朝の吐き気や動悸、「なんだか気持ち悪い…」ストレスのサイン?原因と解決のヒント|臨床心理士が解説
朝起きて、「さて今日も仕事だ」「今日も学校に行かなきゃ」と思った瞬間、胸の辺りがぎゅっと締めつけられるように苦しくなったり、吐き気や動悸がして「なんだか気持ち悪い…」と感じたりした経験はありませんか?それは単なる体調不良ではなく、心や身体からのSOSサインかもしれません。今回は、仕事や学校に行く前に「気持ち悪くなる」「胸が苦しくなる」といった症状がなぜ起こるのか、そしてその対処法についてわかりやすく解説します。
なぜ仕事や学校に行く前に気持ち悪くなる?
まずは、仕事や学校に行く前に気持ち悪くなる理由についてお話します。
ストレスによる自律神経の乱れ
原因として考えられるのが「ストレスによる自律神経の乱れ」です。
自律神経とは、心臓を動かす、食べ物を消化するなど、生命維持に欠かせない働きを調整する神経を指します。
自律神経は、
・交感神経:主に日中、心身を興奮・緊張させて「活動」に適した状態にする
・副交感神経:主に夜間、心身をリラックスさせて「休息」に適した状態にする
という2つの神経がバランスよく働くことで機能しています。
ところが、ストレスを強く受けるとこのバランスが崩れ、
・交感神経が過剰に働き、心身が過度に緊張して吐き気や動悸が起きる
・副交感神経が過剰に働き、心身のだるさや無気力感が強まる
といった不調が現れます。
特に、「職場の人間関係がつらい」「仕事のミスが怖い」「学校でいじめや孤立を感じている」など、ストレスを感じ続けている人は、自律神経のバランスが崩れやすくなります。
どんな症状が出る?
ストレスによって自律神経が乱れると、次のような症状が出ることがあります。
・胸に圧迫感があり、息苦しい
・呼吸が浅くなる、過呼吸になる
・吐き気、胃がムカムカする
・頭痛、頭が重い
・めまいでフラフラする
・激しい動悸がする
・手汗や冷や汗をかく
これら自律神経の乱れによる症状は、ストレスが和らぐと軽減します。そのため、仕事や学校に行く前は強い症状が出ますが、休むことが決まると軽減します。
その結果、周囲の人に理解してもらえず「仮病」「怠け」と誤解されることもあります。しかし、ストレスがかかっている間は確かに苦しさがあるのです。
苦しさや気持ち悪さへの対処法は?
仕事や学校に行く前に、胸の苦しさや気持ち悪さを感じたときに試してほしい3つの対処法をご紹介します。
深呼吸でストレスを緩和する
息苦しさを感じたら、まずは「深呼吸」を試してみましょう。
ゆっくりとした呼吸は、心身をリラックスさせる副交感神経の働きを促進し、過剰に緊張・興奮した心や身体を鎮めます。
特におすすめしたいのは「4-7-8呼吸法」です。
これは「4秒かけて息を吸い、7秒止めて、8秒かけて息を吐く」という手順を繰り返すもので、何度も繰り返すうちに心身ともにリラックスした状態になれます。
場所を問わず取り組めるので、苦しさを感じたときの応急処置としておすすめです。
問題を具体的にする
私たちは正体不明のものに対し、強い不安感や恐怖心を抱きます。例えば、「ガサガサ」という音がしたのに、音の主の姿が見えないと不安になりますよね。しかし、その音の主が猫であることがわかれば、「な~んだ、猫かぁ」と不安は一気に解消されます。
「苦しい」「つらい」の背景にある要因も、しっかりと分析できると、それだけで不安・恐怖が軽減されることがあります。
例えば、
・上司とのコミュニケーションがうまくいかない
・ノルマがプレッシャーになっている
・先生との関係に悩んでいる
・クラスになじめず孤独を感じている
など、苦しさの背景に潜むものの「正体」が見えてくると、「こんなことで悩んでいたのか」と、どこかスッキリした気持ちになったり、それに対してどう対処するかを考えたりできます。
自分1人で考えるのも良いですが、場合によっては、誰かに相談すると整理しやすくなることもあります。
思い切って休んでみる
胸の苦しさや気持ち悪さは「今、ストレスを感じている」という心と身体のサイン。毎朝のように苦しさや吐き気が続くようであれば、思い切って休むことも大切です。
一時的にでも休息をとることで、ストレスで弱ってしまった心や身体が少し回復し、つらい症状が和らぐ可能性があります。
おわりに
仕事や学校に行く前に胸が苦しくなったり、気持ち悪くなったりするのは、単なる「体調不良」ではなく、うつ病や適応障害、不安障害などの心の病気のサインであることもあります。
もし、長期間にわたって症状が続くようであれば、我慢せず、心療内科や精神科などの医療機関を受診してみましょう。早めの相談が、回復の第一歩になります。
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