【未来へ手渡すプロダクト】1枚のヨガマットから植木鉢、そしてその先へ。SATANAMA Labが描く循環の未来〈後編〉
私たちの日常を支えてくれるモノは、一体どこからやってきて、どこへ向かうのでしょうか。「未来へ手渡すプロダクト」では、廃材や不要資源から新たな価値を生み出すアップサイクルのものづくりや、持続可能な循環を大切にする生産者の想いを紹介します。一つひとつのプロダクトに込められた理念やストーリーを通して、“買う”を単なる消費ではなく、次世代へ未来をつなぐ“応援”へ——。そんな想いから生まれた連載プロジェクトです。
今回は、「ヨガマットに『捨てない』という選択を。」を掲げ、廃棄予定のヨガマットを回収して商品にする、SATANAMA LabのMaikoさんとMiyaさんにお話を伺いました。実はランニングよりも多いと言われている、ヨガ人口。マットは消耗品でありながら、ヨガに向き合う日々を支えてくれる相棒でもあります。後編のお話は、商品化の壁と、アップサイクルの活動からおふたりが見据える未来についてです。
やってみては挫折して、を繰り返した3年間
——前編では、SATANAMA Labの始まりであるヨガマットのアップサイクルのきっかけを伺いました。2021年に商品化されたサンダルが、初めてのプロダクトですね。
Miya:はい、クッション性もある素材がサンダルにいいのではないかというアイディアから、仲間と一緒に商品化しました。ただ、制作段階で想定以上の時間やコストがかかること、サンダルという消耗しやすい商品で高頻度でのメンテナンスが必要になることなどから、持続可能ではないと判断して、今は制作を見合わせている状態です。その後も、いろいろな商品を考えてみたものの、なかなか「これだ!」というものが見つからなくて……。
——例えば、どのような商品が候補にあったのでしょうか?
Miya:名刺入れやノートパソコンケース、コースターなど、いろいろ考えました。ただ、サンダルのときと同様に、「これ、いいんじゃないか?」と思ったものが、実際に作ってみると難しい、ということが何度もありましたね。例えば、マットの特性上、縫い合わせることが難しかったり、切り口がボロボロになりやすかったり。他にマットの加工事例もないので、やってみて初めて「これはできないんだ」とわかる、みたいな。そのあたりの条件は、サンダル制作時にかなり学びがありました。
ヨガマットのアップサイクルをしていると話すと、みなさんに「これも作れそう!」とアイディアをいただくのですが、頭の中で描いているものと、実際にやってみたときのギャップがすごくて。ずっと難しさを感じていました。
——それはヨガマットという素材ならではの難しさ、なんでしょうか。
Miya:それもありますし、アップサイクルならではの難しさもあります。例えば、名刺入れを作りたいと思っても、回収するヨガマットの厚みや素材が微妙に違うので、同じ型で作ると内側のサイズが変わってしまう、みたいなことが起こってしまって……。今後はマットの厚みや素材ごとに作る商品を変えることもできるのかもしれませんが、回収や制作工程が不安定なうちは難しかったです。
Maiko:見た目はよくても使っているうちに不具合が見つかったりしたよね。数々のトライアンドエラーの末に、ようやく素材の特性を生かすことができる今の形が見つかったんだなと、今振り返りながら改めて感じます。
——今のマルチポットの形は、どのようにして生まれたんですか?
Miya:実はこれ、レコードサイズにくり抜いたヨガマットをボタンで留めているんです。さまざまな形の型取りを試してもなかなかしっくりこなかったとき、ふと僕が使わなくなったレコードに合わせてカットして切り込みを入れてみたら「なんだか意外といいかも?」と(笑)。そこからレコードに沿ってハンドカットで切り出していましたね。
公私ともにお世話になっている、Afro&co.代表の山崎さんにこれを見てもらった時に、「とても良いですね!」という反応を頂いていて、このプロジェクトに以前から興味を持ってくれていたという経緯もあり彼がプロデューサーとして入ってくださったんです。
Maiko:この形に決まったのが、2024年の夏頃。Afro&co.と周りの協力があって2025年の1月にクラウドファンディングに挑戦したのをきっかけに、本格的にプロダクト化しました。

波紋のように小さく広がるためのアクションを
——3年以上にわたる試行錯誤のなかで、「もういいかな……」と思うことはなかったんですか?
Miya:それはね、正直あります(笑)。ただ、この活動は僕の性格には合っていたのかなと思うんですよね。ヨガを続けている理由にも通ずるんですが、ヨガって劇的に変化するものではなくて、良い日も、うまくいかない日もあって、でもちょっとずつ進んでいる実感がある。SATANAMA Labも似ていて、このブランドやアップサイクルの可能性を小さくもしっかりと感じられているから、きっと続けてこれたんだと思います。まだ諦めるところまではやりきっていない、という感じかな。
Maiko:私は、やったことないけどワクワクすることを追いかけたい、という気持ちが機動力になっているかな。スタジオ運営や「YOGA FOR EVERY BODY」の活動も同じで、誰も試したことがないけど、やってみたいという気持ちを大切にしたい。私たちには、時間や立場的にも、ヨガマットの商品化に取り組める条件が揃っていたから行動に移せた部分もありますしね。
——Maikoさんは普段から、「Take action(行動してみること)」を大切にしていると拝見しました。SATANAMA Lab.の商品はまさに行動して、トライアンドエラーを繰り返したからこそ生まれたものだなと感じます。
Maiko:私がそういう考え方になったのは海外での経験が大きいかもしれないですね。特に東日本大震災の翌日、ヨガスタジオの子がすぐに募金箱を始めてくれたとき、行動することの大切さを感じました。日常生活でも「何かしたい」と頭で考えていても、行動しなければ何も変わらない。けれど、一歩踏み出せば、それが波紋のように広がるんだって。
SATANAMA Labの活動も、正直たった1枚のヨガマットをアップサイクルしたからって世界が変わるわけではないんですけど、少しずつ広がっていくと思うんです。私たちの商品を見た人が、廃棄される物の行方について考えたり、アップサイクルという考え方を知ってくれたりしたら。そこから何かを「捨てずに使ってみようかな」と思って行動に移してくれたら。いずれは地球にとっていいことにつながる、種まきのような気持ちで活動しています。

ヨガマットの「捨てない選択肢」のひとつとして
——今年、改めて本格的にマルチポットを始めとした商品の制作と販売をスタートさせたとのことで、今後はどのように活動していきたいと考えていますか?
Miya:まだまだ改善できるところはあると思っています。まずは、ヨガマットを捨てようと思ったときに僕らの顔が浮かぶようになってほしい。作る工程では、今はまだハギレが出ているので、無駄なく100%アップサイクルできるようにしたいです。そして、作ったものを届けるというところも、なるべく多くの方に届けられたらいいなと思いますね。
Maiko:今後は、普段ヨガに触れることがない方にも手に取ってもらって、私たちのヨガやアップサイクルへの思いを届けられたらいいなと思います。10月から企業のロゴや名前を入れたノベルティ制作を始めたのも、ヨガ業界だけでなく多くの人にヨガマットをきっかけに環境問題やアップサイクルについて知ってほしいと思ったからです。
——「実はこれヨガマットだったんだ」というところから、会話が広がりそうですよね。
Maiko:そうなったら嬉しいです。最近は、ヨガスタジオで使っていたマットを回収して、周年記念のキーホルダーを制作しました。そういった循環をどんどん生み出していきたいですし、いずれは、ヨガマットを購入する段階で「捨てるときには別の商品になりますよ」と提案できるような仕組みもできたらいいなと考えています。
Miya:また、今後は愛着のある自分のヨガマットをSATANAMA Labの商品として購入できるサービスにも力を入れていく予定です。自分が手放したものが誰かの元へ行くことも素敵ですが、形を変えて自分の日常に戻ってくるのもまた嬉しいことだと思うので。
Maiko:SATANAMA Labの活動をしていると、ヨガをしている方は自身のマットを「ただ捨てたくない」と思う気持ちをよくわかっていただける実感があります。今でも、使わなくなったヨガマットをペットが使ったり、キッチンに敷いたりして活用している人が多い印象です。その選択肢のひとつに、SATANAMA Labがなれたらいいなと思っています。
——掲げられている「ヨガマットに『捨てない』という選択を。」という言葉のとおり、廃棄以外の選択肢をどんどん提供していくんですね。今後の商品展開も、楽しみにしています!本日はありがとうございました!
今回(vol.1)の「未来へ手渡すプロダクト」は…
SATANAMA Lab「ヨガマットの浸透性と通気性を活かした、植物がぐんぐん育つ”植木鉢”」
ヨガマットをアップサイクルして作られた、多用途で使えるアイテム。植木鉢としての利用はもとより、そのユニークな素材とデザインにより、鉢カバーや小物入れなど多様な用途で活躍します。
SATANAMA Lab https://satanama-lab.com/
ノベルティ制作に関するお問い合わせ https://satanama-lab.com/pages/contact
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