【整形外科医が教える】肩の修復を助けるために摂った方がいい&摂らない方がいい食品
「肩がうずいて眠れない」「肩が上がらない」……。その原因不明の肩の痛み、五十肩ではなく、けんばん断裂かもしれません。けんばん断裂を放置したら一生、肩が痛いままでいる可能性も。そうならないために気を付けたいことやセルフケアを『肩のけんばん断裂 自力でできるリセット法』(アスコム)より内容を一部抜粋して紹介します。
〈けんばん断裂とは〉肩関節を守る腱板筋群の先端にあり、上腕骨とつながっているところが「腱」。この腱が集まって板状になっているところが「腱板」。この腱板が加齢に伴い徐々に弱ってきて骨から剥がれ、穴があくのが「けんばん断裂」です。軽症なら「けんばん損傷」、重症になると「けんばん断裂」と区別する医師もいますが、この本ではまとめて「けんばん断裂」で統一します。
全身状態を整える食事は、肩のためにもなる
けんばん断裂に効くような、魔法の食品はありません。ですが、これだけはお伝えしておきます。糖尿病、ビタミンD欠乏症 、脂質異常症、骨密度低下などを改善する食事が、肩をいたわることになります。
特に手術を検討する方には、より重要です。手術をしても、体の状態が悪ければ、結果が落ちるからです。生活習慣や全身状態は、修復成績(手術後の治り具合)に直結します(*18)。
糖尿病の患者さんを調べたところ、けんばん断裂の手術後にHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー/平均的な血糖状態を示す指標)が上がった人の再断裂率は51.1%、上がらなかったか低下した人の再断裂率は14.3%でした。つまり、血糖値のコントロールは腱板 (けんばん)の治癒に重要であり、手術前も手術後も血糖の管理が必要だということです。
特に手術後3~6カ月間のコントロールが大きく関わります(*19) 。この期間はよりいっそう血糖値を急上昇させる食生活はしないように心がけてください。
甘い飲み物やお菓子を控えめにし、ごはんや麺類だけで済ませず、たんぱく質や野菜も一緒にとることが大切です。
また、ビタミンDが欠乏した人の再断裂率は26.67%で、欠乏していない人の再断裂率は9.09%だったという研究があります。欠乏した人は、手術後の痛みも強い傾向がありました(*20)。
ビタミンDは食品でもサプリメントでも摂れます。食品では、魚介類、きのこ類に多く含まれています。
脂質異常症も、手術後の治癒と大きく関係するので、放置しないことです。コレステロール値の管理は必要です(*21) 。食事でも脂質の多い食材は控えるほうがいいでしょう。
たとえば揚げ物、脂身の多い肉、バターや生クリームを多く使った食品など、脂質の多いものは控えめにしましょう。
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の方や骨密度の低い方も、それを放置しないことです。食事では、カルシウムはもちろんですが、ビタミンD、ビタミンK、タンパク質をしっかり含んだバランスのよい食事を心がけてください。たとえば、魚、卵、納豆、豆腐、低脂肪の乳製品、緑黄色野菜などを意識してとるといいでしょう。
そこに適度な運動、適度な日光浴(一日10~30分)を加えることが基本です。
それによって、骨密度は高まっていき、骨は丈夫になります。
魔法の食品を探すより、血管と骨を守る食事が基本
食事がけんばん断裂に与える直接的な影響の大きさは未知数です。とはいえ、炎症を起こしやすい食品(甘い炭酸飲料、白いパンやパスタなどの精製炭水化物、油、ハムやソーセージなどの高脂肪加工肉、バターなど)を避けることは実践してもいいでしょう。アルコールも飲み過ぎないほうがいいと思います。
逆に、抗炎症食品(果物、野菜、豆、紅茶、コーヒー、カカオ分の多いチョコレート、香味野菜やハーブ、玄米や全粒粉パン、オートミールなどの全粒穀物、オリーブオイル、ごまや亜麻仁などの種実類、鮭、鰯、鯖など)を摂ることは、修復を助ける食生活になるでしょう。
この本の著者…歌島大輔(うたしま・だいすけ)
1981年生まれ。広島県出身(茨城県育ち)。山形大学医学部卒業。日本整形外科学会・日本専門医機構認定整形外科専門医。日本整形外科学会認定スポーツ医。NSCA認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト。専門領域は、肩関節、肩関節鏡手術、スポーツ医学。フリーランス整形外科医として磨き上げ続ける知見とスキルを駆使して、複数の病院で日本全国から来院する肩痛患者の診療を行っている。とくに肩関節鏡手術数においては年間約350件と全国トップクラス。日々の診療・手術のかたわら、YouTubeやSNSでの健康情報発信やオンライン講座なども積極的に展開している。
【参考文献】
*18:Wang G, et al. 2024. Risk factors for healing failure after arthroscopic rotator cuff repair in small to medium-sized tears: a retrospective cohort study. Front Surg 11: 1456540.
*19:Kim MS, et al. 2023. Increased HbA1c Levels in Diabetics During the Postoperative 3-6 Months After Rotator Cuff Repair Correlated With In creased Retear Rates. Arthroscopy 39: 176-182.
*20:Chen J, et al. 2022. Association of Preoperative Vitamin D Deficiency With Retear Rate and Early Pain After Arthroscopic Rotator Cuff Repair: A Retrospective Cohort Study. Orthop J Sports Med 10: 23259671221130315.
*21:Garcia GH, et al. 2017. Hyperlipidemia increases the risk of retear after arthroscopic rotator cuff repair. J Shoulder Elbow Surg 26: 2086-2090.
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