最新研究【睡眠不足の脳には運動?】20分の運動で昼寝と同程度に記憶力を維持
新たな研究では、30時間連続で起きていた人が20分間の運動を行うと、90分間の昼寝をした場合とほぼ同程度の記憶力が保たれた。
運動と昼寝が睡眠不足による記憶力低下を抑制
睡眠不足による生産性の低下や安全上の問題は、年間数千億ドルの損失につながっており、深刻な公衆衛生上の問題となっている。新たな研究は、一晩睡眠を取れなかった場合でも、薬を使わずに記憶力を保つための取り組みやすい方法として、運動と昼寝の2つを示している。
今回の研究には、18歳から35歳までの健康な成人53人が参加した。参加者は研究室内の管理された環境で30時間眠らずに過ごした後、最大心拍数の80%に相当する強度で20分間自転車をこぐグループ、90分間の昼寝をするグループ、ペダルをこがずに20分間エアロバイクに座っているグループ(対照群)の3つに無作為に分けられた。
割り当てられた活動を終えた参加者らは、脳の電気活動の測定を受けながら150枚の画像を見た。3日後、研究室に戻り、提示された画像から以前見た画像を特定するテストを受けた。この記憶テストは画像を見る際には知らされていなかった。
結果、運動グループと昼寝グループは、いずれも対照群より多くの画像を正しく記憶していた。対照群と比べた成績は、運動グループで21%、昼寝グループで23%高かった。
対照群に比べて、運動グループが報告した疲労感は低い水準だった。両グループとも30時間起き続けていたことを考えると、睡眠不足と疲労が重なることが懸念される職場にとっても意味のある結果だ。
運動と昼寝で異なる記憶力への働きかけ方
昼寝をした後は、脳がより穏やかな状態になり、新しい情報を取り込みやすくなっていた。また、起きている時間が長くなるほど高まる睡眠への欲求も明らかに低下し、精神的な疲労を示す脳活動も抑えられていた。昼寝後に画像を見た際の脳活動を調べたところ、記憶の形成に関わる特定の脳信号が強く現れた人ほど、3日後にもその画像をよく覚えていた。つまり、昼寝によって、脳が新しい情報を取り込む準備が整った状態に戻ったと研究者らはみている。
運動後の脳では、昼寝とは異なる変化が見られた。運動グループでは、注意力や記憶に関わる脳信号と、画像をどれだけよく覚えていたかとの結びつきが対照群より強かった。一方で、この信号そのものが対照群より強くなったわけではなかった。この結果は、運動によって脳がよりたくさん働いたのではなく、もともとある脳の働きをより効率的に使ったことを表していると研究者らはみている。訓練を積んだアスリートを対象としたこれまでの研究でも、同じような傾向が報告されており、初心者と比べて経験豊富な人は、脳の活動を大きく高めなくても頭を使う作業をこなすことが多いという。
睡眠不足の脳は資源を余分に消費
対照群ではさらに興味深い結果が見られた。注意力や記憶に関わる脳信号の活動は高まっていたものの、記憶成績の向上にはつながらなかった。この活動の高まりは、効率的に情報を処理していたというより、睡眠不足を補おうとしていたためとみられる。何の介入も受けなかった対照群では、記憶力の向上につながらないまま、脳がより多くの資源を使っていたとみられる。
職場への応用につながる可能性
研究者らは、今回の結果が睡眠を取らなくてもよいことを示しているわけではないと強調している。今後は、実際の職場環境でも同じ結果が得られるのか、また1晩だけでなく、慢性的に長期間睡眠時間が制限されている人にも当てはまるのかを検証する必要がある。
一方で、世界人口の約3分の1が十分な睡眠を取れていないことを考えると、極端な睡眠不足でも記憶力の維持に役立った今回のような20分間の介入を、実際の職場でさらに研究する価値は十分にあるだろう。
「勤務中に昼寝をすることが常に可能とは限らない。運動は取り入れやすく、費用もかからず、実践しやすい。そのため、睡眠時間が限られているときに認知機能を良好に保つための有望な方法だ」と、研究の筆頭著者であるマギル大学神経学・脳神経外科学部のマドゥラ・ロトリカー氏は述べる。
今回の研究結果は、睡眠不足が起こりやすく、ミスが深刻な結果につながる医療や交通、緊急対応に携わる職場で今後役立つことも期待される。
出典
https://www.mcgill.ca/newsroom/channels/news/workout-or-nap-either-can-help-your-sleepless-brain-study-finds-373881
https://studyfinds.com/sleepless-night-exercising-protects-memory/
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