がんになっても「いつもの自分」でいるために。LAVENDER RINGが10年かけて伝え続けてきたこと

がんになっても「いつもの自分」でいるために。LAVENDER RINGが10年かけて伝え続けてきたこと
提供:「MAKEUP&PHOTOS WITH SMILES 2026」 運営事務局

がんの治療によって変わるのは、体調だけではありません。脱毛や肌のくすみ、色素沈着など、外見の変化が人に会うことや仕事へ行くことへのためらいにつながることもあります。そんな「治療の先にある日常」に目を向け、がんサバイバーへの偏見や社会のイメージを変えようと活動を続けてきたのが「LAVENDER RING(ラベンダーリング)」。2026年、活動は10年目を迎えました。8月9日に開催されたイベントから、がんサバイバーにとってのヘアメイクや美容が持つ意味を考えます。

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「がんになったら人生が変わる」だけではない。LAVENDER RINGとは

LAVENDER RINGは、「すべてのがんサバイバーに笑顔を」をミッションに2017年に始まった社会活動。

日本では生涯に約2人に1人ががんに罹患するとされる一方、「がん=死に至る病」といったイメージはいまだ根強く、病気そのものや治療だけでなく、周囲からの見られ方によって苦労する人もいます。

そこで、認定NPO法人キャンサーネットジャパン、資生堂、電通の有志を中心に、がんになっても自分らしく生活している人たちの姿を社会へ発信し、がんへの偏見やネガティブなイメージを変える活動を続けてきました。その中心となる取り組みが、がんサバイバーにヘアメイクやメイクレッスンを行い、その姿を撮影してポスターにする「MAKEUP&PHOTOS WITH SMILES」です。これまで7つの国と地域に広がり、約1200組が参加しています。

ラベンダーリング

※LAVENDER RINGでは、診断後、治療中、経過観察中、寛解後など、がんに罹患したことのあるすべての人を「がんサバイバー」と表現しています。

プロのメイクと撮影で出会う、「今の自分」の新しい表情

2026年8月9日、日本最大級のがん医療フォーラム「ジャパンキャンサーフォーラム2026」の会場で、「MAKEUP&PHOTOS WITH SMILES 2026」が行われました。

この日参加した13人のがんサバイバーを迎えたのは、資生堂のヘアメイクアップアーティストたち。治療による色素沈着や脱毛など、それぞれが抱える外見の悩みや希望を聞きながら、一人ひとりに合わせたメイク方法を伝えていきました。

ラベンダーリング
ラベンダー

参加者からは「せっかくなのでチャレンジしてみようかな」「これなら普段の生活にも取り入れられそう」といった声が上がり、メイク後には「自信になりますね」という言葉も。続く撮影では、完成した自身のポスターを目にして「これが私!?」と驚く姿も見られました。

ラベンダー
ラベンダー
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ここで行われているのは、単に「きれいにして写真を撮る」ことではありません。

LAVENDER RINGがポスターを社会へ発信する背景には、「がんになった人=弱っている人、かわいそうな人」といった一面的なイメージとは異なる、さまざまな表情や人生を持つサバイバーの姿を可視化したいという目的があるのです。

ヘアメイクは「人に会う」「仕事へ行く」ための力にもなる

治療による外見の変化は、その人の社会生活とも深く関わります。

資生堂ヘアメイクアップアーティストの神宮司芳子さんが、がんサバイバーの外見ケアに関わるようになったきっかけは、がん治療のためウィッグを使うことになった上司から相談を受けたことでした。

神宮司さんによると、外見が整うことで得られるのは、見た目への満足だけではないといいます。

「自分の外見が整うことの喜び以上に、内面の変化が大きいと感じます。1歩前へとアクティブになれる前向きさが湧く」と話し、治療をしながら働く人にとっても、医療用ウィッグなどによって“いつもの自分らしさ”を表現できることが、仕事や日常生活を送る際の安心感につながっていると語ります。

神宮寺さん
資生堂ヘアメイクアップアーティストの神宮寺芳子さん。宣伝広告、モデルや女優のヘアメイクを多数手がける他、資生堂パーフェクトカバーのブランド担当として商品開発にも携わる。ヘアメイクによる「外見ケア」をライフワークとし、生活者に寄り添った役立つ美容情報の発信や医療用ウィッグの開発なども行っている。

資生堂みらい開発研究所で化粧ケアの心理社会的効果を研究する池山和幸さんも、化粧には外見上の悩みを「マイナスからゼロ」に近づけるだけでなく、さらにその先へ進むきっかけをつくる可能性があると指摘しています。

実際、外見の変化から友人にも会いたくないと感じていた人が、メイクをした自分の写真を友人に送ったことをきっかけに、再び会えるようになったケースもあったとのこと。

「化粧をすること」を個人の嗜好だけで考えると、こうした側面は見えにくいものですが、髪を整える、眉を描く、肌の変化をカバーする…それらの行為やもたらされる変化によって「人に会ってみよう」「外へ出よう」「仕事へ行こう」と思えるのであれば、美容は社会とのつながりを取り戻すための選択肢にもなりうるのです。

1950年代から続く資生堂のカバーメイク。その知見を社会へ

LAVENDER RINGのなかで資生堂が担っているのが、美容やアピアランスケアの専門性です。

アピアランスケアとは、がんやその治療によって起こる外見の変化に対し、患者さんの苦痛を和らげ、自分らしく過ごせるよう支えるケアのこと。抗がん剤による脱毛や、放射線治療による皮膚の変化、爪の色素沈着、手術痕などに対して、医学的なケアだけでなく、見た目を整えるための工夫や心理的・社会的なサポートも含めて支援することです。

資生堂には1950年代から積み重ねてきたカバーメイクの技術があり、現在は「ライフクオリティ ビューティーセンター」などを通して、あざや傷あと、がん治療による外見変化など、さまざまな肌の悩みに対するケアにも取り組んできました。

資生堂ヘアメイクアップアーティストの砂川恵子さんは「資生堂は、スキンケアからメイクアップまで幅広いラインアップを揃えており、性別を問わず、さまざまなお悩みに対応できる商品をご提案できることが強み。たとえば、治療によって肌がくすんだり、肌の色が変化したりした方には、カバー力が高く、色の選択肢も豊富なシリーズがあります。すべてを新しく揃える必要はなく、今お使いのアイテムにひとつプラスしていただくだけでも大丈夫です」と話します。

砂川恵子
資生堂ヘアメイクアップアーティストの砂川恵子さん。資生堂ブランドでは、INTEGRATE GRACY, Clé de Peau Beautéの商品開発やトレーニング担当を経て、“大人の七難すんなり解決”の「PRIOR」にブランド誕生時(2015年)から参画。エイジングを踏まえた、メイクアップ商品開発や、美容情報の研究、発信などに多く携わる。

LAVENDER RINGでは、そうした知見とヘアメイクアップアーティストの技術を生かし、メイクだけでなくウィッグを含めた外見ケアを提供しています。

けれど、目指しているのは「治療前の姿に戻す」ことだけではありません。

ヘアメイクアップアーティストの砂川恵子さんは、メイクを「悩みという“マイナス”をゼロに近づけ、健やかさや心地よさを自分自身でプラスにコントロールできるもの」と表現。そして、自分にとって心地よい状態を自ら探していく、そのプロセス自体が自信につながるのではないかと語ります。

「がんになっても人生は続く」。10年目から未来へ

活動10年目となった今年、新たに始まったのが「Dear Future Me ~未来の私へ~」です。

治療や将来への不安のなかで未来を思い描くことが難しくなった経験を持つサバイバーが、1年後、10年後の自分へ手紙を書き、ステージで朗読する企画。登壇者からは「診断されても人生は続く」「完璧じゃなくても、1歩近づいているだけで、自分は頑張っている」「私の人生の主役は、この私」といった言葉が語られました。

ラベンダーリング
ラベンダー

がんになった人を「患者」という一つの言葉だけで捉えるのではなく、その人には仕事があり、人間関係があり、好きな服や髪型があり、これから生きていく日常があるーー10年間にわたりLAVENDER RINGが映し出してきたたくさんの顔は、その当たり前の事実を社会に伝えてきたのかもしれません。

ヘアメイクは病気を治療するものではありません。それでも、鏡に映った自分を見て、人に会いたいと思うこと。自分の写真を誰かに見せたいと思うこと。そして「これから」を想像できること。

その一歩を支えることもまた、美容が社会のなかで果たせる役割のひとつなのです。

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画像提供:「MAKEUP&PHOTOS WITH SMILES 2026」 運営事務局

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