「どうせ裏切られる」「他人は信用できない」問題行動の裏にある「心の傷」どう向き合えばいい?

 「どうせ裏切られる」「他人は信用できない」問題行動の裏にある「心の傷」どう向き合えばいい?
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石上友梨
石上友梨
2020-11-23

「どうしてこんなに生きづらいのだろう」「どうして親を困らせるようなことをするのだろう」自分自身や我が子に対してそのような思いを抱いてしまった時、その行動の背景に「トラウマ」があることも考えられます。トラウマとは何か、そしてもし、自分や子どもにトラウマがあるのだとしたら、それとどう向き合えばいいのでしょうか?臨床心理士が解説します。

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トラウマとは、心の傷のことです。今までの対処法では対処できないような圧倒的な体験をすることによって、著しい心理的ストレスを受けることをいいます。私たちは自分が直接体験したことだけではなく、見たり聞いたりしたことでもトラウマを受けてしまうことがあります。そして、トラウマに年齢は関係なく、まだ言葉を話せないような幼少期の子どもも、トラウマの影響を受けます。むしろトラウマの影響は大人よりも大きくなるかもしれません。発達期の継続したトラウマ体験は、心身の発達だけではなく、大人になってからの対人関係や身体疾患や精神疾患にも大きな影響を与えることが分かっています。

それでは、トラウマ体験によって私たちはどのような反応を起こすのかを紹介します。

1.再体験症状

フラッシュバックや悪夢として、トラウマ体験の記憶がありありと蘇ってきます。それは思い出そうと思って思い出すものではなく、一見関係のなさそうなきっかけなどによって、突然思い出されるようなものです。フラッシュバックは、あたかも今またそのできごとを体験しているかのように鮮明な記憶だったり、当時の感情や身体感覚を伴って思い出されます。

2.回避症状

トラウマ体験が思い出されるようなものを避けるような行動をとります。見ないようにしたり、避けたりして、なんとか思い出さないようにするのです。時に自宅に引きこもって外に出れなくなってしまったり、自分でも理由がわからずに無意識的にやっている場合もあります。また、記憶や感情を意識から切り離すようにして、トラウマ体験を忘れてしまったり、現実感が薄れたり、慢性的な無力感を感じることもあります。

3.過覚醒症状

自律神経の交感神経が優位になって体が活性化している状態です。警戒心が強くなり、日常の生活の些細な音に驚いたり、身体が常に緊張状態になったりします。 夜に眠れないことや、集中力の低下、些細なことでイライラするといった場合もあります。

これらの症状が子供に起きた場合、一見すると反抗的な態度や問題行動のように見える場合もあります。過剰に警戒しているために落ち着きがないように見えたり、注意が散漫になったりします。フラッシュバックや辛い気持ちを追い払うために、突然の癇癪や暴力行動が起こるかもしれません。イライラしたり衝動的になることもあります。アルコールなどの「物質」に過度に頼ってしまったり、自傷行為につながることもあります。

一見大人を困らせる行動に見えても、その後ろにはトラウマ体験が潜んでいる場合があるのです。

そして、トラウマを体験したことで、「世界は信用できない」「どうせ裏切られる」「自分はダメな人間だからこんな目にあうんだ」といった考え方に変わってしまうことや、強い自責感や自己否定感を感じてしまうことがあります。感情のコントロールが難しくなったり、感情を切り離して何も感じなくなってしまうこともあります。何をやっても無駄だと強く信じ混んでしまった場合は、今の環境から抜け出したり、何かに挑戦する気力さえも奪われてしまいます。

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