〈血圧「少し高いだけだから大丈夫?「血圧が少し高い状態」を放置してはいけない理由|医師が解説

〈血圧「少し高いだけだから大丈夫?「血圧が少し高い状態」を放置してはいけない理由|医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2025-09-13

「血圧がちょっと高いくらいだから大丈夫」という考えは危険かもしれません。血圧が少し高い状態を放置すると、知らないうちに血管や臓器はじわじわと傷んでいきます。医師が解説していきます。

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「血圧が少し高いだけだから大丈夫」放置してはいけない理由

健康診断の結果を見て、「あれ、ちょっと血圧が高いって言われたけど、このくらいなら大丈夫でしょ」といった反応をされる方はとても多いです。

でも、ここで油断してしまうと後々大変なことになるかもしれません。

血圧は目に見える症状がないので、つい軽く考えてしまいがちですが、実は“サイレントキラー(静かな殺し屋)”と呼ばれるほど、知らない間に進行していく怖い病気です。

血圧が少し高いくらいでも血管はダメージを受ける

「上が140をちょっと超えただけ」「下が90前後くらいならまだ平気」と思う方もいますが、実はそうでもありません。

血圧がわずかに高いだけでも、血管には確実に負担がかかっています。

イメージとしては、水道管に常に強い水圧がかかっている状態を想像してみてください。

最初は目に見える変化がなくても、長く続けばパイプの内側は傷つき、やがてサビがたまったり、ひび割れたりしますよね。

人間の血管でも同じことが起きていて、これが動脈硬化の原因となるのです。

動脈硬化が進むと、脳や心臓、腎臓などの重要な臓器に障害が出てきます。

最悪の場合、脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気を引き起こしてしまいます。

症状が出ないからこそ怖い

血圧が少し高い程度では、ほとんどの場合、体に自覚症状がありません。

「頭が痛い」「めまいがする」といった症状が出るのは、かなり血圧が上がってからのことです。

実際に、外来で「頭痛もないし元気だから大丈夫!」と笑っていた方が、ある日突然脳卒中で倒れてしまう…というケースも少なくありません。

これは決して大げさな話ではなく、医療現場ではよく見られる現実です。

つまり、「症状がないから大丈夫」というのは、大きな誤解なのです。

静かに進行するからこそ、早めの対策が重要になります。

ちょっと高めでもリスクは倍増する

最近の研究では、血圧が正常値よりわずかに高いだけでも、心臓や脳の病気になるリスクが上がることがわかっています。

たとえば、血圧が130~139/80~89mmHgくらいの“正常高値”と呼ばれる範囲でも、脳卒中や心筋梗塞の発症率は正常範囲の人に比べて明らかに高くなります。

特に、日本人は脳卒中になりやすい体質といわれており、少しの血圧上昇が大きな影響を及ぼすことが知られています。

「まだ薬を飲むほどじゃないから放置でいいや」と思っているうちに、知らない間に血管がボロボロ…なんてことになりかねません。

「血圧が少し高い」場合の対策とは

「じゃあ、薬をすぐに飲めばいいの?」と思うかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

血圧が軽度に高い段階なら、まずは生活習慣の見直しから始めるのが基本です。

ここでは、自宅でもできる具体的な対策をご紹介します。

1.減塩は血圧対策の王道

塩分の摂りすぎは血圧を上げる大きな原因です。

日本人はもともと塩分を多く摂りがちなので、意識して減らすことが大切です。

▼実践アイデア▼

  • 味付けは「薄め」を意識する
  • 漬物や味噌汁は回数を減らす
  • 外食ではスープを全部飲まない
  • 加工食品(ハムやソーセージなど)は控える

目標は1日6g未満です。最初は物足りなく感じますが、慣れると薄味でも十分おいしく感じるようになります。

減塩
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2.適度な運動で血管を元気に

運動は血圧を下げるだけでなく、血管そのものを柔らかく保つ効果もあります。

おすすめはウォーキングや軽いジョギング、サイクリングなどの有酸素運動です。

ポイントは、「無理なく続けられること」。最初は1日10分からでもOKなので、少しずつ時間や距離を増やしていきましょう。

3.お酒とタバコは要注意

お酒の飲みすぎは血圧を上げる原因になります。

飲むなら1日ビール中瓶1本、日本酒なら1合までが目安です。

タバコは血圧だけでなく、動脈硬化を一気に進める超危険因子です。

本気で血圧を下げたいなら、禁煙は避けて通れません。

4.ストレスと睡眠も見直そう

ストレスがたまると血圧は上がりやすくなります。

深呼吸をしたり、軽いストレッチをしたり、自分なりのリラックス法を見つけましょう。

また、睡眠不足も血圧上昇の原因になります。

特に、睡眠時無呼吸症候群がある方は、治療を受けることで血圧が改善することもあります。

5.自宅で血圧を測る習慣を

自分の血圧を知ることはとても大切です。

病院で測るだけでなく、自宅でも定期的に血圧を測る習慣をつけましょう。

測るタイミングは朝起きてすぐと、寝る前の1日2回が理想的です。

記録をつけておくと、生活習慣の見直しがどれくらい効果を出しているかがわかります。

まとめ

「血圧が少し高いだけだから大丈夫」という考えは、とても危険です。

症状がなくても、血管や臓器は静かにダメージを受け続けています。

放置していると、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気を引き起こすこともあります。

でも、早い段階で気づき、生活習慣を改善すれば、薬を使わずに血圧を下げられる可能性も十分にあります。

まずは塩分を減らし、運動や睡眠を見直し、自分の血圧を把握することから始めましょう。

少しの工夫が、将来の大きな病気を防ぐ第一歩になります。

「まだ大丈夫」と思わずに、今日から一歩踏み出してみませんか?

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

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