更年期で「眠れない」と悩む人たちには共通点があった!今日からできる更年期不眠対策&チェックリスト
更年期の方に向けたサービス「よりそる」を運営する高本玲代さんが綴るコラム連載。高本さんご自身もまさに更年期世代。わかりやすい不調だけではない更年期の影響について、体験を交えてお話しいただきます。
更年期不眠の人がやっている共通点
更年期に入ると、多くの女性が口にするのが「眠れない」という悩みです。夜中に何度も目が覚めたり、寝つきが悪かったり、朝早くに目が覚めてしまったり。「昔はどこでも寝られたのに、今は布団に入っても眠れない」と感じる方が本当に増えています。私のもとにも、「最近眠りが浅くて」「夜が長いんです」といったご相談がとても多く届きます。
そして、その方々のお話を丁寧に聞いていくと、眠れない人たちにはある“共通点”があるのです。実は、不眠は「その夜に起きたこと」だけではなく、その前の日常の過ごし方が深く関係しています。つまり、“寝る前の習慣”や“昼間の行動”が、夜の眠りを左右しているのです。ここでは、私が日々のカウンセリングで見つけた「更年期不眠の人がやっている共通点」を5つご紹介します。もし当てはまるものがあれば、今日から少しずつ見直してみてください。
① 寝る前にいろいろ考えてしまう
夜、布団に入ってから頭の中が止まらない――。「明日の予定は?」「あの人に言ったこと、まずかったかな」「老後の生活、大丈夫かしら」そんな風に考えが浮かんでは消え、気づけば1時間経っている。実は、眠れない人の多くが「寝る前に思考が活発になっている」傾向があります。
脳は“考えごと”をしている限り、「まだ活動中」と判断してしまうため、眠りのスイッチが入りません。一方で、眠れる人は「考えない工夫」をしています。例えば、翌日の日中にノートに今日の考えごとを書き出すと決める。「頭の中から紙の上へ」移すことで、脳が“もう整理した”と安心できますし夜に考えると堂々巡りになります。
また、朗読アプリでゆったりした声を聞く、本を少し読む、静かな音楽を流す――そんな「心地よい刺激」で思考を上書きする人もいます。“考えを止める”のではなく、“考えが入れない環境”を作るのです。寝る前の時間は、脳にとって「一日の整理時間」。そこに不安や反省を持ち込むと、脳が夜通し働いてしまいます。「考えたいことは明日考える」と決めるだけでも、眠りはずっと楽になります。
② 日中の活動量が少ない
「寝つきが悪い」「疲れているのに眠れない」という方の多くは、実は“体”ではなく“頭”が疲れている状態です。特に更年期以降は、筋肉量や代謝が落ちるため、意識して動かないと体に十分な「疲労」がたまりません。人の体は、ある程度動いて初めて「休む準備」が整うようにできています。
「買い物にも行ったし、家事もした」と思っていても、実際には歩数が少なく、心拍数が上がる時間がほとんどないことが多いのです。日中に体を使わなければ、夜になっても眠気が自然に訪れません。たとえば、朝の散歩や軽いストレッチを習慣にしてみてください。
朝日を浴びると、“セロトニン”というホルモンが分泌され、夜になるとそれが“メラトニン(睡眠ホルモン)”に変わります。つまり、「良い眠り」は朝から始まっているのです。ある50代の女性は、毎朝15分だけ外を歩くようにしたところ、「夜、自然に眠気がくるようになった」と話してくださいました。体を動かすことは、眠りのリズムを取り戻す一番の近道です。
③ 休みの日にまとめて寝ている
「平日は寝不足だから、週末にたっぷり寝たい!」多くの人がそう思っています。しかし実は、それが不眠を悪化させる原因の一つです。人の体内時計はとても繊細で、起きる時間が2時間ずれるだけでもリズムが崩れるといわれています。
土日に寝だめをすると、日曜の夜に「時差ボケ」のような状態になり、月曜の朝に体がだるくなる。これが続くと、平日も夜になかなか眠れないという悪循環に陥ります。理想は、「休日も平日と同じ時間±2時間以内に起きる」こと。眠りのリズムを崩さずに回復させたい場合は、昼寝(20分以内)を上手に取り入れるほうが効果的です。
リズムが整うと、メラトニン(睡眠ホルモン)の分泌もスムーズになります。「眠る時間より、起きる時間を一定に保つこと」――それが、良質な眠りの第一歩です。
④ 自分の睡眠状態を客観的に理解していない
「私は全然眠れていません」と感じている人でも、実際に睡眠アプリで測ってみると、6時間近く眠れていたというケースもあります。逆に、「ぐっすり眠った」と思っていても、実は途中で何度も浅い睡眠を繰り返している人もいます。
つまり、自分の“感覚”と実際の“睡眠の質”にはズレがあるのです。だからこそ、一度は客観的に測定してみることをおすすめします。今は無料のスマホアプリやスマートウォッチでも、睡眠の深さや途中覚醒を記録できます。データを見て「意外と眠れていた」とわかるだけでも、“眠れない不安”が軽くなり、結果的に眠りが深くなることもあります。
不眠の背景には、「眠れないことへの焦り」や「不安」が必ずあります。客観的なデータは、その思い込みをやわらげてくれる最良のツールです。まずは“見える化”するところから、整える一歩を踏み出してみましょう。
⑤ 眠れた日・眠れなかった日の分析と「定期的な振り返り」がない
不眠に悩む人ほど、「眠れなかった」ことに意識が集中しがちです。けれど、眠りは「偶然」ではなく「その日一日の結果」。どんな日によく眠れたか、どんな日に眠れなかったかを分析することで、自分のパターンが見えてきます。
たとえば、夕方にコーヒーを飲んだ日は寝つけなかった、夜に嫌なニュースを見た日は眠れなかった、散歩をした日は自然に眠れた――など、眠りの背景には必ず理由があります。
そこでおすすめなのが、「睡眠メモ」や「簡単な日記」をつけること。「寝る前の気分」「夕食の時間」「入浴の時間」「寝つきの状態」など、3行でいいので毎日書いてみましょう。さらに大切なのが、一週間単位・一か月単位で振り返ることです。1日ごとの記録では見えない“リズムの波”が見えてきます。
たとえば、「月の後半は眠りが浅くなりやすい」「週末前は疲れが溜まって寝つきが悪い」など、自分の“周期”や“ホルモン変動の影響”を客観的に理解できるようになります。ある女性は、1か月の記録をもとに「生理の前は特に浅眠になる」と気づき、その週だけ夕食を早め、カフェインを控えたところ、「眠れない期間が短くなった」と話してくれました。
眠りを“観察”する姿勢が、不眠から抜け出す第一歩です。「眠れない」ことを責めずに、「どうして今日は眠れなかったのか?」と探究心を持って眺めること。それが、不眠を整える人の共通点です。
不眠は“夜の問題”ではなく“昼の積み重ね”
多くの人が「夜眠れないから、夜に何とかしよう」と考えます。けれど、実際には不眠の7割以上は“日中の過ごし方”に原因があります。朝起きて太陽の光を浴びること、昼に体をしっかり動かすこと、夜にスマホや強い光を避けること――これらはどれも、睡眠ホルモンを整えるための“布石”なのです。
特に更年期では、女性ホルモンの変動が自律神経に影響し、「眠りに入るスイッチ」が入りにくくなります。だからこそ、“薬で無理に眠らせる”のではなく、“自分のリズムを取り戻す”ことが何よりも大切なのです。
最後に:眠れない夜こそ、自分を責めないで
不眠の夜は、孤独で長く感じるものです。「また眠れない」「どうしよう」と思うほど、脳がさらに興奮してしまうという悪循環も起こります。そんな時は、こう声をかけてあげてください。「今日は眠れない日もある。でも、体はちゃんと休もうとしてくれている。」完全に眠れなくても、横になっているだけで体は休息しています。
翌朝は少し早く起きて、太陽の光を浴びてみてください。それだけで体内時計は少しずつ整っていきます。眠りは“努力で勝ち取るもの”ではなく、“整えるもの”。寝る前に何を考え、日中をどう過ごし、夜をどう迎えるか。その小さな積み重ねが、あなたの眠りを変えていきます。
今日からできるチェックリスト
- 寝る前に考えごとをしていないか
- 日中、体をしっかり動かしているか
- 休日の起床時間が平日とずれていないか
- 睡眠アプリなどで自分の眠りを“見える化”しているか
- 1日・1週間・1か月単位で眠りを振り返っているか
どれか一つでも「やってみよう」と思えることがあれば、それが最初の一歩です。更年期は、体も心も“再調整の時期”。焦らず、比べず、自分のリズムを取り戻す時間にしていきましょう。
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