更年期にやる気が出ない時の処方箋|「やる気が出ない」自分を責めずに動き出すためにすべきこと
更年期の方に向けたサービス「よりそる」を運営する高本玲代さんが綴るコラム連載。高本さんご自身もまさに更年期世代。わかりやすい不調だけではない更年期の影響について、体験を交えてお話しいただきます。
「やる気が出ない」はあなたのせいじゃない
更年期になると、「なんだか気分が上がらない」「やる気がわかない」「全部がめんどくさい」と感じることが増えます。
でもそれは、あなたの性格が怠けているからでも、努力が足りないからでもありません。
女性ホルモンの変動によって脳内の神経伝達物質(セロトニンやドーパミン)が乱れると、脳が“ブレーキ状態”に入ります。
まるで、アクセルを踏もうとしてもエンジンがかからない車のような状態です。
つまり、「やる気が出ない」は体のサイン。
自分を責めるのではなく、「今はエネルギーを貯めている時期なんだ」と理解してあげることが第一歩です。
やる気が出ないから「やらない」は、実は逆効果
多くの人が「やる気が出ないから、もう少し元気になったらやろう」と思います。
でも実際の脳科学では、やる気は“行動したあと”に出てくることがわかっています。
つまり、「やる気→行動」ではなく、「行動→やる気」が正解。
小さな行動を起こすことで、脳内でドーパミンが分泌され、「もう少しやってみよう」という気持ちが自然に生まれます。
このメカニズムは、筋トレや掃除、勉強など、あらゆる場面で同じ。
最初の1歩が小さいほど、後が続きやすいのです。
「5分だけやる」——脳をだます最強の方法
やる気が出ないとき、いきなり「1時間やろう」と思うと脳が拒否反応を示します。
でも「5分だけやる」なら、脳は「まあそれくらいなら…」と受け入れやすい。
心理学ではこれを作業興奮(task-induced arousal)といいます。
始めることで脳が活性化し、途中からやる気が出てくる現象です。
たとえば:
机に向かうだけ
パソコンを開くだけ
洗濯機を回すだけ
最初の5分でいいのです。
不思議なことに、始めてしまえば「せっかくだからもう少し」と自然に続くことが多い。
脳は“始めたことを途中で終わらせたくない”という性質を持っているからです。
「5分やってもしんどい時」は、やめていい
大切なのは、「やる気を出すこと」ではなく、「自分を大切に扱うこと」です。
5分やっても心が重いとき、体がだるいときは無理をしない。
「今日は5分やった。それで十分」と自分を認めてください。
脳は“成功体験”を記録する臓器です。
「やろうと思って、少しでもやった」という体験を積み重ねると、
「私は行動できる」という自己効力感(self-efficacy)が育ちます。
それが次の行動のエネルギーになります。
「行動のハードル」を下げる
やる気が出ない時期には、「ハードルを低く設定する」ことが鍵です。
たとえば:
やる気が出ないときの目標
ハードルを下げた例
ウォーキング30分
家の前まで出る
夕食を作る
野菜を切るだけ
読書する
本を開くだけ
部屋を片づける
テーブルの上だけ片づける

大きな目標を立てると、脳は「やらなきゃ」とストレスを感じ、
行動前にエネルギーを使い果たしてしまいます。
でも、小さな行動なら「すぐできる」と脳が判断し、自然に体が動きます。
この“心理的ハードルを下げる”工夫が、更年期の心身にはとても大切です。
「やる気が出た経験」を思い出す
友達と会うのがめんどくさい。でも、会ったら楽しかった。
そんな経験、ありませんか?
やる前は腰が重くても、いざ行動してみたら笑っていた——。
その「良かった経験」を思い出すことは、心のガソリンになります。
脳は“思い出すだけ”でも、当時の感情を再現する力を持っています。
つまり、「あのとき楽しかった」という記憶を呼び起こすだけで、
幸福ホルモン(セロトニン)が分泌され、やる気の回路が少しずつ戻ってくるのです。
「完璧にやろう」と思わない
更年期の時期は、心も体も揺れ動くのが自然。
いつも通りに動けない日があるのは当然です。
でも多くの女性は、真面目で責任感が強いからこそ、
「ちゃんとやらなきゃ」「前はできたのに」と自分を責めてしまいます。
そんな時はこうつぶやいてください。
「今日は60%できた。それでいい。」
完璧主義を手放すことが、やる気を取り戻す最短ルートです。
“できなかった”より“できた部分”に注目すると、脳は前向きな刺激を受け、
また少しだけ行動するエネルギーが湧いてきます。
「人と比べる」をやめる
更年期に入ると、SNSや周りの人と比べて落ち込むことも増えます。
「同い年なのに、あの人は元気そう」「自分だけ遅れてる気がする」——。
でも、人生のリズムは人それぞれ。
今は“充電期”の人もいれば、“行動期”の人もいるだけ。
木でたとえれば、あなたは今、根っこを張っている時期です。
地上からは見えないけれど、土の中では確実に成長しています。
焦らず、自分のペースで大丈夫。
やる気が出ない日も、無駄ではありません。
心と体が次のステージへ準備しているだけなのです。
「やる気スイッチ」は体の整え方にもある
脳のやる気回路をサポートするには、食事・睡眠・運動も欠かせません。
鉄分・タンパク質・ビタミンB群
→ セロトニン・ドーパミンの材料になります。
日光にあたる
→ 体内時計をリセットし、やる気ホルモンを出やすくします。
軽い運動(かかと落とし・ストレッチ)
→ 血流が良くなり、脳に酸素が行き渡ります。
「やる気が出たら動く」ではなく、「動くからやる気が出る」——。
この順番を思い出すことが、体にも心にも優しいリズムをつくります。
「今日の小さな一歩」をメモする
夜寝る前に、「今日やれたこと」を3つ書き出してみてください。
朝ちゃんと起きた
洗濯をした
メールを返した
どんな小さなことでも構いません。
“できたこと”を可視化することで、脳がポジティブな記憶を強化します。
これを1週間続けるだけで、自己肯定感が上がり、
「明日も少しやってみよう」と思えるようになります。
「未来の自分」が喜ぶ5分を積み重ねよう
更年期は、「今まで通り」が通用しなくなる時期。
でも、それは終わりではなく、“新しい自分”に切り替わるサインでもあります。
やる気が出ない日があってもいい。
そんな日こそ、未来の自分に向けて「5分だけ」動いてみてください。
その5分が、1週間後、1か月後のあなたの笑顔につながります。
やる気を出そうとしなくていい。
ただ、小さな一歩を踏み出す——それが、最高の処方箋です。
まとめ:更年期のやる気が出ない時に覚えておきたい言葉
やる気は「出す」ものではなく、「出てくる」もの
行動が先、気分はあとからついてくる
5分だけやる。しんどければやめていい
過去の「やってよかった」経験を思い出す
完璧より、今日の小さな一歩
自分のリズムを信じる
あなたの今日の「5分」が、明日の光になります。
焦らず、比べず、少しずつ。
やる気が出ない自分をも、まるごと受け入れていきましょう。
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