「ちゃんとやらなければ」「正しくしなければ」なぜ正しさに縛られてしまうのか|スキーマ療法の視点から紐解く
「ちゃんとやらなければ」「正しくしなければ」。その感覚は、どこから来ているのでしょうか。そして、その「正しさ」は、誰が決めたものなのでしょう。
「べき思考」とは何か
「もっとちゃんとしなければ」「こうするべきだった」。こうした思考は、心理学では「べき思考」と呼ばれます。〜すべき、〜でなければならない、という枠を自分や他者に当てはめ、そこからはみ出ることを許さない思考パターンです。
べき思考は、向上心や責任感とは少し違います。高い基準を持つこと自体は問題ではありませんが、べき思考には柔軟性がありません。基準に沿えない自分を強く責める、基準を満たさない他者に苛立つ、という方向に働きやすいです。
「べき思考」はスキーマから生まれる
スキーマ療法とは、認知行動療法をベースに、様々な理論や心理療法を統合した心理療法です。スキーマとは、子どもの頃の経験を通してできあがる、自分や他人や世界についての信念や価値観のことです。一度できると、大人になってからも物事の受け取り方や感じ方の土台として働き続けます。
べき思考の背景には、「厳密な基準(完璧主義)」と呼ばれるスキーマがあることがあります。例えば、子どもの頃に高い基準を求められる環境で育つと、「完璧にできて当然」「失敗は許されない」「常に正しくなければならない」という信念や価値観が形成されます。べき思考は、そのスキーマが日常の場面で表面に出てきたものとして理解できます。このスキーマを持つ人は、「正しくやれている自分」でなければ価値がないと感じやすく、基準を下げることや、曖昧さを許容することに強い抵抗を覚えます。疲れていても手を抜けない、完成度が低いと感じると公開できない、といった形で日常に影響が出ることもあります。
ペアレントモードの声
スキーマ療法では、そのときどきの感情や行動のパターンを「モード」という概念で整理します。その中のひとつが「ペアレントモード」です。子どもの頃に養育者等から向けられた言葉や態度から作られます。
ペアレントモードには複数の種類があります。そのうち「懲罰的ペアレントモード」や「要求的ペアレントモード」は、「そんなことではダメだ」「もっとちゃんとしなさい」「みんなはこうしている」という声として現れます。一見、自分の良心や常識のように感じられますが、その声は自分の内側から生まれたものではなく、かつて外から向けられたものです。「みんな」や「普通」「常識」という言葉を使って正しさを押しつけてくるとき、それはこのモードが動いているサインかもしれません。その声は自分を守るために取り込まれたものですが、大人になった今も同じように機能し続けているとは限りません。
「正しさ」の外に出る
「正解なんてない」と頭では分かっていても、「正しくしなければ」という思いを捨てきれない時があります。それはスキーマとペアレントモードが、長年かけて形成されたものだからです。知識として正解がないと理解しても、反応は簡単には変わりません。
まず、「正しくしなければ」という声が聞こえてきたとき、それが自分の本当の気持ちなのか、かつて外から向けられた誰かの声なのかを問いかけてみることが出発点になります。その声はいつ頃から聞こえているのか、誰の言葉に似ているのか。そうした問いが、とらわれを少しずつ緩めるきっかけになっていきます。正しさの基準を疑うことは、無責任になることではありません。自分にとって本当に大切なものが何かを、改めて問い直すことにつながっていきます。
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