「血糖値は正常」でも油断大敵!“隠れ糖尿病”を見抜くサインとは|医師が解説

「血糖値は正常」でも油断大敵!“隠れ糖尿病”を見抜くサインとは|医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2025-09-06

健康診断の結果で血糖値が正常なら「糖尿病とは無縁だな」「甘いものを食べても大丈夫そう」と思いがちです。でも実は、この“安心感”が落とし穴になることがあります。医師が解説します。

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「血糖値は正常」でも油断大敵!“隠れ糖尿病”を見抜くサインとは

血糖値が正常の範囲にあっても、体の中ではじわじわと糖尿病が進行していることがあります。これを俗に“隠れ糖尿病”と呼びます。

隠れ糖尿病は、自覚症状がほとんどないため、気づいたときにはすでに進行してしまっていることも珍しくありません。

健康診断の血糖値はあくまで“その日の一瞬”

健康診断で測る血糖値は、基本的に「空腹時」のものです。つまり、その時点の血糖値を見ているだけなのです。

たとえば、検査前に食事を抜いていれば一時的に数値が正常に見えることもあります。

でも実際には、食後に血糖値が急上昇している「食後高血糖」という状態であったり、日常生活の中で血糖値が乱高下していることもあります。

これは、検査結果では見えない部分なので、「血糖値が正常だから問題なし!」と単純には言えません。

“隠れ糖尿病”を疑うサイン

隠れ糖尿病は、最初のうちはほとんど症状が出ません。だからこそ、本人も気づきにくく、発見が遅れやすいのです。

ただし、よく観察すると体が出している小さなサインがあります。

☑︎やたら喉が渇く、よく水分をとる

☑︎以前よりトイレが近くなった

☑︎疲れやすく、だるさが抜けない

☑︎急に体重が減った、または増えた

☑︎手足がしびれることがある

こうした症状が出ている場合、血糖値が健診では正常でも、体の中ではすでに糖のコントロールが乱れている可能性があります。

「年齢のせいかな」「最近疲れてるだけだろう」と見過ごさず、注意しておきたいところです。

家族歴や生活習慣もヒントに

糖尿病は、生活習慣だけでなく体質も関係します。

もし親や兄弟姉妹に糖尿病の人がいるなら、自分も発症しやすい可能性があります。さらに、以下のような生活習慣が重なると、リスクはグンと高くなります。

☑︎運動不足で座りっぱなしが多い

☑︎外食やコンビニ食が多く、野菜不足

☑︎夜遅い時間に食事をとることが多い

☑︎甘い飲み物やお菓子が好き

☑︎お酒をよく飲む

こうした要因がいくつも当てはまる人は、たとえ健診結果が正常でも「隠れ糖尿病予備軍」の可能性があります。

健診だけでは見抜けない“食後高血糖”

実は、隠れ糖尿病を見つけるには「空腹時血糖値」だけでは足りません。

ポイントは食後の血糖値です。

食事をした直後、血糖値がグンと上がるタイプの人は、空腹時には正常でも実際には糖代謝が乱れています。

これが長く続くと、血管へのダメージが進み、合併症や動脈硬化のリスクが高まります。

このタイプは、通常の健診では気づきにくいので、必要に応じて「75gブドウ糖負荷試験(OGTT)」などの詳しい検査を受けることが大切です。

血糖値
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 “隠れ糖尿病”の場合の対策

「もしかして自分も隠れ糖尿病かも…」と不安になった方もいるかもしれません。

でも大丈夫、ここからの生活習慣の見直しで十分に改善できるケースも多いです。

1. 食事は「急激に血糖値を上げない」工夫を

食べ方を少し工夫するだけで、血糖値の上がり方をゆるやかにできます。

  • 野菜や汁物から先に食べる(ベジファースト)
  • 白米よりも玄米や雑穀米を取り入れる
  • 甘い飲み物を減らし、水やお茶に置き換える
  • 間食はナッツや無糖ヨーグルトなど血糖値が上がりにくいものを選ぶ

「全部一気にやらなきゃ」と思うと続かないので、まずは一つだけでも試してみましょう。

2. 運動は“軽くでも毎日”がコツ

血糖値を下げるには、運動がとても効果的です。といっても、いきなりジム通いを始める必要はありません。

  • 一日20〜30分のウォーキング
  • エスカレーターより階段を選ぶ
  • 家の掃除や買い物も立派な運動

こうした日常のちょっとした動きでも、十分な効果があります。

特に食後1時間以内に少し体を動かすと、血糖値の急上昇を防ぎやすくなります。

3. 体重管理を意識する

お腹まわりの脂肪は、血糖値のコントロールに大きく関わっています。

特に、内臓脂肪が多いとインスリンの働きが悪くなり、血糖値が上がりやすくなります。

「体重を減らす」というとハードルが高く感じますが、まずは体重の3〜5%を減らすことを目標にすると現実的です。

たとえば70kgなら2〜3kg減らすだけでも効果が出ます。

4. 定期的に検査を受ける

生活習慣を改善しても、実際に血糖値がどう変化しているかは、自分では分かりません。

だからこそ、定期的に検査を受けることが大切です。

空腹時血糖値だけでなく、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)や食後の血糖値もチェックできると安心です。

自分の変化を数字で確認できると、モチベーションも保ちやすくなります。

まとめ

健康診断で「血糖値は正常です」と言われると、つい安心してしまいますよね。

でも、糖尿病は知らないうちに進行する“静かな病気”です。

  • 健診では分からない食後高血糖がある
  • 自覚症状がほとんどないまま進行する
  • 生活習慣や家族歴がリスクを高める

こうした点を考えると、「血糖値が正常だから大丈夫」とは言い切れません。

隠れ糖尿病を防ぐためには、食事・運動・体重管理・定期検査がポイントです。

特に、日々のちょっとした習慣の積み重ねが将来の健康を左右します。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

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