「親に優しくできない自分」が苦しい…介護ストレスの本音と自分を苦しさから解放するヒント|臨床心理士が解説

「親に優しくできない自分」が苦しい…介護ストレスの本音と自分を苦しさから解放するヒント|臨床心理士が解説
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佐藤セイ
佐藤セイ
2026-04-13

「相手は高齢者なのだから優しくしなければ」「介護者が安定していないと被介護者(介護される人)を不安にさせてしまう」そう分かっているのに、ついイライラしてしまう。そんな経験はありませんか。介護の現場では、「優しくできない自分」に苦しむ人は少なくありません。そこで今回は、介護が優しさを奪ってしまう背景と、心の余裕を取り戻すためのヒントについて考えます。

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介護ストレスの現実

介護ストレスはなぜ生じる?

介護によるストレスで余裕を失い、優しくできない状態に陥る背景には、以下のような要因が考えられます。

■過去を知っている「家族」だから

要因の一つは、「家族」であることです。介護者と被介護者が家族関係にある場合、「昔はしっかりしていたのに」と過去と現在を比較し、寂しさや戸惑いを感じやすくなります。一方で被介護者も、「何もできない子どものように扱われたくない!」という思いから反発することがあります。

こうした感情のぶつかり合いは、関係が近いからこそ強まりやすいのです。

■介護者が背負う多様な役割

「介護だけしていればOK」という環境にいる介護者は稀です。

介護のほかに、仕事や家事、子育てなど、様々な役割を背負っています。時には「仕事と介護どちらを優先すべきか」といった葛藤を抱え、思うように役割を果たせない自分を責めてしまうこともあります。このような役割の重なりは、大きなストレス要因となります。

■社会通念の変化

かつての日本では、「介護は家族が担うもの」といった価値観が一般的でしたが、現代では介護のあり方は多様化し、必ずしも家族だけで担うものではなくなっています。

一方で、施設の不足や経済的な事情から、家族が介護を担わざるを得ないケースも多く、「どうして自分だけが」「押し付けられた」といった不公平感が強まり、介護への負担感が大きくなることがあります。

■いつ終わるかわからない

介護は「いつ終わるのか」という見通しを持ちづらく、長期間にわたって続くことがあります。そのため、「やり遂げた」という達成感を得にくい特徴があります。

また、どれだけ尽力しても状況の改善が実感しにくく、「ちゃんとできている」という感覚(自己効力感)も持ちにくくなります。その結果、ネガティブな感情にとらわれやすくなってしまうのです。

介護
イラスト/Adobe Stock

介護ストレスによる「優しさ」への影響

介護によるストレスは、心身両面に影響を与えます。

心の面:イライラ、孤独感、罪悪感などのネガティブな感情
身体の面:疲労の蓄積や睡眠の質の低下

また、「被介護者に心配をかけたくない」「介護者はいつでも穏やかでいなければ」という思いから、1人でつらさを抱え込み、周囲から負担や苦しみが見えにくくなり、ストレスがさらに強まることがあります。

実際に、令和7年の調査(※)では、介護者の87%が「不安や負担を感じている」と回答し、そのうち約1割が「心身の限界を感じた」と答えています。

このように、ストレスで心身の余裕を失うと、優しくすることはとても難しくなります。

自分を解放するヒント

「優しくする」ためには、ストレスで失われた心身の「余裕」を取り戻す必要があります。

感情を上手に吐き出す

ネガティブな感情を抑え込むためには、多くのエネルギーが必要ですし、限界が来ると爆発するリスクもあります。

感情は上手に吐き出して溜め込まないのがおすすめ。ノート等にネガティブな感情を書き出してしまいましょう。可能であれば、書き殴った紙を丸めて捨てたり、燃やしたりすると、少しすっきりします。

「介護者」ではない時間をつくる

介護者として責任感が強いほど、被介護者は丁寧にケアする一方で、自分のことは後回しにしがち。時には介護者としてだけではなく、一人の人間として自分をケアする時間を持つことが、心身の健康を守るためには重要です。

具体的には、次のような工夫が考えられます。

・趣味や好きなことに取り組む時間を1日30分でも確保する

・家族や友人に介護の一部を任せ、自分だけの自由時間を作る

・散歩や入浴など、身体を休める習慣を意識的に取り入れる

こうした「介護者ではない自分の時間」を持つことで、ストレスを軽減し、気持ちをリセットすることができます。

負担を分散する

負担が重すぎる場合、複数人で負担を分散することも大切です。家族はもちろん、地域の介護サービスや行政の支援も活用できます。例えば、以下の方法があります。

家族内での分担:食事の準備や買い物、入浴介助など、できる範囲で役割を分ける

介護サービスの利用:デイサービス、訪問介護、ショートステイなどを活用し、休息時間を確保する

地域の支援:民間の配食サービスや、地域ボランティア制度を利用する

介護を一人で抱え込まず、頼れる人やサービスを上手に利用することで、心身への負担を減らし、長期的に介護を続けやすくなります。

まとめ

介護の中で「優しくできない自分」を責めてしまうことは自然な反応です。しかし大切なのは、自分を守る工夫を少しずつ取り入れることです。

休息を取り、周囲の力を借りながら心の余裕を育てていくことは、結果として被介護者にとっての安心感にもつながります。

無理をしすぎず、できることから一歩ずつ取り入れていくことが、長く介護と向き合うための鍵となるでしょう。

参考文献

一般社団法人徳洲会「介護者の約3割は介護うつを経験⁉︎︎介護がこころの健康に与える影響を徹底調査【2025年版】」

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