「更年期は"ありがたい時期"なんだと思う」服部みれいさんが更年期を機嫌よく過ごせている理由

 「更年期は"ありがたい時期"なんだと思う」服部みれいさんが更年期を機嫌よく過ごせている理由
磯沙緒里
磯沙緒里
2023-03-16

心と体が大きく変化する”更年期”。年齢とともに生じる変化の波に乗りながら生き生きと歩みを進める女性たちにお話しいただくインタビュー企画「OVER50-降っても晴れても機嫌よく」。第1弾は、文筆家・編集者の服部みれいさんにお話を伺いました。前・中・後編に分けてお届けします。

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文筆家・編集者として様々な書籍を世に送り出していらっしゃる服部みれいさん。2015年に東京から岐阜県へ編集部ごと移住され、現在でも精力的に活動されながら、ご自身の体験を元にした知恵を惜しみなく発信されています。包み込むような温かい語り口が印象的なみれいさんに、年齢を重ねながら今の時代を生きるヒントを伺いました。

心身共に不調だった20〜30代

ーーみれいさんには溌剌としてピカピカと輝いている印象があり、更年期の心身の不調からは遠いイメージがあります。更年期に関わらず、心と体の不調はありますか?

服部みれいさん(以下、みれいさん)ありますあります。特に20代〜30代後半頃まではひどかったんですよ。からだ全体がガチャガチャしていて整っていなくて、本当にひどかった。それで、ホリスティックな方法を試していったんですね。食べ物から始まって生活習慣全体を少しずつ変えていって、今があるんです。精神的にも決して健康とはいえない状態だったんですよ。

ーー今のお姿からはとても想像できませんね。

みれいさん:当時は国の指定難病に該当するほどの病気を抱えていました。それに、病気をつくってしまうほど、心も良い状態ではなかったんですよね。でもこんなに元気になれた。ヨガもそうですが、今はいい知恵がいっぱい開示されていて、それらに気軽にアクセスすることができる。いい知恵をどんどん自分に取り入れていくと自然に元気になっていくのだと思います。

更年期に関して言うと、40代に、更年期の不調は出ませんでした。先ほども申し上げたように、私の場合は20〜30代の頃に不調で、その時代に色々な方法を試してとても元気になったからだと思うのですが…でも、私のまわりの方々を見ていると40代に入っていきなり不調がきた方も多かったように感じました。更年期のためのお薬を飲み始めたり、ホットフラッシュがあったり、めまいがあったりと、急に症状が出始めた人が多かったんです。そういう声を聞き始めた時、私にはまったく症状がなかったんですよね。少なくとも、40代の頃は、更年期症状を感じていませんでした。ただ、50歳になってからでしょうか。更年期症状なのか、精神的に少しイライラしたりとか、気持ちがあまり乗ってこないような日がたまにあります。

みれいさん
40代後半にさしかかった頃のみれいさん
Photo by Fukutaro Hattori

毒出しを済ませてから更年期を迎える効能

ーーごくたまに精神的な不安定さは感じられているものの、現状では身体的にはそこまで気になる症状はない、ということですね。

みれいさん:そうですね。私は「冷えとり健康法」という下半身を温める方法を15年くらい続けていて、この間に「毒出し」をたくさん経験したんですよ。「毒出し」は、もう色々な形で体に表れました。皮膚にも出たし、熱も出たし。おそらく、色々な形で「毒出し」をしてきたおかげで更年期症状がほぼないのだと思っています。特に冷えとりは婦人科系の不調を整えるといわれていて、そのことと更年期の不調がないことと関係がありそうだなと思っているの。

ーー1番効果的だったのは冷えとりですか?

みれいさん:はい。いちばんのベースにはまちがいなく冷えとりがあると思います。特に婦人科系の毒出しを推し進めたのは冷えとりだったなと。さらにその上に色々なセルフケアを実践していて、全体として功を奏したのだと思いますが。いずれにせよ、デトックスが先に終わっている状態が良かったのだと今では思っています。

冷え取りグッズ
冷えとり健康法は、半身浴や足湯で下半身を温める。お風呂に入っていない時は、絹や綿、ウールといった冷えとりソックスの重ねばき、絹のレギンスなどを重ねる。

ーーデトックスといえば、みれいさんが著書の中でご紹介されていた「砂浴(*)」。「こんな毒出しもあるのか」と驚きました。本当に色々なセルフケアを試されていますよね。

みれいさん:はい。砂浴は集中的なデトックス法として行っています。その時にプチ断食もするんですけど、頭痛がしたりかゆみが皮膚に出たりと、人によって色々な症状が出るんです。普段やっている冷えとりにプラスしてこのような集中的なデトックスもやって調整していますね。

*砂浴…砂の中に体を埋め、首だけ出して入るという自然療法。東城百合子さんの『家庭でできる自然療法』に詳しい。

砂浴
ある海辺での砂浴の様子。埋まる砂の質も重要なのだとか。はしもと治療室の橋本俊彦先生の指導により行っていた(ここ数年は合宿はお休み中)。

みれいさん:そんなわけで、私は更年期の不調を感じる前にデトックスを済ませていたことがよかったのかなと思っているのですが、そもそも、更年期自体がとてもすばらしい「デトックス期」なんじゃないかなって思っています。次の老年期へ行くまでの調整をしてくれている時期。だから「ありがたい時期」だと考えています。

ーー更年期といえば、不調とかネガティブな印象もありますが、見方を変えればありがたい調整の時期になるということですね。

みれいさん:そうなんです。更年期のめまいとかホットフラッシュとかイライラとか、症状が出ること=悪いことだと捉えがちな現代社会に私たちは生きていて、すぐに症状を止めようとすることが多いですよね。頭が痛かったらすぐに頭痛薬を飲むとかね。

症状が出ることは悪いことだと捉えがちですけど、別のホリスティックな視点を得ると見え方が変わってくるんです。たとえば野口晴哉『風邪の効用』を読むと「風邪は自然な健康法である。風邪は治すべきものではない、経過させるものである」とある。「症状即治療」という言葉もあるように、とても素晴らしいことが体に起こっていると見ることもできるんですよね。もちろん医学的に緊急に処置を施す必要がある場合もあると思いますが、私たちが対処できる程度の不調の場合は、見方を変えればそう捉えることができる。

「冷えとり」の考え方では、たとえば、足を怪我すると「食べすぎている」と捉えるんですよ。人間は、歩いて食べ物を取りにいきますよね。昔だったら木の実を取りに行くとか、狩猟に行くとか。農作業をするにも、足を使って畑に行く。それをできなくするっていうのは「食べるのをちょっと中止しなさい」っていう意味のサインだと捉えるんです。だから、ホリスティックな観点から見れば、偶然の怪我も偶然ではないんです。なにか症状が出た時の捉え方を変えることは、更年期の見方も変えるチャンスになるかもしれないですね。

私の場合は、自分が今までできていたことができなくなったりスピードが落ちたりするもどかしさからのイライラを感じることがあるのですが、次の老年期へ行く準備をしていると捉えています。もし落ち込んでいるとしても、もっと休もうよ、というサインかもしれない。落ち込むというのは辛いことではあるけれど、一方でよく内省する必要があるのかもしれない。何らかの理由があってその症状が出ているという見方をすると、抑える対象であると思わなくなってくる。こういうものなんだと受け止めるのも1つの方法だと最近では思っています。

みれいさん
Photo by Fukutaro Hattori

更年期は第2のイヤイヤ期

ーーみれいさんにかかると、こんなにも前向きになれるんですね。みれいさんは実際に、周囲の方に更年期症状についてお伝えしていますか?

みれいさん:私のパートナーが10歳下なんだけど、最近、私の手が乾いてビニール袋がうまく開けられなくなることを笑うんですよ。「お願いだから笑わないで。あなたも10年経ったらわかりますよ!」とか言うようにしたらわかってくれて。今では率先してビニール袋を開けてくれるようになりました。それで、うちでは「更年期の女性にやさしく」っていうTシャツを作ろうと思っているところです(笑)。

こうやって何かが起こるたびに、何か感じるたびに、更年期症状について伝えるようにしてからは、私ができないことをパートナーが笑うことはなくなりました。私がアナウンスをし続けたからこそ理解してくれたんですよね。最初に伝えておくっていうのはすごく大事だと思います。うちは年齢も違いますし、そもそも体の構造も違う。伝えないとわからないことがいっぱいあると思います。

2歳くらいの子どもに「イヤイヤ期」ってありますよね。更年期って、第二の思春期ってよく言われますが、わたしにとっては第二の「イヤイヤ期」なんじゃないかな、と。更年期障害の嫌なところを見るよりも、周囲の人々に大事に見守るという姿勢でいてもらえるように工夫できるといいですよね。イヤイヤ期の子どもなんて、何をしたって嫌で泣いちゃうんだから。更年期も同じようなもの。そうやって次の自分へ成長するために調整しているんだと思います。だから、今の私は体調の変化と共にイライラもある時期だと周りに伝えておくのも手ですよね。

閉経前のモヤモヤ期を無理せず過ごす

ーー更年期の体の変化としては、閉経も大きいといわれています。

みれいさん:まだ私は閉経してないんですけど、いよいよ閉経するんだなという揺れはすごいです。「終わるのか、終わらないのか、いつまであるのか」なんてモヤモヤと考えてしまったりもしました。人によっては女性としての自分が終わってしまうのだとものすごく抵抗感がある方もいるくらい、ひとつの時期の終わりが近づいている。この大きなトピックに今まで女性たちはどう向き合ってきたんだろうと思いを馳せています。

ーーみれいさんご自身は、閉経前のモヤモヤとはどう折り合いをつけていますか?

みれいさん:生理って素晴らしいデトックスだから終わってほしくない気持ちと、早く終わってほしい気持ちとの間で揺れ続けていますね。どちらの自分にも共感しつつ、最近ではもしかしたら今残りあと1回の生理を過ごしてるかもしれないと思って、生理期間を大事に過ごすようにしています。

あとこれはアーユルヴェーダの知恵ですけど、ここ数年は特に生理前後、特に生理前の時期にはゆったりと無理せず過ごすようにしています。目をできるだけ使わないようにするとか、予定をあんまり入れずに家でのんびり過ごすようにしています。

ーー現代人は目を酷使しがちですよね。私自身、目はついつい使いすぎてしまいます。みれいさんはどのように工夫されていますか?

みれいさん:夜は携帯の画面を見ないようにするとか。休みの日は一切見ないとか。目が疲れていると効率も落ちるので、原稿を書く仕事の場合、書くのが2〜3日後でもよければ生理が終わってから書くとか。そんな風にちょっとずつですが、デジタルデトックスもできるだけ工夫するようにしています。

ーーみれいさんの生活の中には様々な工夫が散りばめられているんでしょうね。何事も決めつけず、体調によって柔軟に調整されていると感じます。

みれいさん:人間の体って、年齢と共にずっと変わっていくものだとつくづく感じています。1年を通しても変化しますよね。春は体が開いていく時期だし、冬はぐっと縮こまる。もっといえば、日によっても全然違うんですよね。自分の体やこころの内側にどれだけ耳を傾けて共感できるかは、年齢を重ねるごとにますます大事になってきていると思います。

みれいさん
Photo by fukutaro Hattori

中編では、セルフケアの重要性についてお話を伺います。

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磯沙緒里

磯沙緒里

ヨガインストラクター。幼少期よりバレエやマラソンに親しみ、体を使うことに関心を寄せる。学生時代にヨガに出合い、会社員生活のかたわら、国内外でさまざまなヨガを学び、本格的にその世界へと導かれてインストラクターに。現在は、スタイルに捉われずにヨガを楽しんでもらえるよう、様々なシチュエーチョンやオンラインでのレッスンも行う。雑誌やウェブなどのヨガコンテンツ監修のほか、大規模ヨガイベントプロデュースも手がける。



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