12歳までにスマホを持つ子ども、『うつ・肥満・睡眠不足リスク』が増加|最新研究で明らかに

12歳までにスマホを持つ子ども、『うつ・肥満・睡眠不足リスク』が増加|最新研究で明らかに
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山口華恵
山口華恵
2025-12-17

スマホは現代の子どもたちにとって身近な存在だが、12歳までにスマホを持つ子どもは、睡眠不足や肥満、うつ症状などのリスクが高まる可能性があることが、最新の研究で明らかになった。

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12歳までにスマホを持つ子どもは、さまざまな健康リスクが高まる可能性

米小児科学誌『Pediatrics』に発表された最新の研究で、子どもがスマホを持ち始める時期と心身の健康との間に明確な関連があることが示された。研究を行ったのは、フィラデルフィア小児病院、カリフォルニア大学バークレー校、コロンビア大学の研究者チームである。

分析には、米国最大規模の長期追跡調査「Adolescent Brain Cognitive Development Study(ABCD研究)」のデータが用いられ、1万500人以上の子どもと青年が対象となった。その結果、12歳時点ですでにスマホを所有していた子どもは、所有していなかった子どもに比べ、うつ症状のリスクが約1.3倍、肥満のリスクが約1.4倍、睡眠不足のリスクが約1.6倍に高まることが明らかになった。

さらに、スマホを持ち始める年齢が早いほど、心身のリスクが高まる傾向も確認された。スマホの所有開始が1年早まるごとに、うつ症状や肥満、睡眠不足といったリスクがおよそ10%ずつ増加する傾向が見られ、最も早いケースでは4歳からの使用でも影響が認められた。また、12歳までスマホを持たなかった子どもであっても、13歳で取得した場合には、睡眠や精神面に影響が現れることが分かった。これらの結果から、スマホを持ち始める「年齢そのもの」が、健康リスクと関係している可能性が示唆されている。

一方で、研究の著者であり小児・青年精神科医のラン・バルジレイ博士は、「本研究は因果関係を証明するものではなく、あくまで関連性を示したものだ」と説明する。それでも、子どものスマホ所有や使用が、心身の健康に影響を及ぼす可能性を示す重要なデータであることは間違いない。

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健康への影響を理解し、利用方法や時間管理が重要

バルジレイ博士は、スマホには利点もあることを指摘する。友人とのつながりを持ちやすくしたり、学習や情報収集の手段として役立ったりする場合もある。また、家庭によっては子どもの安全確保のために必要なツールとなることも。しかし、同博士は「スマホを持たせる場合は、健康への影響を理解し、利用方法や時間を管理することが重要」と述べている。家庭でルールを決めることで、子どもが睡眠や運動時間を確保できるよう配慮することが必要だ。

親ができる対応例として、研究チームは、子どもがスマホを持つ準備ができているかどうかを考えることを推奨している。具体的には、以下のような対応が考えられる。

  • 夜間はスマホを子ども部屋に持ち込ませない
  • 使用時間や利用目的を家族で決める
  • 運動や外遊びなど、スマホやタブレットなどを使わない時間を確保する
  • 定期的に子どもの睡眠や気分、生活習慣を確認する

バルジレイ博士自身も、自身の9歳の子どもには「今すぐスマホは持たせない」と決めており、これは健康リスクを考慮した家庭での判断の一例だ。

デジタル時代の子育ての課題

米国の調査によると、2024年時点で13〜17歳の青少年の95%がスマホを所有しており、11〜12歳でも半数以上、8〜10歳でも約3割がすでにスマホを持っている。もはや、ほとんどの子どもがいずれスマホを手にする時代だ。その一方で、今回の研究は、12歳までのスマホ所有が子どもの心身の健康に影響する可能性を示した。親に求められるのは、単に「持たせるかどうか」ではなく、与える年齢や使い方を慎重に見極め、睡眠や運動といった基本的な生活習慣が損なわれないよう配慮することだろう。

便利なツールであるスマホと、子どもの健やかな成長。そのバランスをどう取るかが、デジタル時代の子育てにおける重要な課題となっている。

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出典:
Kids who have smartphones by age 12 have higher risk of depression, obesity: Study
Children who have smartphones by age 12 are at increased risk of health problems, new study finds

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