「なんだか最近、人の幸せが素直に喜べない」他にも…〈更年期〉休息が必要な人のサインとは

「なんだか最近、人の幸せが素直に喜べない」他にも…〈更年期〉休息が必要な人のサインとは
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高本玲代
高本玲代
2025-10-05

更年期の方に向けたサービス「よりそる」を運営する高本玲代さんが綴るコラム連載。高本さんご自身もまさに更年期世代。わかりやすい不調だけではない更年期の影響について、体験を交えてお話しいただきます。

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もしかして、私も?

「なんだか最近、人の幸せが素直に喜べない」「友達に会うのが面倒になってきた」「やる気がわかないまま、毎日が過ぎていく」——そう打ち明けてくださる女性は少なくありません。相談を受けていると、「これは体調や心の疲れから来ているな」と感じる瞬間がよくあります。でも不思議と、ご本人はあまり自覚していないことが多いのです。

「性格が変わったのかもしれない」「私の努力不足かもしれない」——そんなふうに自分を責めてしまっている人もいます。けれど実際は、それは「休んでほしい」という心身からのサインなのです。

サイン① 他人の幸せが妬ましく思える

ある50代の女性の方は、娘さんの受験を終えた友人から「合格したよ!」とLINEが来ても、素直に「おめでとう」と返せなかったそうです。「普段なら嬉しいはずなのに…どうして?」そんな違和感に戸惑い、余計に落ち込んでしまったと話してくださいました。心に余裕があるとき、人の幸せは自分の喜びにもなります。けれど、心身が疲れていると「比較」になってしまい、妬みや劣等感に変わってしまうのです。

サイン② 人に会うのが億劫になる

「この間まで楽しみにしていたランチが、当日になると急に行きたくなくなる」そんな経験はありませんか? 実際にある方は、久しぶりの同窓会に申し込みをしたのに、直前で「やっぱりやめておこう」とキャンセルしました。特に誰が嫌いというわけでもなく、話題に困るわけでもない。ただ「笑顔を作るのがしんどい」と思ったそうです。これは、人間関係が嫌いになったのではなく、疲労で人に合わせる余力がなくなっているサインです。

サイン③ やる気が出ない

「掃除しなきゃ」「仕事のメールを返さなきゃ」と思っても体が動かない。気がつけば、スマホを握ったまま時間だけが過ぎていく。この「やる気が出ない」状態も、更年期女性から多く寄せられる声です。本人は「私って怠け者なのかな」と思いがちですが、そうではありません。ホルモンバランスの影響で脳内の神経伝達物質が乱れ、やる気や集中力を司る機能が低下しているのです。

やる気
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サイン④ 食欲の乱れ

ある方は、疲れているのに無意識で甘いお菓子を食べ続けてしまうと話していました。逆に「食欲がなくて、夕食を作るのも見るのもつらい」という方もいます。どちらも「自分の意思が弱いから」ではなく、心身がSOSを出している証拠です。

サイン⑤ 寝ても疲れがとれない

一番多いのは「寝ても疲れが取れない」という悩みです。「8時間寝ても朝からだるい」「休日に昼まで寝てもスッキリしない」——。更年期は眠りが浅くなりやすく、夜の休息だけでは回復できないことも多いのです。

では、どうすればいい?

デジタルデトックス

「ついSNSで他人と比べてしまって落ち込む」そんなときは、思い切ってスマホから距離をとってみましょう。実際に「寝る前の1時間はスマホを触らない」と決めただけで、ぐっすり眠れるようになったという声も多いのです。

自然に触れる

自然には、不思議な癒しの力があります。「森のささやき」や「波の音」などを耳にするだけで、脳も心も緩み、身体が自然とリラックス状態へと向かいます。これは決して気のせいではなく、科学的にも裏付けられた効果です。例えば、自然の光景を見るだけで自律神経の働きが改善されたという報告があります。ストレス前後に人工的な都市景観ではなく自然の風景を見た人は、心拍変動(HRV)の指標である自律神経の回復が早かったことが確認されています[PMC]。また、日本の近年の研究でも、森林の音や映像を聴いたり見たりすることで、自律神経のバランスが整い、心身がより穏やかになることが示されています。森林音を聞いた後、脳の前頭前野の酸素化が低下し、心拍変動からは「安静状態に近づいた」ことが確認されています[J-STAGE]。外に出られないときは、YouTubeで音を流すだけでもOKです。

笑うこと

「笑っているとき、嫌なことを考えていられない」——これは本当にその通りです。実際にお笑い番組やコメディ映画を見て「久しぶりにお腹を抱えて笑ったら、心が軽くなった」と話す方もいます。笑いは副交感神経を優位にし、免疫力まで上げてくれる効果があるのです。

「休む」ことは後退じゃない

更年期の不調サインを抱えながら、無理を続ける女性は少なくありません。家族のため、職場のためと頑張りすぎてしまうのです。でも、休むことは決して後退ではありません。むしろ、その先の人生を豊かに過ごすための準備期間です。実際、私が関わった方の中には「思い切って休んだら、むしろ仕事や家族との関係がうまくいくようになった」という方もたくさんいます。時には自分専用の一日を過ごしてみませんか? 長い目で見ればたった一日ですが、あなたの人生における役割は大きな一日となるかもしれません。

おわりに

「他人の幸せが妬ましい」「人に会うのが面倒」「やる気が出ない」「食欲が乱れる」「寝ても疲れがとれない」——。もし一つでも当てはまるなら、それは体からの休息のサインかもしれません。どうか自分を責めずに、少しだけ立ち止まってみてください。休息をとることは、これからの人生をしなやかに歩むための大切なステップです。あなたの未来を明るくするために、今こそ「休む勇気」を持ってみませんか。

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