4)母とわたしで介護施設を見学。入居の方向で進み始める【父の認知症から学んだ、幸せの秘密】

4)母とわたしで介護施設を見学。入居の方向で進み始める【父の認知症から学んだ、幸せの秘密】
Saya
Saya
2026-03-23

親の老いに向き合うというのは、ある日突然はじまるものです。わたしの場合、それは父の“夜間の徘徊”というかたちでやってきました。これまでは京都での暮らしや移住生活のことを書いていましたが、その裏では東京にいる父の認知症が進行し、家族で介護体制をどう整えるかに奔走していました。介護というと、大変そう、重たそう…そんなイメージがあるかもしれません。でも、わたしにとっては、家族とのつながりを見つめ直し、人の優しさに心動かされることが増えた、そんな時間でもありました。 この連載では、認知症介護の体験を通して、わたしが出会った「幸せの秘密」を、少しずつ綴っていきたいと思います。

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介護施設の見学は、トータル3箇所。要介護3にならないと入れない、目当ての特別養護老人ホーム。それから、より介護度の低い要介護1や2の利用者でも利用できる老人保健施設(いわゆる〝老健〟)が2箇所でした。

まずは1軒目の老人保健施設。温かみのある雰囲気ではあり、案内してくださった女性の相談員も感じはいいのですが、どこか機械的。個室も大部屋もベッドが並んでいるだけ。リハビリ中心で、家に返すための施設ということで、受け入れては出すというように、流れ作業的な印象を受けました。まずはショートステイでこちらに入り、要介護3になって、特別養護老人ホームに入居できる資格ができ、特養にも空きができたら移動するというのがケアマネジャーの描いたプランでした。

2軒目が目当ての特別養護老人ホームです。先ほどの老人保健施設からそう離れてはいないのですが、こうした施設はどこも駅からは離れているもの。1軒目も2軒目も多摩川が近く、クマが出没しそうなほど山も近い。1軒目はタクシーで向かい、そこにケアマネジャーが迎えに来てくれて、2軒目に移動することになりました。

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こちらの相談員は男性の方が多かったのですが、みなさんとても熱心で、また施設内も、保育園や学校のような、やわらかさがありました。老人保健施設は、運営母体に病院が関わる医療施設であり、特別養護老人ホームは、長期入所が前提で、看取りも行う福祉施設。その違いがはっきりとわかりました。

特徴としては、ユニット型と言われるもので、真ん中にダイニングがあり、そこに個室が付いているのが特徴。それぞれの個室にはチェストや私物ももち込め、編み物が好きな人は編み棒や毛糸が置かれているし、たくさんのグリーンを育てている方もいました。個室からの緑抜けもきれいで(なかには壁に抜ける部屋もあるようです)、「ここなら、父が入ってもきっと大丈夫」と思えたものでした。なかでもいいなと思ったのは、生活のための施設だからと、飲みたい人にはお酒も煙草も自己責任で許可しているというおおらかな姿勢。いえ、わたし自身は煙草も吸わないし、お酒も今では1杯程度だけれども、昭和の猛烈サラリーマンである父には、そんな自由さのほうが合うように思えたのです。

そして、遊び心があるのは、実際にお金を払って、お茶やコーヒーがいただけるスナックや喫茶店のようなカウンターが用意されていたこと。そこにスタッフさんも立っているのです。きっと現役のときのような気分で、過ごせるに違いないと確信しました。ただ要介護度が2から3に上がらないと、基本的には受けていただけないわけで、老人保健施設でショートステイをして、こちらの入居を待ちたいと思ったことでした。

お昼を挟んで移動した3軒目の老人保健施設は新しく、全体にピカピカしていましたし、費用も安めだったのはよかったのですが、利用者さんはボーッとテレビを見ているだけ。医療施設との連携は取れているようですが、すぐに病院に逆戻りになりそうで、1軒目でショートステイをしながら、2軒目の特別養護老人ホームの空きを待とうと決め、まずは1軒目に申し込みをしました。

→【記事の続き】5)待ち望んでいた施設入居が決まるも、まさかの父の急逝こちらから。

文/Saya

東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『わたしの風に乗る目覚めのレッスン〜風の時代のレジリエンス』(説話社)他。

ホームページ sayanote.com
Instagram @sayastrology

写真/野口さとこ

北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。

ホームページ satokonoguchi.com
Instagram @satoko.nog

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