トラウマ・セラピストが解説|ヨガが遺伝に与える驚くべき影響
意識改革がすべてを変える理由
このサムスカーラという考え方は、アルコール依存症やうつ病、不安神経症の傾向を見るためのもうひとつのレンズにもなるのです。私と兄は同じDNAを持っていますが、兄だけが扁平上皮癌、脊椎の変性疾患、消化器系疾患を患っています。なぜでしょうか?エピジェネティクス(後成学)は、ヨガサイエンスやアーユルヴェーダと同様に、これらの刷り込みは私たち2人の中に存在するものの、それが活性化するかどうかは、私たちの意識と習慣的な行動を選択する注意によって変わる可能性がある、と示唆しているのかもしれません。
私の兄はこのような情報を得ることができず、ベトナム戦争に参加して以来、ずっとタバコを吸っています。また、1日にコカコーラを6本飲むことを習慣にし、無意識のうちに食事のパターンを繰り返しています。海軍の衛生兵として戦争に参加した際に経験した数々のトラウマに加えて、これらの日常的な習慣は、彼の心の中にあるサムスカーラを後天的に目覚めさせました。しかし、それは私自身のDNAの中にも眠っているのかもしれません。
私たちの健康や幸福は、個人の責任が重要な役割をします。ヨガやアーユルヴェーダの科学にアクセスすることは、役に立つことです。しかし、サムスカーラを変えるために最も重要なことは、かつては何もなかったところに気づきを与えることです。つまり、意識的になり、無意識の社会の習慣的な声(つまり、外的な支配の声)ではなく、自分の内的な支配の声(内なる声)に基づいて意思決定を行うことです。
なぜ私がこれを知ったかって?なぜなら、私もあなたと同じように、様々なことを経験し、喪失に伴う多くの悲しみのトンネルから抜け出す方法を見出してきたからです。私にとってヨガの練習は、このような悲しみの運河の上を運んでくれる船のような存在です。その練習のおかげで私を取り囲むコミュニティ(サンガ)、そして自分自身に心地よく、悲しむための時間と空間を与えることができるようになったことは、少なくとも私の経験では、すべてヨガの副産物なのです。
肉体を超えたヨガ
私の悲嘆の水路に注ぎ込むもう一つの川があります。25年以上にわたって、子どもたちやティーンエイジャー、大人たちと共に座り、彼らの話に耳を傾けてきました。私はただ耳を傾け、時にはお茶を提供することもあります。
自分の仕事がきっかけで、ヨガ、アーユルヴェーダと導かれ、最終的には自分自身へと戻ってきました。クライアントを見ていると、私の傾向が私だけのものではないことに気づかされます。瞑想をすればするほど、私はより意識的になり、自分の人生を導き、進む方向を選ぶ際に積極的に責任を持つようになりました。不健康なサムスカーラを健康なサムスカーラに置き換え、より自由な人生を手に入れることができるのです。どれも努力なしにできることではありません。
私の心も砂のように指の間からこぼれ落ちてしまうかもしれません。しかし、今のところ、私は心をこめて、心と心を結びつけ、耳を傾け、時にはお茶を提供できることに深く感謝しているのです。
『Embodied Resilience through Yoga: 30 Mindful Essays About Finding Empowerment After Addiction, Trauma, Grief, and Loss』より抜粋。(発売元:Llewellyn Publications、発売:2021年9月、著者:Kat Heagberg、Melanie C. Klein、Kathryn Ashworth、Toni Willis)許可を得て転載。
教えてくれたのは・・・キャサリン・テンプルトンさん
アーユルヴェーダ・プラクティショナーとして活動するキャサリン・テンプルトンさん(MA, RDT/ MT/LPC, E-500 RYT, C-IAYT)は、他者の健康のために人生を捧げている。30年来の心理療法士でもあるキャサリンさんは、ドラマセラピーのマスターティーチャーであり、不安、うつ、複雑なトラウマを持つ人々の治療を専門とする臨床家および教育者として活動を続けている。https://kathryntempleton.com/
ヨガジャーナルアメリカ版/「I’m a Trauma Therapist. Here’s What I’ve Learned About Yoga’s Impact on Genetics」
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ヨガジャーナルアメリカ版
全米で発行部数35万部を超える世界No.1のヨガ&ライフスタイル誌。「ヨガの歴史と伝統に敬意を払い、最新の科学的知識に基づいた上質な記事を提供する」という理念のもと、1975年にサンフランシスコで創刊。以来一貫してヨガによる心身の健康と幸せな生き方を提案し続けている。
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