【未来へ手渡すプロダクト】スリランカの女性たちと、未来へ歩む。kelluna.がブランド立ち上げで見つけた覚悟〈前編〉

【未来へ手渡すプロダクト】スリランカの女性たちと、未来へ歩む。kelluna.がブランド立ち上げで見つけた覚悟〈前編〉

私たちの日常を支えてくれるモノは、一体どこからやってきて、どこへ向かうのでしょうか。「未来へ手渡すプロダクト」では、廃材や不要資源から新たな価値を生み出すアップサイクルのものづくりや、持続可能な循環を大切にする生産者の想いを紹介します。一つひとつのプロダクトに込められた理念やストーリーを通して、〝買う〟を単なる消費ではなく、次世代へ未来をつなぐ〝応援〟へ——。そんな想いから生まれた連載プロジェクトです。

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今回は、スリランカの女性たちと一緒にフィットネスウェアを作る、kelluna.の前川裕奈さんにお話を伺いました。見ているだけで気分が上がるカラフルなウェアは、実はどれも使い道のなかった「デッドストック(※)」を使ったもの。前川さんが異国の地で奔走して作り上げた、ブランドの誕生のストーリーをお伝えします。

※デッドストック……大手メーカーなどが使用せずに倉庫に長期間保管されたままの「売れ残り品」や「未使用の在庫品」のこと。多くの場合は、そのまま廃棄となってしまう。

スリランカという国に出会い、生まれたブランド

ーー最初に、kelluna.について教えてください。

前川さん(以下 前川):「Beauty comes from self-love(美とは、自分を受け入れ愛すること)」というコンセプトで、フィットネスウェアを中心に展開しています。商品は基本的にすべてスリランカの工房で、起業当初から雇用している13人の女性と一緒に作っています。商品名もスリランカの海や自然をヒントに、彼女たちと一緒に名付けたりもしているんですよ。

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ーーそもそも、なぜスリランカで起業を?

前川:もともとは国際協力機構(JICA)の職員として派遣されたのが、スリランカという国との最初の出会いです。異国の地で大変なこともありましたが、明るく朗らかな人々や文化に惹かれて、もっと現地に根づきたいという思いが強くなって……。内戦が続いていたスリランカで、紛争被害にあった方々のサポートをする仕事に転職しました。

ーーより深く、スリランカの人々や暮らしに近づいていったんですね。

前川:はい、紛争被害を受けた方々に出会うなかで、特に女性たちが苦しい生活を強いられていることを目の当たりにしました。夫も息子も亡くし、仕事もなく、どうやってお金を稼げばいいかさえわからない状態。私自身はその頃からフィットネスウェアのブランドを立ち上げたいという思いがあったので、現状を知って、縫製などをスリランカの女性に依頼しようと決めたんです。

新たなゴミを生み出さない方法を探し続けたい

ーースリランカでの起業で、大変だったことはありますか?

前川:人集めと生地集めですね。最初に求人募集をしたところ、内容はともかく「日本人と働きたい」という人が殺到してしまいました。私としては、ブランドの理念や目的に共感してくれる女性たちと出会いたかったので、最初に意気投合したある女性を通して、今働いてくれている人たちを紹介してもらいましたね。

ーー生地集めのほうは……?

前川:とにかく商品が作れなければ起業できないので、人集めと並行して、起業する1年前から生地を探し始めました。スリランカには大手アパレルメーカーの工場などもあるため、布自体はたくさんあるんです。ただ、そのなかでフィットネスウェアにぴったりの伸縮性のある生地を探すのが、本当に大変でした。

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ーーkelluna.のフィットネスウェアの素材は、デッドストックを使っているんですよね。もともと、そういった生地に絞って探していたのですか?

※デッドストック……大手メーカーなどが使用せずに倉庫に長期間保管されたままの「売れ残り品」や「未使用の在庫品」のこと。多くの場合は、そのまま廃棄となってしまう。

前川:いえ、最初は偶然の出会いだったんです。山積みになった布の山を見せられて「これはアパレルブランドがもう使わなくなって廃棄される布だよ」と。それを見たときに、JICA勤務中に見たゴミ山のことを思い出しました。スリランカには焼却機がないので、ゴミはどんどん山になっていくんですね。実際、それが崩れて近隣の人々が被害にあうこともありました。国際協力の仕事を通してゴミがスリランカの人々を傷つけるのを知っているのに、私の商品が新たなゴミを出すことは耐えられない。そう思って、デッドストックの中から布を探すことに決めました。

ーーただでさえ、フィットネスウェア用の布を探すのは大変だったのに……。

前川:そうなんです。デッドストックを再利用していると言うと「余っている布を使っているから楽」と思われがちなんですが、新規仕入れするより何倍も大変だと思います。今でも年に4回ほどスリランカに行くのは、デッドストックの山の中から布を探し出すため。暑い店内で汗だくになりながら、重たい布のロールをかき分けるのは重労働です。それでも、ここはこだわって探し続けたいと思います。

一方で、デッドストックを使っているからこそ、一期一会の商品ができあがります。kelluna.の商品は、布がなくなってしまったらもう同じものは作れません。そのときの自分に合う、着ていると気持ちがあがる商品と出会ってもらえたら嬉しいですね。

ーーそのほかにも、環境問題などへの取り組みは行なっていますか?

前川:2021年に発売したINSPIREシリーズは、デッドストックではなく海洋ゴミをリサイクルしたオリジナル生地で作っています。海に囲まれた島国だからこそ、海洋ゴミの問題にも取り組んでいけたらいいな、と。また、商品をお渡しする際の包装紙は、スリランカの名産である紅茶のティーバッグをリサイクルしたものです。できる限り、スリランカを知ってもらい、環境にも配慮した優しいブランドを目指しています。

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画像提供/kelluna.

責任を持って、今あるつながりとともに生きていく

ーー起業して7年、ブランドを始めてから変わったことはありますか?

前川:この7年、スリランカでは本当にいろんなことがありました。政治的な衝突や無差別テロなど、国内情勢が不安定な中で続けるのはしんどい時期もありましたね。特に私はスリランカに家族がいるわけでもないので、本当に単身で乗り込んでいる状態。最初はメンバーも、私のことを「いつスリランカを出て行ってもおかしくない」と疑心暗鬼だったと思いますが、いろいろな状況を一緒に乗り越えてきて、今は信頼してくれていると感じています。

ーーもともとスリランカの女性たちに仕事や自立を、という思いがあったと思います。なにか手応えはありますか?

前川:一番大きな変化としては、スリランカチームのリーダーである女性が離婚したことです。スリランカでは離婚自体がとても珍しく、特に女性から前向きに離婚を切り出すのは本当に大変だったはず。彼女から「kelluna.という居場所と、自立できる仕事があったからこそ行動できた」と聞いたときは、ブランドをやってきてよかったと心から思いました。他の女性たちも、この7年で少しずつ意識が変わってきているのを感じます。

ーーまさに、人生の基盤として彼女たちを支えているんですね。今後、スリランカではどのような活動をしていく予定ですか?

前川:もともとはスリランカでもっと人を雇って、工房も増やして、……と考えていたんですが。今は、スリランカにいる彼女たちと一緒に歩んでいきたい気持ちが強いです。今関わってくれている人たちを、責任持って大切にして生きていく。その重みを覚悟したら、これ以上は人数増やせないなって思っています。

スリランカの太陽を浴び、女性たちの手で作られたkelluna.のウェアは、海を渡り日本へ。後編では、前川さんがブランドを通して日本の女性たちに届けたいメッセージを伺っていきます。→記事はこちらから。

今回(vol.4)の「未来へ手渡すプロダクト」は…

kelluna.「廃棄される布を救う、スリランカ発のフィットネスウェア」

デッドストックと呼ばれる、もう使われない布を利用して作られるフィットネスウェア。スリランカの女性たちの雇用を生むと同時に、ルッキズムや運動への向き合い方に悩む日本の女性たちに「セルフラブ」を伝えます。それぞれの国の女性たちが手を取り合って生み出される、毎日の自分に寄り添ってくれるプロダクトです。

7/21(火)ー28日(月) 西武渋谷店で期間限定ポップアップ開催(前川裕奈さん、全日在店)!

 kelluna. https://www.kelluna.com/

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画像提供/kelluna.

 

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撮影/Poko
イラスト/藤原琴美

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