激動の30年でセックスの悩みはどう変化したか|カウンセラーに聞く#大人こそ知りたい性のこと

 激動の30年でセックスの悩みはどう変化したか|カウンセラーに聞く#大人こそ知りたい性のこと
Photo by Maru Lombardo on Unsplash

人に相談したいけれど、関係が近いほど言えなくなるのが「セックスの悩み」。特に30〜40代になると、セックスについての経験値や価値観の違いが出てしまい、悩んでいることさえ周りに悟られないようにしているもの。そこで日本のセックスカウンセリングの草分けである臨床心理士の金子和子先生に、今の30〜40代の性の悩みについてお話をうかがいました。

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悩みと向き合えない現代人

セックスカウンセリングというと、敷居が高いイメージがあります。実際にはどんな相談が多いのでしょうか?30年以上セックスカウンセラーとして多くのカップルのセックス問題に対峙してきた金子和子先生に聞いてみると「相談内容の前に、相談者自体が年々減っています」と回答が。昔に比べかなりオープンになったとばかり思っていたので、この回答は正直意外ですが……。

今は、ネットで簡単に調べる人が多いから、それで解決した気になってしまう。実際にそれで済んでいれば、問題はないのですが……。最近は、相談の前に、悩む能力が低下していると感じます。悩みに真剣に向き合って解決しようとする意識が、少なくなっているのではないでしょうか」(金子先生)

晩婚化で引き起こる手遅れ問題

悩む能力の低下とともに、近年の晩婚化で、相談に来るタイミングがかなり遅くなっているとも、金子先生は言います。「結婚後『挿入がうまくできない』『性交痛がつらくセックスできない』という問題を数年放置していると、すぐに妊娠出産のリミットを迎えることになってしまいます。これだけはズラすことができないので、手遅れになる前に、できるだけ早く相談に来て欲しいのです」(金子先生)

結婚後に、セックスができないことで悩む? 性の不一致を起こさないために婚前交渉を行うのは、もう特別なことではありません。セックスができない状態で、結婚をする人なんているのでしょうか?

セックスせずに、子供が欲しい!?

「草食系って言うのでしょうか。今はセックスに、重きを置かないカップルもいるということです。それは双方が納得していれば問題ないのですが、年齢とともに夫婦間の考えも変化するものでしょ? いざ『子供が欲しい』となった時、妊娠・出産に焦って、やっとのことでカウンセリング室にいらっしゃる方々もいます。その中には、健康体なのに『挿入はしたくない(あるいはできない)けど、子供が欲しい』と言う方も。昔はとても珍しかったですが、今では、多くの不妊治療専門クリニックに同じような相談がきていますね」と金子先生。

そんなにセックスを拒むなら、結婚前に告げるのがルールのようにも思えますが、本人たちも気がついてなかったり、夫婦間でもそれをしっかり話し合えないのが、セックス問題の見えない深さ。金子先生は、さらに驚くことを教えてくれました。

「女性側に『挿入障害』のある方がいました。挿入障害とは、肉体的な疾患ではなく、メンタルの疾患です。結婚後しばらく経っても挿入できないので、痺れを切らした旦那様と一緒にカウンセリングにいらしたのですが、妻側の言い分は『私は変わらない、挿入しない私を受け入れてください!』と、だけ。変わることを頑なに拒み続けていました。セックスは、人生の見え方を変えてくれるので、とても残念でしたが……(金子先生)

女性が性の悩みを告白できる時代へ

今までのお話を伺うと、セックス嫌いになっている、あるいは性に対して淡白な女性が増えているように感じられるのですが...

「いいえ、そうとは限りません。昔は、カウンセリングにいらっしゃる方は、ほとんどが男性。女性が来たとしても、夫の悩み相談(勃起障害、早漏など)で、『性の悩み=男の問題』とされていました。でも今は、女性が『自分の性の悩み』を相談にいらっしゃる。昔よりバランスがとても良くなったと思います」(金子先生)

「夫のために(本当は嫌だけれど)セックスする」のではなく、女性自身が人生をより豊かにするために「自分のためにセックスをする」と捉えるようになったこと。この女性たちのセックス観は、とても大きな変化であるように感じられます。

カウンセリングの役割

「冒頭で、相談者が減っていると言いましたが、その理由のひとつが、カウンセリングに『癒し』を求める人が多いこと。実際のカウンセリングは、癒しだけでなく苦痛が伴うこともあります。だって、元々セックスは嫌なこと・怖いことと思っている方々なんですから。でも、どんなリハビリでも、少々痛くても、結果は必ず痛み以上の収穫がありますよね。またカウンセラーという専門家が介入することで、当事者同士ではうまく話せない本音を引き出せるし、意思疎通ができるんです」(金子先生)

家族にも友達にも、パートナーにすらも心の内を正直に話せないのが「セックスについての悩み」。もしあなたがセックスレスに悩んでいる、あるいはセックスが苦痛で本気で悩みを解決したいなら、多少の苦痛を伴ってでも専門家であるセックスカウンセラーの力を借りて、心と体に向き合ってみてはいかがでしょうか。本連載「#大人こそ知りたい性のこと」では、誰にも聞けないからこそ深刻化しやすい「30〜40代のセックス問題」について考えます。

教えてくれたのは...金子和子先生
日本性科学会 理事。臨床心理士。日赤医療センターで、30年以上セックス・セラピストとして勤務後、現在は「日本性科学会カウンセリング室」および「主婦会館カウンセリング室」でカウンセリングを行い、多くの性の悩みの解決のサポートを行なっている。

※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

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Text by Yuki Ikeda



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