ささいな音や言葉にすぐ身構えてしまう…過剰に働き続ける「脳の警戒システム」のゆるめ方〈心理師が教える〉
ドアが閉まる音や誰かの何気ないひと言で、まるでスイッチが入ったように身構えてしまう──それは、脳の警戒システムが過剰に働き続けているサインかもしれません。なぜそうなるのか、そしてどう向き合えばいいのかを見ていきます。
ドアが閉まる音や誰かの何気ない一言で、不安や警戒感が急に強まる。頭では「今は安全だ」とわかっているのに、体や感情がそれについてこない。こうした体験は、トラウマを経験した人に少なくありません。なぜそうなるのか、そしてどう向き合えばいいのかをご紹介します。
トラウマ後の脳で起きる変化
近年の研究から、トラウマ体験のあとには脳の働きにさまざまな変化が起こることがわかってきました。強い恐怖を伴う記憶が残りやすくなったり、危険を察知する仕組みが過敏になったり、脳全体が警戒状態に傾きやすくなることがあります。
なぜ警戒が続くのか
私たちの脳は、本来であれば危険が去ったと判断すると警戒を解除します。しかしトラウマ体験のあとには、この切り替えがうまく働かなくなることがあります。
その結果、危険ではない刺激にも反応しやすくなり、一度警戒状態に入ると、そこから抜け出しにくくなります。例えば、音や匂い、人の表情、声の調子などがきっかけとなって、過去の体験と結びついた反応が自動的に起こることがあります。この反応は意識的な判断よりも早く始まるため、「大丈夫だ」と考える前に体が緊張したり、不安が高まったりします。
安全な場所にいても落ち着かない。人とのやり取りで必要以上に身構えてしまう。夜になると過去の出来事が繰り返し思い出される。こうした体験の背景には、脳の警戒システムが過剰に働き続けていることが関係していると考えられています。
注意の向け方にも注目が集まっている
呼吸法やリラクゼーションは、心身の緊張を和らげるために広く用いられています。一方で、トラウマ反応には「注意が脅威に向き続ける」という側面もあります。そのため近年では、注意の向け方そのものに着目した取り組みも行われています。
反応が強まる前に切り替える
その一つの考え方が、嫌な記憶や強い警戒感が現れ始めた早い段階で、注意の向け先を切り替えるというものです。目の前にある物を観察したり、周囲の音に意識を向けたり、趣味や作業に集中したりすることが助けになる人もいます。人によっては、物語の世界や自然の風景、親しみを感じるキャラクターなどを思い浮かべる方法を用いることもあります。
方法はさまざまですが、共通しているのは、注意が脅威や過去の体験だけに向き続ける状態から離れ、別の対象にも向けられるようにすることです。
重要なのは、反応が強くなってから対処することだけではなく、「始まりかけていることに気づくこと」です。早い段階で注意の向け先を切り替えられるほど、その後の反応が長引きにくくなる可能性があります。
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