【未来へ手渡すプロダクト】女性たちが支え合うものにしたかった。セルフラブを伝えるkelluna.の描く未来〈後編〉
私たちの日常を支えてくれるモノは、一体どこからやってきて、どこへ向かうのでしょうか。「未来へ手渡すプロダクト」では、廃材や不要資源から新たな価値を生み出すアップサイクルのものづくりや、持続可能な循環を大切にする生産者の想いを紹介します。一つひとつのプロダクトに込められた理念やストーリーを通して、〝買う〟を単なる消費ではなく、次世代へ未来をつなぐ〝応援〟へ——。そんな想いから生まれた連載プロジェクトです。
今回お話を伺ったのは、スリランカの女性たちと一緒にフィットネスウェアを作るkelluna.の前川裕奈さん。スリランカの自然を彷彿とさせる明るさやポジティブな雰囲気をまとうフィットネスウェアには、日本の女性たちに届けたいメッセージが込められています。未来に向かっていく上で、何よりも大切な「セルフラブ(自分を愛する)」が生まれた背景とは。
私自身が「痩せるための運動」にとらわれていたから
ーースリランカで起業する際、フィットネスウェアにこだわって作られた理由はあったのでしょうか?
前川さん(以下 前川):もともと私自身がずっと運動をしていたのが大きな理由です。マラソンや筋トレ、トライアスロンなどをしてきました。……と言っても、以前の私は運動が大好きでやっていたのではなくて、「痩せなきゃ」「美しくならなきゃ」という脅迫的な部分が大きかったんです。
ーー世界的に見ても、日本では「痩せていることが美しい」とされていますよね。そういった固定観念に苦しめられている人も多いと思います。
前川:そうなんです。私自身も大学生くらいから無理なダイエットをするようになって、一時期は食事を摂らずに過度な運動をしたり、逆にジャンクフードなどを過剰摂取するなどの、摂食障害に陥りました。どれだけ痩せても自分を認められなかったですし、当時は運動してもつらいだけでした。さまざまな出会いがあって少しずつ自分のなかで変化があり、スリランカに行ってようやく抜け出せた感じがして。
ーーなぜ、スリランカで変化があったんでしょうか?
前川:ひとつは、物理的に日本の文化から離れたこと。日本ではテレビでも広告でも、友人との会話でも常に「痩せているほうが美しい」という価値観に触れていたように思いますが、スリランカではそういった言葉を浴びる機会が減りました。もちろんスリランカにはスリランカの美の基準がありますが、日本と全然違うので、自分の中にあった固定観念が崩れて行ったのを感じました。現地の女性たちと一緒にサリーという伝統衣装を着たときに、誰も体型などを気にせずに楽しそうに過ごしていたのも印象的でしたね。
そうやって私の鎧を脱がせてくれたスリランカの地から、以前の私のように苦しんでいる日本の女性たちへ、お守りになるようなフィットネスウェアを作りたいなと思ったんです。だからこそ、どれだけ生地が見つからなくても諦められなかった。私にとっては、フィットネスウェアという商材は譲れない部分だったんです。なぜなら、一度は痩せるためのタスクだったフィットネスが、マインドが変わるだけで楽しい趣味になり世界の見え方が変わるという実体験を持っていたから。
日本の女性たちが「セルフラブ」を思い出すきっかけになりたい
ーー実際に日本で発売して、お客さんの反応はいかがでしたか?
起業当時は、今ほど「セルフラブ」や「ウェルビーイング」という文脈で売り出しているブランドはありませんでした。お客さんにとっては新鮮な視点だったと思いますし、発売当初から多くの方がポップアップなどに足を運んでくれました。kelluna.との出会いをきっかけに「運動してみたい」「着るたびにセルフラブを思い出せる」と言ってくれる方もいて、とても嬉しいですね。
ーー少しずつ、セルフラブという言葉が広がってきた感じもあるのでしょうか。
前川:以前は、スリランカや環境問題への取り組みなどからブランドに興味を持つ人が多かったですが、最近はさらにコアなところにあるブランドの理念が伝わっているように感じます。ポップアップを開催すると、その場で何時間もお話してくれる方もいて、みなさんの居場所になれているのかな、と。お客さんだけでなく、販売を手伝ってくれているメンバー、販売先として連携してくれる百貨店の方々含め、コミュニティのようなものが出来上がりつつあるのは感じますね。
ーースリランカと日本の女性たちが、お互いに助け合うようなブランドだなと感じました。
前川:まさに、ブランドを立ち上げるときに「スリランカのかわいそうな女性たちを救う」という見せ方にはしたくないと思ったんです。商品を作っている人たちは、支援が必要な不幸な人たちじゃなくて、対等な関係。kelluna.は、スリランカと日本、両方の女性たちにとって必要なものにしたいなと考えていました。
「まだそんなこと言ってるの?」と言われる未来へ
ーー今後、kelluna.をどんなブランドにしていきたいですか?
前川:もう起業したその日からまったく変わっていなくて「お守りのような存在でありたい」とずっと思っています。 別にウェアを着て運動しなくてもいいんです。部屋着や日常で着てもらって、見るたびに私たちからの「セルフラブ」のメッセージを思い出してもらえたら、と思います。
一方で、kelluna.のような存在は“いなくなっちゃう”のが理想なのかな、と最近思うんです。「セルフラブ」や「ウェルビーイング」が当たり前になりすぎてリマインドすら必要のない社会になれば、わざわざ商品を通して伝える必要もなくなります。だから、永遠に続くブランドにしたい!という気持ちは、今は少なくなりました。
ーー前川さんは、いずれ「セルフラブが当たり前」という社会が来ると思いますか?
前川:少なくともkelluna.の商品を買ってくれている人は、私たちの「セルフラブ」というコアの部分に共感してくれている方々。そういうファンの方が増えているのは、希望が持てますね。とはいえ、日本全体で言えば、まだまだ数%です。もっと波紋のように広がっていくことで、いずれはそういう社会になったらいいなと思います。
今回(vol.4)の「未来へ手渡すプロダクト」は…
kelluna.「廃棄される布を救う、スリランカ発のフィットネスウェア」
デッドストックと呼ばれる、もう使われない布を利用して作られるフィットネスウェア。スリランカの女性たちの雇用を生むと同時に、ルッキズムや運動への向き合い方に悩む日本の女性たちに「セルフラブ」を伝えます。それぞれの国の女性たちが手を取り合って生み出される、毎日の自分に寄り添ってくれるプロダクトです。
7/21(火)ー28日(月) 西武渋谷店で期間限定ポップアップ開催(前川裕奈さん、全日在店)!
kelluna. https://www.kelluna.com/
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