健康診断では見えない部分がある?「健康診断で異常なし=健康」とは限らない理由とは|医師が解説
毎年受ける健康診断で異常が見つからなかったからといって、必ずしも完全に健康とは言い切れません。 たくさんの健診結果を見てきた産業医の立場から、「異常なし」という結果をどう受け止めればいいのか、そして日々の生活で気をつけたいことについて解説します。
「健康診断で異常なし=健康」とは限らない理由
健康診断の結果が「異常なし」と書かれていると、「これで自分は健康!」と思いませんか?でも実は、それはちょっと早とちりかもしれません。
健康診断では見えない部分がある
健康診断は限られた時間と項目で行われます。
血液検査、尿検査、胸部X線、心電図など、いわば“定番メニュー”が中心です。
もちろんこれらの検査でわかることも多いのですが、残念ながらすべての病気を発見できるわけではありません。
たとえば、初期のがんや動脈硬化のごく初期段階、心臓の隠れたトラブル、メンタル面の不調などは、健診では見つけられないことが多いのです。
実際、「異常なし」と言われた人が、別の病院で詳しく調べてみたら、重大な病気が見つかった…なんて話も珍しくありません。
健診はあくまで“ざっくりチェック”だと考えたほうがいいでしょう。
「基準値」とは実は絶対じゃない
健診結果には、それぞれの項目に「基準値」という数字がついていますよね。
範囲内なら異常なし、というわけです。
でもこの基準値、あくまで“目安”なのです。
人によって体質や生活習慣が違うので、数字が基準値内でも安心しきれないことがあります。
たとえば、血糖値が基準値ギリギリだとしましょう。
今は「異常なし」と言われても、放置しているうちに将来糖尿病になってしまう可能性もあります。
逆に、少し基準値をオーバーしていても、一時的な体調やストレスの影響で、特に問題がない場合もあります。
つまり、「基準値=健康」とは限らないということ。
結果の数字はあくまで“ヒント”くらいにとらえましょう。
数字に出ないものもある
健診では血液検査や画像検査でわかることを中心に見ています。
でも、体や心の不調って、数字に出ないことも多いのです。
強いストレスを抱えていたり、睡眠不足が続いていたりしても、健診では「異常なし」と出ることがほとんど。
喫煙、飲酒、運動不足といった生活習慣も、すぐには数字に現れません。
何年も経ってからようやく血圧や血糖値に影響が出てきます。
だからこそ、「健診の数字が良い=大丈夫!」と考えてしまうのは危険です。
健診結果はあくまで一部でしかない、という意識が大事です。
「異常なし」の後にやるべきこと
結果が「異常なし」でも、それで終わりではありません。
ここからどう行動するかが、将来の健康を左右します。
1. 自分の体調をよく観察する
まずは、自分の体のちょっとした変化に敏感になることが大切です。
- 最近やけに疲れやすい
- 夜、眠れない日が増えた
- 逆に眠りすぎてしまう
- 食欲が急に落ちた、または増えた
- 体重が短期間で大きく変わった
こうしたサインは、体が「何かおかしいよ」と教えてくれているのかもしれません。
たとえ健診で「異常なし」だったとしても、症状が続くなら早めに医療機関を受診しましょう。
2. 家族の病歴や体質を考える
健康診断は、あくまで一般的なチェック項目しか見ていません。
もし家族に糖尿病や心臓病、がんなどの病歴があるなら、自分にも同じ病気が出やすい可能性があります。
そういう方は、人間ドックや追加の検査を検討すると安心です。
- 胃カメラや大腸内視鏡で消化管をチェック
- CTや心エコーで心臓や血管を詳しく確認
- 女性なら乳がん、子宮がん検診も忘れずに
「うちは家族みんな元気だから大丈夫」ではなく、身近な家族の健康状態を参考に、自分に合った検査を受けることがポイントです。
3. 生活習慣をちょっとずつ改善
健診結果が良くても、油断は禁物です。
将来のために、今から少しずつ生活習慣を整えていきましょう。
食事 ▶︎塩分、糖分、脂質を控えめに。野菜とたんぱく質を意識して摂る
運動 ▶︎1日20〜30分、歩くだけでもOK
睡眠 ▶︎7時間前後を目安に、できるだけ同じ時間に寝起きする
そして、喫煙やお酒の飲みすぎは、健診結果にすぐには出なくても、将来的に大きなリスクになります。
完全にやめるのが理想ですが、まずは「減らす」ことから始めてもいいでしょう。
4. 結果は医師と一緒に確認する
結果の紙を見て「ふーん、異常なしでよかった」で終わらせてしまうのはもったいないです。
気になる数字があったり、生活習慣で心配なことがあれば、医師に相談してみましょう。
専門家の視点から「将来リスクが高そうな項目」を教えてもらえることもあります。
まとめ
健康診断は、健康を守るための大切なステップですが、「異常なし」と出たからといって完全に安心できるわけではありません。
- 健診では見えない病気がある
- 基準値はあくまで目安
- 生活習慣や心の不調は数字に出にくい
こうした点を忘れずに、日々の暮らしを見直すことが大切です。
大事なのは、健診を“ゴール”ではなく“スタート”と考えること。
結果に安心して終わるのではなく、そこから「自分の体をもっと大事にしていこう」という行動につなげていくことが、将来の健康につながります。
健診結果をうまく活かしながら、毎日をちょっとずつ整えていきましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く





