高血圧とお金|薬代だけじゃない?注意が必要な“見えない出費”とは〈医師監修〉
高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状が乏しいまま進行し、心筋梗塞や脳卒中などの重大な疾患を引き起こす可能性があります。そのため、早期の発見と継続的な治療が重要ですが、高血圧の治療には薬代だけでなく、さまざまな“見えない出費”が伴います。本稿では、高血圧治療にかかる費用の全体像と、経済的負担を軽減するための制度について、公的機関の情報をもとに解説します。
高血圧治療にかかる費用の実態
高血圧の治療には、降圧薬の服用が一般的です。薬剤費は健康保険の適用を受け、自己負担割合が3割の場合、月々約1,000円から3,000円程度が目安となります。しかし、薬剤費だけでなく、定期的な通院や検査費用も必要です。再診料や血液検査、尿検査などを含めると、月々の医療費は合計で約5,000円から10,000円程度になることもあります。
さらに、高血圧は長期的な治療が必要なため、年間の医療費は数万円から十数万円に達することも珍しくありません。また、生活習慣の改善を目的とした栄養指導や運動療法など、保険適用外のサービスを利用する場合、追加の費用が発生します。
高血圧が引き起こす合併症とその経済的負担
高血圧を放置すると、心筋梗塞や脳卒中、腎不全などの合併症を引き起こすリスクが高まります。これらの疾患は、入院や手術が必要となる場合が多く、医療費が高額になります。例えば、脳卒中で入院した場合、入院費用やリハビリテーション費用を含めて、数十万円から100万円以上の費用がかかることもあります。
また、合併症によっては、長期的な介護が必要となる場合もあります。介護サービスの利用には、介護保険の適用を受けても、自己負担が発生します。このように、高血圧を放置することで、将来的に大きな経済的負担を抱える可能性があります。
経済的負担を軽減するための制度と対策
高血圧の治療にかかる経済的負担を軽減するためには、以下の制度や対策を活用することが有効です。
高額療養費制度の利用
医療費が高額になった場合、一定の自己負担限度額を超えた分が払い戻される「高額療養費制度」があります。この制度を利用することで、医療費の負担を軽減できます。詳細は、全国健康保険協会のウェブサイトをご参照ください。
医療費控除の申請 年間の医療費が一定額を超えた場合、確定申告で医療費控除を受けることができます。これにより、所得税の還付を受けることが可能です。
ジェネリック医薬品の活用
ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同等の効果がありながら、価格が安価です。医師や薬剤師に相談し、ジェネリック医薬品への切り替えを検討することで、薬剤費を抑えることができます。
特定健康診査の受診
特定健康診査(メタボ健診)を受けることで、生活習慣病のリスクを早期に発見し、予防することができます。これにより、将来的な医療費の増加を抑えることが期待されます。
まとめ
高血圧の治療には、薬剤費だけでなく、通院費や検査算定料、生活習慣の改善に伴う費用など、さまざまな“見えない出費”が存在します。また、高血圧を放置することで、合併症による高額な医療費や介護費用が発生する可能性もあります。しかし、各種制度や対策を活用することで、経済的負担を軽減することが可能です。高血圧の早期発見と継続的な治療を心がけ、健康と経済の両面からリスクを管理していきましょう。
参考資料:
全国健康保険協会「医療機関等を受診するとき」
全国健康保険協会「高血圧は万病のもと(令和6年10月)」
全国健康保険協会「第4回『どのような病気で医療費が発生しているのか』」
監修医師/甲斐沼孟
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。
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