気をつけたい〈心房細動〉サイン。一時的な動悸の乱れと何が違うの?医師が詳しく解説
「ドキドキする」「胸がバタバタする」「脈が飛ぶ感じがする」そんな“動悸”を感じたことはありませんか?一時的なストレスやカフェインの摂りすぎで起こることもありますが、なかには「心房細動(しんぼうさいどう)」という不整脈のサインかもしれません。医師が解説します。
心房細動とは?
心房細動とは、心臓の上の部屋(心房)が細かく震えてしまい、心臓全体のリズムが乱れる状態を指します。
通常、心臓は規則正しく「ドクン、ドクン」と拍動していますが、心房細動になると「バラバラ」「バタバタ」と不規則になります。
そのため、脈をとると速くなったり遅くなったり、一定ではなくなるのが特徴です。
問題なのは、この不規則な鼓動が血液の流れを滞らせること。
心房の中で血液がよどむと、血の塊(血栓)ができやすくなります。もしその血栓が脳に飛ぶと、脳梗塞を引き起こしてしまう危険があるのです。
実際、心房細動が原因の脳梗塞は重症になりやすく、後遺症が残ることも少なくありません。
しかもやっかいなのは、心房細動は自覚症状がないことも多いという点。
健康診断やたまたまの心電図で初めて見つかるケースもあります。
「動悸がないから大丈夫」と思っていても、知らないうちに進行していることもあるのです。
心房細動サイン — 動悸の裏にあるリスクを見逃さないために
- ちょっと脈が速い
- 胸の違和感が続く
- 疲れやすい
心房細動の初期には、こうした微妙なサインが出ることがあります。しかし多くの人は、それを“年のせい”や“ストレスかな”と見過ごしてしまいます。
実際に、心房細動を持つ人の多くは高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を併発しています。
これらの病気が血管や心臓の負担を増やし、心房細動を引き起こす土台をつくってしまうのです。
また、過度な飲酒、睡眠不足、ストレス、肥満もリスク因子として知られています。
たとえば、以下のようなサインがあれば、軽視せずに循環器内科での検査を受けてみることをおすすめします。
- お風呂上がりにドキドキが続く
- 夜寝る前に胸がバタつく
- 階段を上がると息が切れる
最近では、24時間装着できるホルター心電図や、スマートウォッチで心拍リズムをチェックできる機器もあります。
こうしたツールを使えば、一時的に起こる心房細動も早期にキャッチできる時代になりました。
心房細動が見つかった場合、治療の目的は大きく2つです。
- 「脈のリズムを整える(リズムコントロール)」こと
- 「血栓ができないようにする(抗凝固療法)」こと
抗凝固薬(ワルファリンやDOACなど)を適切に使うことで、脳梗塞のリスクを大幅に下げることができます。
また、最近ではカテーテルアブレーションという治療も進歩しており、心房の異常な電気信号を焼き切ることで発作を抑えることも可能になっています。
ただし、薬や治療で症状を抑えるだけでなく、生活習慣の改善も欠かせません。
- 塩分を控えめにして血圧を安定させる
- アルコールを飲みすぎない
- 寝不足を避け、ストレスを溜めない
- 適度な運動で体重と血糖をコントロールする
こうした地味な積み重ねが、実は心房細動の再発予防につながります。
まとめ
心房細動は、決して珍しい病気ではありません。高齢化が進む今、日本では100万人以上がこの不整脈を持っているといわれています。
しかも、「気づかないうちに脳梗塞を引き起こしていた」というケースも少なくありません。
だからこそ、「動悸」「息切れ」「だるさ」などのちょっとした変化を体からのメッセージとして受け止めることが大切です。
心房細動が見つかっても、きちんと治療を受ければ怖い病気ではありません。むしろ、早期に見つけることで、脳梗塞や心不全といった重大な合併症を防ぐことができます。
「最近、心臓がドキドキする」「スマートウォッチの脈がバラバラだ」と感じたら、軽視せずに一度検査を受けてみてください。
心臓のリズムは、体のリズム。
乱れを放置すれば、全身に波紋が広がります。
逆に、早く気づいて整えてあげれば、心臓も体も長く元気に動き続けてくれます。
“動悸”という一見小さなサインの裏に、命を守るヒントが隠れています。そのサインを見逃さないことこそ、あなた自身の未来を守る第一歩なのです。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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