【未来へ手渡すプロダクト】ヨガマットが植木鉢に。SATANAMA Labが見つけたアップサイクルという選択〈前編〉

【未来へ手渡すプロダクト】ヨガマットが植木鉢に。SATANAMA Labが見つけたアップサイクルという選択〈前編〉

私たちの日常を支えてくれるモノは、一体どこからやってきて、どこへ向かうのでしょうか。「未来へ手渡すプロダクト」では、廃材や不要資源から新たな価値を生み出すアップサイクルのものづくりや、持続可能な循環を大切にする生産者の想いを紹介します。一つひとつのプロダクトに込められた理念やストーリーを通して、“買う”を単なる消費ではなく、次世代へ未来をつなぐ“応援”へ——。そんな想いから生まれた連載プロジェクトです。

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今回は、「ヨガマットに『捨てない』という選択を。」を掲げ、廃棄予定のヨガマットを回収して商品にする、SATANAMA LabのMaikoさんとMiyaさんにお話を伺いました。実はランニングよりも多いと言われている、ヨガ人口。マットは消耗品でありながら、ヨガに向き合う日々を支えてくれる相棒でもあります。前編では、おふたりのヨガに対する想いと、マットのアップサイクルを考え始めた背景をお伝えします。

miyaさん
画像提供/SATANAMA Lab

実は植木鉢にぴったりだった、ヨガマット素材

——本日はよろしくお願いします!まず最初に、SATANAMA Labの商品について教えていただけますか?

Miya:「マルチポット」というアイコン商品を筆頭に、今はバスケットやキーホルダー、ケーブルクリップなどを展開しています。すべて廃棄されるヨガマットをアップサイクル(※)なので、色合いや柄の出方などは一つひとつ違う一点物になっています。

※アップサイクル……廃棄されるはずの物にデザインやアイデアを加え、新たな付加価値を持たせることで別の商品として生まれ変わらせること。

——カラフルでかわいいですね。「マルチポット」は植木鉢としての使用例が多く出ていますが、なぜ植木鉢だったんでしょう?

Maiko:最初は「カラフルな植木鉢が並んでいたらかわいいな」という感じの発想だったのですが、考えるほどにヨガマットの特徴との相性がよかったんです。まず、ヨガマットは吸水性や通気性がとても高い素材でできていて、ある程度の保水性もあるためにじんわりと土や根っこに水分を与えることができます。根の成長にとってはやわらかな当たり心地も大切で、プラスチックの容器に比べて育ちがいいことがわかっています。

Miya:実際、神奈川県の老舗植木店・内田植木さんにご協力のもと栽培実験もしました。数ヶ月間、植物を育てていただき、やはり成長具合がよかったと報告をいただいてます。

Maiko:もうダメだと思っていた我が家の植物も、これに入れ替えて復活したんですよ。あとボタンを外すと開くことができるので、植え替え時も楽だという声をいただいてます。

miyaさん

——本当に植木鉢にぴったりですね。

Miya:そうなんです。ただ、ご購入いただいた方からは植木鉢以外の用途でのフィードバックもあって、興味深いです。直に植えるのではなく鉢カバーとして着せ替えを楽しんだり、小物入れとして出張に持って行ったり。柔らかいので、お子さんのおもちゃ入れにしているという話も聞きます。

Maiko:マルチポットやバスケットは組み立て式なので収納しやすいし、出張やキャンプに持っていきやすいんですよね。緩衝材やクッションのように使ったり、組み立てて物を入れたり、みなさん思い思いの使い方をしてくださっています。

植木鉢
画像提供/SATANAMA Lab

「幸せの素」をEVERY BODYに伝えたい

——SATANAMA Labを始める前から、おふたりは一緒に活動してきたと伺いました。どのような出会いから始まったのですか?

Maiko:私はもともとカナダでヨガ講師になるための勉強をして、現地のスタジオに在籍しながら活動していました。2012年に帰国してから、日本でも活動の幅を広げているときにMiyaちゃんに出会ったんです。

Miya:あるイベントでMaikoさんがレッスンしているのを見て「楽しそうだなあ」と思ったんですよね。僕自身はヨガに興味はあったけれど、なんとなくストイックなものというイメージが強かったので手を出せていなくて……Maikoさんのヨガを見て「こんなに楽しい感じでできるものなんだ!」と、すごく印象的でした。

Maiko:楽しいんですよ、私のクラス(笑)

Miya:そんな中で、僕が2013年に「ブライトン スタジオ 代官山」という場所を作ったのをきっかけに、何かご一緒できることがあればと声をかけたのが最初ですね。

——最初は、スタジオオーナーと外部のヨガ講師という関係から始まったんですね。

Miya:もともとヨガに興味があったので、そこから僕もMaikoさんにヨガを教えてもらい始めて……お話しするなかで気が合って、一緒にスタジオの運営をするようになりました。

Maiko:今はスタジオの運営に加えて、「YOGA FOR EVERY BODY」という活動を一緒にやっています。MiyaちゃんがDJやダンサーをしている関係で「音楽とヨガ」というイベントをしてみたり、音楽フェスのなかで朝ヨガの時間を担当させて頂いたり、とってもおもしろいんですよ。

——フェスで朝ヨガ!それは新鮮な体験になりそうです。「YOGA FOR EVERY BODY」の活動は、なぜ始めたのですか?

Maiko:私が活動していたカナダは、とてもヨガ人口が多いんですね。在籍していたスタジオでも、子どもから杖をついているおじいちゃんまで、みんな一緒のクラスでヨガをするような感じでした。だから、日本に帰ってきたときに、ヨガが「健康な若い女性がやるもの」という空気感がもったいないなと思ったんです。実際に生徒さんから「友達がヨガに興味があるけれど、男性だから入りづらそう」という声も聞いていましたし。すべての人が、自分に合ったヨガができたらいいのにって。

フェスでの朝ヨガは、みんな普通にフェスに来る格好のままでヨガを体験してもらいます。普段はスタジオに来ないような人たちでも、やっぱり「気持ちがいい」と言って楽しんでくれる。そういう、年齢も性別も関係なく、誰でもできるのがヨガなんだってことを伝えていくプロジェクトだと思ってます。

——そこまで「もっと多くの人にヨガを届けたい」と思うほどの、ヨガの魅力って何なんでしょう?

Maiko:私は、ヨガを「幸せの素」だと思っているかな。単純に「気持ちよかった」と思えたら幸せだし、身体を動かして元気になったりよく眠れたり、日常が少し良くなる。そうやってリラックスしたら、機嫌良く過ごせるじゃないですか。その機嫌の良さって、家族や周りの人にも連鎖していくものだなと思うんです。みんなが幸せに、優しくなっていくものだから、ヨガやろうよって。

倉田さん

思い出深いヨガマットを捨てられない経験から

——ヨガを広めていく活動をするなかで、ヨガマットのアップサイクルを考え始めたのは、なにかきっかけがあったのでしょうか?

Maiko:最初は、自分のヨガマットに穴が空いてしまったときに、ただ捨てることに抵抗があったんですよね。ヨガをする方はわかってくれると思うんですが、一生懸命練習していた時期に使っていたヨガマットは思い出深いもの。私はカナダという海外で1人でがんばっていた頃のマットを簡単には捨てることができなかったんです。穴が空いた部分以外はまだきれいだったこともあり、タグ部分だけを切り取ってキーホルダーにしていました。

Miya:僕は、スタジオでのマットの入れ替え時期にいつも「もったいないな」と思っていたというスタジオ運営側の視点がありました。個人使用と違って、1日に何度も使われるスタジオのマットは消耗も早いですし、大きなスタジオだったらどれだけ廃棄されているんだろうか、と。

——きっとヨガマットを捨てたことがある人は、みなさん「もったいない」という気持ちを持ったことがあると思うのですが、そこから実際にアップサイクル商品を作ろうと行動に移すハードルが高いのかなと思います。

Miya:僕らもコロナ禍で、個人やスタジオの仕事を止めざるを得なくなり、時間ができたことが大きいです。ずっと手をつけられていなかったけれど、今ならできるんじゃないか、と。プロダクトデザイナーをしている友人に話を持ちかけてみたところ、「もともと足で踏んでいたものだし、サンダルがいいんじゃないか?」とアイディアをもらって、作り始めたのが2021年頃です。

——もともと、環境問題などにも関心がありましたか?

Maiko:私はヨガを始める前から環境学を勉強したかった時期があって、地球や環境のことを考えたいなと思っていました。ヨガを学び始めて、よりその思いが自分に浸透していったというか……。ヨガって、単純にマットの上でポーズすることではなくて、“在り方”なんですよね。「Do Yoga」というより「Be Yoga」なんです。その哲学のなかで、地球や周りに優しくあること、自分にできることをやろう、というメッセージは受け取り続けていたように思います。

Miya:「YOGA FOR EVERY BODY」で作ってきたグッズも、マイボトルやマイ箸、手ぬぐいなどの環境への配慮のきっかけになるようなものを意識していました。一番身近なヨガマットに関しても、捨てるだけでなくて何かに活用できないか、ということはずっと考えていましたね。最近では、天然ゴムなどの土に還ることまで考えられた商品や、回収してリサイクルする企業も出てきました。ただ、コストや手間を考えると、大きく広がりを見せるものではないのかなと……。

Maiko:ヨガを続けていくうちに「もっと滑りにくいもので練習したい」などと買い換えることも多いので、きれいな状態で捨てられてしまうマットもあります。私たちが提供いただくヨガマットもきれいなものが多いですし、もったいないですよね。リサイクルする場合もエネルギーを使いますし、素材を活かしてアップサイクルできるのが私たちとしても心地よいと思って、活動しています。

倉田先生

ヨガマットのアップサイクルに動き出した、SATANAMA Labのおふたり。後編では、商品完成までの道のりと、プロダクトを通して目指す未来について伺います。→記事はこちらから。

今回(vol.1)の「未来へ手渡すプロダクト」は…

SATANAMA Lab「ヨガマットの浸透性と通気性を活かした、植物がぐんぐん育つ”植木鉢”」

ヨガマットをアップサイクルして作られた、多用途で使えるアイテム。植木鉢としての利用はもとより、そのユニークな素材とデザインにより、鉢カバーや小物入れなど多様な用途で活躍します。

SATANAMA Lab https://satanama-lab.com/
ノベルティ制作に関するお問い合わせ  https://satanama-lab.com/pages/contact

植木鉢
画像提供/SATANAMA Lab
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撮影/山田健司
イラスト/藤原琴美

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