怠けや甘えではない。更年期で仕事が辛いと感じる女性たちに知ってほしい処方箋とは

怠けや甘えではない。更年期で仕事が辛いと感じる女性たちに知ってほしい処方箋とは
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高本玲代
高本玲代
2025-09-08

更年期の方に向けたサービス「よりそる」を運営する高本玲代さんが綴るコラム連載。高本さんご自身もまさに更年期世代。わかりやすい不調だけではない更年期の影響について、体験を交えてお話しいただきます。

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このところ、「更年期で仕事が辛い」「集中力が続かず休職してしまった」「ついに辞めてしまった」というご相談を多数いただくようになりました。
40代後半から50代にかけて、女性は大きな心身の変化に直面します。女性ホルモンの分泌がゆるやかに減少し、自律神経や脳の働きにも影響が及ぶため、これまで当たり前にできていたことが急に難しく感じられるようになるのです。

  • なんとなく疲れが取れない
  • ミスが増えて焦ってしまう
  • 会社に行くのが怖い

その一つひとつは決して怠けや甘えではありません。むしろ体が必死に「休んで」「助けて」とメッセージを送っているのです。
今回は、そんな更年期に仕事が辛いと感じる女性への“処方箋”を、具体的な行動のヒントとともにお伝えします。

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まずは婦人科を受診してみる

更年期の不調を語るとき、多くの女性が「どこに行けばいいのか分からない」と口にします。内科?精神科?整体?――迷ったときの最初の一歩は「婦人科」です。
婦人科では血液検査や問診を通して、女性ホルモンの状態や更年期障害の有無を確認することができます。必要に応じてホルモン補充療法(HRT)や漢方薬などの治療を受けられることもあります。

実際に、ある相談者の方は「ただの気分の問題」と思っていた不調が、検査を受けることで女性ホルモンの急激な低下によるものと分かりました。治療を始めると、体調が落ち着き、仕事に復帰する自信を取り戻していかれました。

婦人科を受診することは、自分の不調が「医学的に理解できること」だと確認するための第一歩でもあります。原因が見えない不安は心をさらに疲弊させます。だからこそ「まず受診して確かめる」ことはとても大切なのです。

仕事や家事のペースを落とすことを周りに相談する

更年期世代の女性は、仕事と家庭の両方で大きな役割を担っていることが少なくありません。職場では経験豊富なリーダーとして期待され、家庭では親の介護や子どもの独立準備などを支えています。

そんな中で「ペースを落とす」ことに罪悪感を覚える方は多いものです。ですが、本当に必要なのは「一人で抱え込まない」こと。
例えば、仕事では上司や同僚に「今は少し体調が不安定なので、スケジュールを調整していただけると助かります」と伝えるだけで、周囲の理解を得やすくなります。家庭では「今日は簡単な食事でいい?」とパートナーや家族に相談するだけでも負担は軽くなります。

一人で「頑張らなきゃ」と背負い続けると、心身はますます追い詰められてしまいます。逆に、周りに相談してペースを落とすことは、自分を守るだけでなく、結果的に家族や職場のためにもなるのです。

正社員として働いている方は「休職」も選択肢に

特に正社員や長期雇用で働いている方は、思い切って休職することを検討してもよいでしょう。
「休んでしまったらもう戻れないのでは?」と不安に感じる方は多いですが、長い目で見れば、これはむしろ働き続けるための大切な選択になることがあります。

実際に、私が関わったある女性は、50歳を前に仕事の責任も重くなり、毎日のように頭痛と不眠に悩まされていました。欠勤が増え、上司にも迷惑をかけていると感じ、辞めようかと考えていたそうです。

しかし、会社の人事担当者と相談し、半年間の休職を選びました。最初の2か月はとにかく休養にあて、徐々に生活リズムを整え、食事や運動にも取り組むようになりました。結果的に、復帰後は以前よりも集中力が高まり、「あの時に無理して続けていたら本当に辞めていたと思う」と語ってくれました。

「休む」ことは後退ではなく、働き続けるための投資です。正社員という立場を生かし、制度を利用する勇気を持つことも、処方箋のひとつなのです。

食事・睡眠・運動の見直しを少しずつ

更年期の不調に対処するうえで、生活習慣の見直しは欠かせません。とはいえ「すべてを完璧に」と思う必要はありません。むしろ一度に変えようとすると挫折につながります。

  1. まずは休養
    体が悲鳴を上げているときは、無理に食事改善や運動を始めなくてもかまいません。まずは「しっかり休む」こと。休養によって心身の回復の土台を整えることが先決です。
  2. 最初に整えるのは「食事」
    一番取り組みやすいのは「食事」です。とはいえ、栄養バランスを考えた自炊を毎日完璧にこなす必要はありません。買ってきたお惣菜や冷凍食品でも構わないのです。
    「野菜をひとつ足す」「タンパク質を意識して選ぶ」
    そんな小さな工夫で十分です。体に必要な栄養素が入ってくると、不思議と気持ちも少しずつ前向きになります。
  3. 睡眠
    更年期は眠りが浅くなりやすく、夜の休息だけでは回復しにくいことがあります。寝る前のスマホ使用を控える、照明を落とすなど、眠る環境を整える工夫が役立ちます。
  4. 運動
    気力が戻ってきたら、軽いストレッチや散歩から始めましょう。無理にジムに通う必要はありません。「少し歩いたら気持ちがいい」と感じる程度で十分です。

「今の自分」を認める勇気

更年期で仕事が辛いとき、最も大切なのは「今の自分を責めないこと」です。
「前はもっとできたのに」「みんなは頑張っているのに」
そんな思いが浮かんだときは、「それでも今までよく頑張ってきた」と自分をねぎらうことから始めましょう。

実際に、休職を経験した女性はこう話してくれました。
「最初は罪悪感でいっぱいでした。でも休んだことで、夫や同僚との関係がむしろ良くなったんです。みんなが”頼ってくれてありがとう”と言ってくれて…。今は以前よりも気持ちが楽に働けています。」

更年期は一人で耐え抜く時期ではありません。自分を大切にしながら、必要な助けを受け入れること。それこそが、仕事を続けるための最も確かな処方箋なのです。

おわりに

更年期で仕事が辛いと感じたとき、あなたは決して弱いわけでも怠けているわけでもありません。それは体が「休みが必要」と訴えている自然な反応です。

  • まずは婦人科を受診し、医学的にできることを確認する。
  • 仕事や家事のペースを落とし、周囲に相談する。
  • 正社員など休職できる立場にある人は、休職という選択肢を検討する。
  • 食事・睡眠・運動を少しずつ見直し、まずは休養を大切にする。

これらのステップは小さな一歩に見えるかもしれませんが、積み重ねていくことで「働き続ける力」へとつながります。
どうか「頑張らなければ」と一人で抱え込まず、「休んでもいい」「助けを求めてもいい」と自分に許可を与えてください。その勇気が、人生100年時代をしなやかに働き続けるための、最初の処方箋になるのです。

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