感情をぶつけてしまう自分を卒業する。「心の知能指数=EQ」で紐解く、大切な人と心地よい関係を築くためのヒント
「パートナーの些細な行動にイライラ」「恋人なのに本音を言えない」――。家族、恋人、親戚、親しい相手との人間関係には悩みが尽きないもの。その悩みに「EQ(心の知能指数)」という考え方が役立つかもしれません。この記事では、台湾で普及しているEQについて現地のリアルな様子をまとめた書籍『心を守りチーム力を高める EQリーダーシップ』を執筆した、台湾在住のノンフィクションライター近藤弥生子さんにお話を伺いました。実は彼女も、かつて自身のEQの低さに悩んだ一人。あなたも、親しい相手とのトラブルを解決するヒントになるかもしれないEQの考え方に触れてみませんか?
EQ=心の知能指数?
ーーーEQとはどのようなものでしょうか?
近藤さん:EQとはエモーショナルクオティエントの略で「心の知能指数」を指します。基礎となるのが、エンパシー(相手の立場から物事を見る)という考え方。日本では「IQ」という言葉に馴染みがある方が多いと思いますが、「EQ」はこれに対応する言葉として生まれました。
IQとEQの違い
IQ
先天的な能力とされている
知能指数として測定可能
EQ
後天的な能力とされている
心の知能指数であり、測定不可能
台湾でEQが広まったきっかけとして、1995年にアメリカの心理学者、ダニエル・ゴールマンさんが提唱したエモーショナルインテリジェンスという概念があります。彼が執筆した書籍はまずアメリカで出版され、後に台湾で教育本、日本ではビジネス本として出版されました。この翻訳本が台湾で出版される際、出版元ではエモーショナルインテリジェンスの頭文字をとった「EI」よりも、現地では「EQ(Emotional Quotient)」のほうがピンとくるのでは?という議論がありました。台湾にはすでに「IQ」という知能指数を示す言葉があったので、これに対応する概念として「EQ」という造語を作るほうが多くの人に受け入れられやすいと考えたのだそうです。
こうして、台湾で翻訳本が出版されるとベストセラーになり、人口が日本の5分の1ほどの台湾で累計550,000部を販売。今では、EQという言葉が台湾で日常的に使用されています。そこで、EQの概念が台湾でここまで広まっているのはなぜ?という疑問を紐解いたのが本書『心を守りチーム力を高める EQリーダーシップ』なんです。
家族やパートナーとの関係に悩んだら
ーーー親しい相手(家族や恋人)との人間関係において、EQの考え方は必要なのでしょうか?
近藤さん:親しい人との人間関係の悩みは、周囲から一番相談を受ける機会が多いですし、自分自身もよく直面するテーマ。わたし自身、比較的距離が遠い人に対しては礼儀をもって接することができるのに、身近な人であるほど甘えが出てきてしまい、次第に感情を直接ぶつけてしまうのですが、そういう方は意外と多いようです。親しい人間関係こそ大切にするべきなのは、きっとみんな頭では分かっているはず。なのにそれができないから、こんなにも悩んでいる人で溢れているわけですよね。台湾人とEQについての対話をたくさん重ねてきて、わたしが今感じているのは、まずは自分自身を幸せにすることを優先すべきということ。その上で、他の人にも優しくできるように意識する。言葉で説明するのは簡単ですが、具体的な実践に落とし込むためには丁寧に自分と向き合うことが必要になってきます。
では、自分はどのような状態を幸せと感じられるのだろうかと自問自答した時に、身近なパートナーや子ども、家族や親戚とのトラブルが少なく関係性が安定しているという答えに辿り着いたんです。だからこそ、親しい人との人間関係をより心地いいものにするために、日々の生活の中でEQの考え方を実践するのが大事だという答えにたどり着きました。
夫婦喧嘩をヒートアップさせないために
ーーーでは、近藤さんの周りでEQが高いと感じる人物はいらっしゃいますか?
近藤さん:一番身近な人物として挙げられるのは、台湾人のパートナーですかね。彼は感情を急に爆発させることがないし、夫婦喧嘩になっても、いつも彼の立場ではなくわたしの立場から物事を見てくれます。例えば、まずわたしが自分の考えや感情を相手にぶつけるとします。その場合、よくある夫婦喧嘩だと、向こうからも同じ熱量で感情をぶつけてきて、徐々にヒートアップしていくと思うんです。ところが彼と喧嘩してもそのような言い方で返してこないんです。
具体的には「あなたがそんな風に思っているのは分かるけれど、この状況の中で、正解はそれしかないのかな?」といった具合に問いかけられるんです。そのような理性的な伝え方をされると、こちらも違う角度から問題を捉えられる気がします。かと言って彼は自分の意見を飲み込むわけではなく、伝えるべきことは言葉にして伝えてきますし、その伝え方も人間として成熟していると感じます。彼の様子を観察しながら、EQの高いコミュニケーションを日々学んでいます。
プロフィール:近藤弥生子さん
オードリー・タンから教育、カルチャー、社会など、生活者目線で取材し続ける在台15年目のライター。プライベートでは台湾での妊娠・出産、離婚、6年間のシングルマザー生活を経て、台湾人と再婚、次男を出産。現在二児の母。主な著書に『オードリー・タンの思考』、『台湾はおばちゃんで回ってる⁈』『オードリー・タンの母が綴る「家族と教育」』がある。パーソナリティを務めるVoicyチャンネルでは、音声で台湾について発信中。
Voicyチャンネル 近藤弥生子の、聴く《心跳台湾》
近藤弥生子さん執筆書籍
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