼少期の娘さん
幼少期の娘さん
Photo by Satoru Hiura

作品を通して語りかけていく

ーーひうらさんの作品は、心身ともに変化の多い世代の心に響くものがあると思います。ひうらさんが作品を通して届けたいものはありますか?

ひうらさん:私が描くキャラクターのほとんどは自分よりも10〜20歳年下なんですけど、漫画の中で起きる悩みや不安は既に私が超えてきたことなんですよね。だから、まるで自分の妹たちに向けて、「こうすればもっと楽になるよ」とか、「今は悩んでいても、きっと大したことじゃないと思えるようになるよ」なんて語りかけるように、漫画で示していきたいと思って描いています。それは、インナーチャイルドを救うようにかつての自分が言ってもらいたかった言葉を描いているんだとも思うんです。

Photo by Satoru Hiura
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楽しみを優先して素晴らしい時間を持つ

ーーひうらさんのキャラクターのセリフには人を救い上げてくれるような言葉がたくさんあると常々感じてきましたが、そういうことなのですね。ひうらさんは、どれだけお忙しくても自分を楽しませることもしっかり取り入れられていますよね。楽しむことも意識的に取り入れていますか?

ひうらさん:そうですね。昔は仕事を優先しなければいけないと思っていましたが、今は「仕事はなんとかなる」と思うようになりました。これからは、楽しいことを優先していこうと思っています。人って、いつ死ぬかわからない。最近、私たちより少し上の世代の人が亡くなってしまうようになって。友達とも会える時にちゃんと会っておこうと思っています。最近は、優先したいことに合わせて仕事をするようにしています。仕事はね、どうにかなるんですよ。

みんな、自分で思っているよりもずっと真面目だと思うんです。「私はみんなに比べたらがんばってないです」なんて言う人もいるんですけど、そんなことはない。もうちょっとふざけてもいいくらい、十分にがんばっている。仕事は誰かがやってくれるくらいに気楽に考えて、素晴らしい時間をどんどん持ったほうがいいと思います。

ーーお忙しいひうらさんがおっしゃるとなんて説得力があるんでしょう。最後に、ひうらさんがこれからしてみたいことってありますか?

ひうらさん:海外に住みたいと思っています。思ったことはすぐやるタイプなので、これまでにやりたいと思ったことはほとんどしてきましたが、大きいことでまだしていないことって海外に住むことなんです。

去年の夏にスイスとフランスに3週間くらい行ったんですけど、その間に漫画1本仕上げられたんですよね。私はiPadで描くので、どこでも描けるんです。だから、漫画はどこにいてもなんとかなると思っています。だから海外生活してみたいなと思って、英語の勉強もしています。

これからも、してみたいと思うことがあったらどんどんやっていこうと思っています。人生、ずっと楽しんでいきたいですね。

Photo by Satoru Hiura
スイスにて
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ーー今後も世界のどこからか届けてくださるひうらさんの作品が楽しみです。ありがとうございました。

プロフィール:ひうらさとるさん

1966年5月10日、大阪府出身。1984年『なかよし』(講談社)に掲載の「あなたと朝まで」でデビュー。代表作である「ホタルノヒカリ」は「干物女」の言葉を世の中に広め、同作品はドラマ化、映画化され、女性を中心に人気を博した。2011年に住まいを東京から夫の出身地でもある豊岡市城崎町に移し、作品の制作を行っている。講談社ビーラブで連載中「西園寺さんは家事をしない」①~③巻発売中!漫画アプリ「Palcy(パルシィ)」で連載中「聖ラブサバイバーズ」①~③巻発売中!音声メディア「Voicy」では『ひうらさとるの漫画と温泉』パーソナリティもつとめる。Twitter@marikosatoru

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磯沙緒里

磯沙緒里

ヨガインストラクター。幼少期よりバレエやマラソンに親しみ、体を使うことに関心を寄せる。学生時代にヨガに出合い、会社員生活のかたわら、国内外でさまざまなヨガを学び、本格的にその世界へと導かれてインストラクターに。現在は、スタイルに捉われずにヨガを楽しんでもらえるよう、様々なシチュエーチョンやオンラインでのレッスンも行う。雑誌やウェブなどのヨガコンテンツ監修のほか、大規模ヨガイベントプロデュースも手がける。



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