強度のストレスに苦しむ人へ 世界のトップ講師ハラ・コウリに学ぶ「トラウマをケアするヨガ」
ヨガジャーナルアメリカ版の人気記事を厳選紹介!大地につながり呼吸することを重視するヨガを通じて、安心感と集中力を手に入れよう。
ヨガやヒーリングの分野では、「トラウマを熟知した(traumainformed)」という言葉が流行語になっているようなところがある。この言葉は、トラウマを経験した人の必要性に対応することや、特にトラウマを経験した人の症状を緩和することを指している。トラウマを熟知したヨガの基本的な狙いは、地に足がついている感覚や心強さを体の中に見つけること、安全な方法でさまざまな感覚につながること、そして、ヨガを利用することによって自分の体の信号を再び信用できるようにすることの3つである。これによって自分を管理できるようになり、身体的、感情的、心理的に安心感を味わえるほか、存在しているという感覚やバランス感覚も得られるようになる。
「トラウマを熟知したヨガ」では、特定のポーズやシークエンスよりも、各ポーズで何を焦点にするか、そしてどうやってその焦点に合わせるかを問題にする。突き詰めていくと、支えられている感覚を実感して、戸惑うことなくさまざまな感覚や感情を感じ取れるようにするために、指示の出し方や練習のペース、ポーズの順番が工夫されているヨガということになる。私はよく、「トラウマを熟知したヨガ」の本質は、不安から走って逃げるのではなく、その中を歩いて進んでいけるようにして、不安に耐えられるようにすることだと説明している。トラウマが解消していないと、常に結びつきが絶たれた状態に置かれてしまう可能性がある。ヨガをすることによって、過去への執着から解放されて、今に存在することを身をもって経験できるようになる。
交通事故、虐待、自然災害、暴力、死のようなトラウマとなる出来事を経験すると、さまざまな事態に反応してしまいうまく対処できなくなる。強度のストレスを経験しても同じである。トラウマが解消されていないと、全般的な気分の調整と身体的健康に影響が及んで、自分が体から切り離されているような感じがすることがある。不安や抑うつ、消化器系の問題、頭痛、腰痛、自己免疫疾患として現れることもある。外界から切り離されているような感じがして何も感じなくなることもあるし、反対に、過度に活性化されて特定の刺激に対して感情的にも身体的にも強い反応を示すこともある。トラウマの影響は人によって異なり、万人に効果的なヨガがあるわけではない。とはいえ、解消していないトラウマや強度のストレスに苦しむほぼすべての人に、特定の基本的なヨガが役立つと考えて差し支えない。
私が指導している臨床心理と身体的経験(Somatic Experiencing:体を本来の制御された状態に戻すべく、体から心的外傷性ストレスのエネルギーを取り除くことを目指す体を使った心理療法)の訓練では、通常のヨガを「トラウマを熟知したヨガ」に変える枠組みを提供しており、ほとんどの流派に応用することができる。
「トラウマを熟知したヨガ」で重要なことは、地に足がついていて、集中していて、自分が体の中に存在していると感じることである。
どのポーズでも、地面と接している部分を感じること、(腹部をぎゅっと固めたり平らにしたりせずに)体幹の筋肉を働かせて腰を支えること、呼吸することの3点に意識を集中しよう。深い呼吸をすると、神経系に弛緩反応が引き起こされる。呼吸は強いられるものではなく、利用できるものだと感じたいものだ。時には深い呼吸ができないこともあるが、強引にしようとしても無駄である。そういう場合は、しっかり地に足をつけることと集中することに意識を向けよう。
ポーズを行っている最中とポーズの後にどのような感じがするか観察しよう。筋肉と関節の感覚だけではない。穏やかに感じるか、不安を感じるか、疲れているか、警戒心があるか観察してみよう。力強いポーズをしているときでも、自分を制御できていると感じたいものだ。ポーズをすることによって不安を覚えたり、圧倒されたりする場合は、そのポーズをとばしてもよいし、1つ前のポーズに戻ってもよい。以下のシークエンスを自分に合った順番で試してみよう。左右どちらを先に行ってもよいが、一方に統一しよう。目は開いていても閉じていてもかまわない。自分が存在していることを強く感じられるほうを選ぼう。その感覚はその都度変化するかもしれない。
1.ターダーサナ(山のポーズ)
3〜5回呼吸する間 または心地よく感じる間
生徒への指示 / 脚の付け根から足裏まで脚全体を通じて体を地面に下ろそう。地面を踏むことによって上に伸びるのを感じよう。どのポーズでもしっかり地面を踏んで立ち上がる感覚を探ってみよう。
2.スカーサナ(安楽座)
5回呼吸する間 または心地よく感じる間
生徒への指示 / 安楽座で座り、ブランケットを敷くなど、支えられていると感じるのに役立つプロップスはなんでも使おう。脊柱を長く保とう。ありのままの呼吸を観察しよう。
3.スカーサナのバリエーション
2〜3回繰り返す
生徒への指示 / 腕を組み、両手で腕を抱きしめて手首から肩まで上下に動かそう。この動きによって、大地に接していて包まれているという安心感が生まれてくる。無心で呼吸を観察しよう。
4.スカーサナのバリエーション
3〜5回呼吸する間 または心地よく感じる間
生徒への指示 / 坐骨を通じて地に根を下ろし、その姿勢から腕を引き上げ側屈する。無理はいっさいしないように(反対側も同様に行う)。
細心の注意を払って呼吸しても、無意識に呼吸してもよい。気持ちいいほうを選ぼう。
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