5)待ち望んでいた施設入居が決まるも、まさかの父の急逝【父の認知症から学んだ、幸せの秘密】
親の老いに向き合うというのは、ある日突然はじまるものです。わたしの場合、それは父の“夜間の徘徊”というかたちでやってきました。これまでは京都での暮らしや移住生活のことを書いていましたが、その裏では東京にいる父の認知症が進行し、家族で介護体制をどう整えるかに奔走していました。介護というと、大変そう、重たそう…そんなイメージがあるかもしれません。でも、わたしにとっては、家族とのつながりを見つめ直し、人の優しさに心動かされることが増えた、そんな時間でもありました。 この連載では、認知症介護の体験を通して、わたしが出会った「幸せの秘密」を、少しずつ綴っていきたいと思います。
ようやく父の見舞いに行けたのは、3軒の介護施設を見てまわったあと。わたしも疲労困憊していましたし、父のほうも、ひと月ぶりのわたしのことがわかるような、わからないような感じです。長引く入院によって、認知症状が格段に進んでしまったことは、ひと目でわかりました。それでも、心を込めて接していると、わたしの態度は「本気だ」などと言ってくれる。心が通じる感覚があることが介護の喜びでもあるのだろうなあと感じたことでした。
でも、この病院の看護師は、人によって、かなり対応が異なる印象で、同じ病室の寝たきりに近いお年寄りにもぞんざいな扱いをしている人も目立ちます。「なぜこんなことになった(ここに入院している)のかわからない」とつぶやく病院の父がかわいそうすぎて、ともかく退院と施設入居を急がせたいと思ったことでした。
その翌々日でしょうか。またもとんでもないミラクルが起こったのです。ケアマネジャーからの電話で、「実は、いいことと悪いことと両方あるのですが、悪いことから話しますね。介護認定結果が上がらず、申し込んでいた老人保健施設も、入居を断られてしまったんです。でも、ダメもとで第1希望だった特養に電話したら、たまたまSayaさんたちが見学したあとのこの数日で亡くなった方がいらして……。すぐに介護区分申請をやり直すとお話ししたら、要介護3に上がるまで、要介護2のまま、ショートステイで受け入れてくださることになったんです」とのこと。わたしに文句があるわけもありません。それが週の中頃です。週明けに見学、週半ばに入居決定、金曜の夕方には施設の方ともお話しでき、週明けにも入居となりました。

本当にすばらしい施設で、待ち望んでいた展開だったのですが、入居から1週間後の夜、突然、父の心臓が止まってしまったのです……。天国から地獄とはまさにこのこと。家族にとっても、医療や介護スタッフにとっても、まったく思いがけない幕切れでした。反省しきりのわたしの介護体験も終わることになるのですが、父の死とその後についてはまた別の連載で書かせていただきたいと思います。次回は、番外編として、「介護にまつわるお金の話」について、専門家の体験談を聞いています。もう少しだけ、お付き合いくださいね。
文/Saya
東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『わたしの風に乗る目覚めのレッスン〜風の時代のレジリエンス』(説話社)他。
ホームページ sayanote.com
Instagram @sayastrology
写真/野口さとこ
北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。
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