【未来へ手渡すプロダクト】おやさいクレヨンから広がる選択肢。mizuiroが目指すアップサイクルの未来〈後編〉

【未来へ手渡すプロダクト】おやさいクレヨンから広がる選択肢。mizuiroが目指すアップサイクルの未来〈後編〉
林ゆり
林ゆり
2025-12-20

私たちの日常を支えてくれるモノは、一体どこからやってきて、どこへ向かうのでしょうか。「未来へ手渡すプロダクト」では、廃材や不要資源から新たな価値を生み出すアップサイクルのものづくりや、持続可能な循環を大切にする生産者の想いを紹介します。一つひとつのプロダクトに込められた理念やストーリーを通して、“買う”を単なる消費ではなく、次世代へ未来をつなぐ“応援”へ——。そんな想いから生まれた連載プロジェクトです。

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今回は、まだまだおいしく食べることができるのに、規格外などの理由から廃棄される野菜や果物を活用し、子どもたちに安心して使ってもらえる「クレヨン」を開発したmizuiro株式会社の代表の木村尚子さんにお話をうかがいました。後編では、クレヨンだけにとどまらず、新たなアップサイクルアイテムを開発し続ける展望に迫ります。

おやさいクレヨン
画像提供/mizuziro

起業したきっかけは家族との時間を大切にするため

――前編では「おやさいクレヨン」誕生についてうかがいましたが、会社を辞めて起業に踏み切るというのは、なかなかハードルが高いと思いますが、なにかきっかけがあったのですか?

木村尚子さん(以下 木村):実は、「おやさいクレヨン」ができて、会社を辞めたわけではないんです。子どもが小学生になって、学童保育に入ったんですが、それまでの保育園と違って、早い時間に帰ってくるんです。青森だと、午後6時には真っ暗ですし、冬は、雪が積もる中、一人で帰ってきて、私が帰るまでお留守番をしなければなりません。そこで、私の仕事がグラフィックデザイナーだったこともあり、フリーランスになって、自宅で仕事をすることにしました。そうすると、子どもが帰ってきたときに、おかえりと迎えられます。自分で営業して、仕事をしていた中で、「おやさいクレヨン」を作り始めたので、起業しようと思っていたわけではなかったんです。子どもに会えるように、生活のしやすさを考えた結果が、今につながりました。

木村尚子さん

――お子さまとの時間を大切にしたから生まれた会社でもあるのですね。「おやさいクレヨン」からスタートし、「おやさいねんど」など新しい商品もたくさん展開されていますね。

木村:クレヨンと違って、こちらは、作品として残して楽しめるようにと考えました。いろいろな色を組み合わせて使える10色セットで、野菜本来のやさしい色合いにしています。軽量粘土を使っているので、とても軽いです。乾燥すると硬くなるので、作品として残したり、子どもが作ったものを、おじいちゃんやおばあちゃんへのプレゼントにしたりするのもおすすめですよ。

――作品として長く残せるのはうれしいですね。作品を作るときに、野菜や果物の形や色などの話もできますし、親子の時間が楽しくなりそうです。

木村:親子の時間をデザインできればと考えているんです。クレヨンや粘土は、子どもから使うもので、普通に遊びながら環境や循環の気づきになればいいなと思っています。また、野菜や果物からできていることで、食べ残さないという意識を持ってもらいたいです。

おやさいねんど
画像提供/mizuziro

――そのひとつが、多くの企業とのコラボにもつながるのでしょうか?

木村:アップサイクルをする会社として知られるようになって、その思いに賛同してくれた企業さまからお声がけいただいています。例えば、食品メーカー様とのコラボの場合、加工の過程で生じる原料の一部を活用して、クレヨンを開発しました。このように、新たなクレヨンを開発することもありますし、オリジナルのクレヨンの色で、パッケージだけを変更してノベルティにしたいというお話も多くあります。

循環の気づきになることを目指して

――業界も様々ということは、環境負荷を低減することに着目する企業が増えたということでしょうね。

木村:そうだと思います。アップサイクルというところに興味をもって、企業様にお声がけをいただいています。現在は、社会の新規格をデザインすることを目指しています。グラフィックやパッケージデザインからスタートして、目に見えるものをデザインしていたのですが、今は、企業様とのコラボレーション含めて概念をデザインしたいと考えています。

――名刺の紙もそうですが、スケッチブックもあるのですね。

木村:青森県産りんごジュースの搾りかすや、和歌山県産有田みかんジュースの残渣の皮を20%古紙に配合したスケッチブックです。1ページごとに質感が異なるのも特徴で、ほんのりと色もついています。180度しっかり開き、お絵かきはもちろんですが、大人の方も紙質を楽しみながら使っていただけると思います。

――今後もアイテムが増えそうですが、新たに考えているプロダクトアイデアはありますか?

木村:今は、野菜や果物、お花などからプロダクトを使っていますが、今後のアップサイクルの可能性として、繊維や木材なども考えています。アップサイクルという意味で、まだ決まってはいないのですが、その規模になると企業とのタイアップでやっていきたいと思っています。そのほかプラスチックでも、なにかできないかと考えています。ホテルの歯ブラシなど、1回使っただけで捨てられるプラスチックは、多いですからね。

――まだまだ、再利用できる素材はありそうですね。社会の新規格をデザインしていくと先ほど伺いましたが、アップサイクルのほかにも取り組んでいることはありますか?

木村:クレヨンなどのセットアップを就労支援施設で行ってもらっています。支援にもつながりますし、一緒に頑張っていければいいなと思っています。今の社会では、男性だからとか女性だからとかいうことはなくなってきてはいますが、女性が担っている部分って、まだまだ多いですよね。ですので、頑張っている女性を応援できるような取り組みをしたいですし、シングルマザーの人達の支援もしていきたいと考えています。

――廃棄予定の野菜や果物のアップサイクルから生まれたクレヨンを起点に、親子のコミュニケーションや環境への気づきを広げている取り組み。同じ視点から、これからも魅力的な新しいプロダクトが生まれていきそうですね。今後の展開も、楽しみにしています!本日はありがとうございました!

今回(vol.2)の「未来へ手渡すプロダクト」は…

mizuiro「規格外など廃棄される野菜とお米から生まれた、おやさいクレヨン」

形や大きさの違いなどを理由に廃棄されてしまう野菜や果物、お米の副産物を活用して作られたクレヨン。 実際の野菜や果物の粉末を使い、子どもが安心して使える素材にこだわって作られています。描くことを楽しみながら、食や環境、循環について自然と考えるきっかけを生み出す優しさの詰まったプロダクトです。

mizuiro  https://mizuiroinc.com/
おやさいクレヨン公式オンラインショップ  https://shop.mizuiroinc.com/

おやさいクレヨン
画像提供/mizuziro
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イラスト/藤原琴美

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木村尚子さん
おやさいねんど
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