更年期と夏の不眠、その意外な対処法とは|「眠れない夜」に振り回されないためにできること

更年期と夏の不眠、その意外な対処法とは|「眠れない夜」に振り回されないためにできること
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高本玲代
高本玲代
2025-09-02

更年期の方に向けたサービス「よりそる」を運営する高本玲代さんが綴るコラム連載。高本さんご自身もまさに更年期世代。わかりやすい不調だけではない更年期の影響について、体験を交えてお話しいただきます。

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夜中にふと目が覚め、時計を見るとまだ午前2時。
それから眠れず、ぐるぐると考え事をしてしまう。
更年期を迎えた女性たちの間で、こうした「不眠の悩み」が増えています。
特に夏は、暑さと寝苦しさ、汗やほてり、エアコンの不快感などが重なり、眠れない夜がよりつらく感じやすい季節です。
しかし、実は「眠れていない」と思っている人の中には、実際にはある程度眠れているというケースも少なくありません。
今回は、更年期と夏特有の不眠に悩む方に向けて、意外と知られていないけれど、実際に効果のあった対処法をご紹介します。

「眠れていない」と感じる人が知っておきたい事実

「ほとんど眠れていないんです」と訴える方の中に、実はトータルで5〜6時間は眠れていたというケースは珍しくありません。
これは「主観的不眠」と呼ばれ、睡眠に対する不安や不快感が強いことで、実際よりも眠れていないように感じる状態です。
睡眠中に覚醒を何度か繰り返すと、断続的な眠りの印象が強く残り、「ぐっすり眠れなかった」という記憶だけが残るのです。
このような場合、ただ「本当に眠れていないのか?」を確認するだけでも、気持ちが楽になり、眠りやすくなることがあります。

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睡眠アプリで「客観的な自分の眠り」を知ってみる

実際に「自分の眠り」を客観的に見てみたい方には、スマートウォッチやスマホの睡眠トラッキングアプリをおすすめします。
今ではアプリも無料のものがあります。最近のアプリでは、以下のような項目が自動で記録されます。

  • 睡眠時間の長さ
  • 寝つきまでの時間
  • 中途覚醒の回数
  • 浅い眠り・深い眠りのバランス

例えば、睡眠アプリで「合計6時間半眠れていた」と分かるだけで、「そんなに眠れてたんだ」と安心し、過度な不安が減る人も多くいます。
実際にある女性(52歳・会社員)は、毎朝「全然眠れなかった」と感じていたものの、アプリで確認すると平均5時間以上眠れていることが判明。
「数字で見えたことで、逆にプレッシャーが減って眠れるようになった」と話します。

POINT:眠りの「質」だけでなく「不安」の正体を客観的に見ることが、不眠の改善につながることがある。

「夏のほてり」で目が覚めるあなたへ:冷やし方の工夫

更年期にはホットフラッシュ(のぼせや発汗)により、寝ている間にほてりや発汗で目が覚める人が少なくありません。
特に夏は、室温と相まってこの症状が悪化しやすい季節。
「夜中に汗びっしょりで目が覚める」「枕が熱くて寝ていられない」といった声も多く寄せられます。

そんなときにおすすめしたいのが、氷枕や冷却ジェル枕の準備。
夜中に目が覚めたときにすぐ手に取れるように、ベッドのそばに置いておくだけでも安心感が生まれます。
首元や足の付け根を冷やすと体温が下がりやすく、再び眠りにつきやすくなります。

POINT:「汗をかく」「暑さで起きる」を避けるには、冷房だけでなく直接的な冷却グッズを活用するのがコツ。

日中に汗をかくことで、夜の発汗が落ち着く?意外な体の仕組み

更年期の発汗は、自律神経の乱れによるもの。
中でも「日中あまり動かず汗をかいていない人」ほど、夜中の不自然な発汗が起こりやすい傾向があります。
これは、汗腺が普段働いていないことで体温調整がうまくできないから。
日中に適度に汗をかいておくことで、体が「発汗のリズム」をつかみ、夜の発汗が落ち着いてくることがあります。

例えば、午前中に軽く散歩をする、または家事の合間に窓を開けて動く、入浴でしっかり汗をかくなど、小さな「発汗リズム」を意識するだけでも変化が見られます。
実際に、ある女性(49歳・パート勤務)は、午前中に15分ほどウォーキングを取り入れたところ、夜の寝汗がほとんどなくなったと話します。
逆に汗をかかない日が続くと熱がこもり夜発汗で目が覚めてしまうとのこと。

POINT:日中に“あえて汗をかく”ことで、体温調整機能が整い、夜の不快な発汗が軽減される。

不眠対策で逆効果になりやすいNG習慣

では、不眠を解消したいと思って行っている中で、実は逆効果になりやすい習慣にはどのようなものがあるのでしょうか?
以下のような行動には注意が必要です。

  • ベッドで「眠らなきゃ」と悩み続ける
    眠れないまま布団の中で悶々としていると、「寝室=眠れない場所」という条件付けがされてしまいます。
    20分以上眠れなければ、一度起きて軽くストレッチや深呼吸をしてから、再度横になる方が効果的。
  • 昼寝が長すぎる・遅すぎる
    昼寝は、午後3時までに20分以内が理想。夕方以降のうたた寝や長すぎる仮眠は、夜の眠りを妨げてしまいます。
  • 寝る直前までスマホやテレビを見る
    ブルーライトや刺激の強い情報は脳を覚醒させてしまいます。
    できれば、寝る1時間前から照明を落として静かな時間に。
    また、夜中に目が覚めた時は音だけ聴く、などをしているとまた眠るに入れます。

まとめ:「不眠に振り回されない」ために

更年期の不眠は、単なる「眠れない」という問題だけでなく、「眠れないことへの不安」や「翌日の不調への恐れ」といった、心理的ストレスとのセットで現れることがほとんどです。
だからこそ、

  • 睡眠の“実際”を客観的に観察してみる
  • 体温調整や汗のコントロールを工夫してみる
  • 「眠れない夜」への心構えを変えてみる

といったアプローチが、睡眠の質を底上げしてくれます。
眠りは「コントロールするもの」ではなく、「整えて、委ねるもの」。
そのことを思い出しながら、無理せず、少しずつ、今の自分に合った睡眠スタイルを見つけていきましょう。
そして、2週間以上不眠が続く様であれば受診をしてみてください。

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